アナトリア文明博物館:古代ロマンに触れたいなら!アンカラを代表する巨大博物館

トルコのアンカラにあるアナトリア博物館では、ヒッタイト文化をメインに、旧石器時代から近代までのアナトリア文明の遺物を閲覧することができます。およそ数十万点にも及ぶ膨大なコレクションは時代順に並べられ、歴史を学びながらその時代に生きた人々の営みも感じ取ることができます。

■アナトリア文明博物館とは

アナトリア文明博物館は、トルコのアンカラにある博物館で、アンカラ城南側にあるアトパザール(馬の市)という土地にあります。オスマン帝国時代に征服王メフメットII世によって建てられたマフムトパシャ・ベデステンとクルスフンル・ハンを博物館として利用しています。過去にヨーロピアンミュージアムアワードを獲得したことがあり、ヒッタイト文化を中心としたアナトリア文明の遺物を収蔵する博物館としては、トルコの中でも最大規模です。

アナトリア文明博物館の始まりは1921年で、当初はアンカラ城の塔の一つであるアカクレにアウグストゥス神殿やローマ浴場から発掘された遺物や出土品などが展示されていました。後に、トルコ共和国初代大統領であるアタテュルクの建言により、ヒッタイト文明の展示物をメインにした博物館の創設が決定されると、国中から膨大な数のヒッタイト時代の遺物がアンカラに集められました。

現在、博物館として使われている二つの建物のうち、マフムトパシャ・ベデステンでは大きな回廊部分が遺物や出土品の展示場となっています。もう一つのクルスフンル・ハンは、現在は研究室や図書館、会議室、作業室、事務室として利用されています。かつてはバザールの貴重品倉庫として使われたマフムトパシャ・ベデステンと、隊商宿であったクルスフンル・ハンは、当時の面影を残しつつ、かつてトルコの大地にあったヒッタイト文明をはじめとする様々な文明の遺物を今日まで守り続けています。

■アナトリア文明博物館の所蔵品

アナトリア文明博物館では、ヒッタイト文明の展示物などをメインに、フリュギア、リュディア、ウラルトゥなどの王朝遺物やビザンティン、ギリシャ、ローマなど、トルコで発掘された出土品がおよそ数十万点ほど収蔵されています。旧石器時代から近代までの貴重な品々が年代順に展示されているので、アナトリアの歴史と文明の勃興を学びつつ、出土品を鑑賞することができます。

世界最古の鉄器とされる、紀元前3000年頃の短剣や、旧石器時代の壁画、青銅器時代の牡鹿のブロンズ像などをはじめ、紀元前7000年頃に存在した世界最古の集落とされるチャタルホユックの出土品や、当時の住居を模した展示もあり、当時の人々の暮らしや文化に触れることができます。そのほか、土器や陶器、印章、金属器、コイン、装飾品、レリーフなどアナトリアで興った文化の一端を垣間見ることができます。

そんなアナトリア文明博物館のコレクションには、どのような出土品・遺物が含まれているのでしょうか。主要な出土品・遺物をご紹介します。

・《チャタルホユックの地母神像》BC7000年頃

本作品は、チャタルホユック遺跡の新石器時代の地層から、ジェームズ・メラートによって発見された地母神像です。プリミティブな時代特有の素朴で力強い作風が印象的で、ふくよかな女性が2頭の豹、またはライオンらしき猫科の動物の意匠が施されている玉座に座りながら出産している場面を象っていて、よく見ると、女性の足の間に生まれた赤ん坊の姿が見えます。本作品をじっくり見てみると、首から上が新しいのが分かります。これは、出土当時は像が破損していて頭が無い状態であり、現在みられる頭部分は研究によって当時の様式を再現したものだからです。

地母神は豊穣と多産をつかさどる神のことをさし、ふくよかな女性をモチーフにしている像は、チャタルホユック以外にも様々な国で発掘されることがあります。日本では土偶が地母神を象ったものではないかとされています。確かに言われてみると、土偶には女性的な特徴が見られます。

チャタルホユック遺跡では、この地母神を祀ったとされる神殿であると同定できる遺構はまだ発見されていませんが、この像が穀物庫らしき場所から発見されたことから、穀物の豊作や安定した供給を守護・保障するためのシンボルではないかとされています。

本作品以外にも、この地母神をモチーフにしたのではないかとされるものが数多く出土していて、かつてチャタルホユックに住む人々がこの地母神を中心にした宗教的シンボリズムを豊富に抱え、豊穣のみならず社会的な道徳的価値観などを表現し、集落での連帯感をもたらしていたのではないかとされています。

・《サンディスク》BC3000年頃

丸い形がまるで太陽を思わせることから『サンディスク』と呼ばれています。儀礼用スタンダードとして杖や冠などに付けて使われていたとされていますが、詳細は不明です。こちらのサンディスクはアラジャホユック遺跡から発掘された青銅器時代のものです。音が鳴るギミックが施されており、素朴ながらも細やかな装飾から当時の冶金技術の高さがうかがえます。

儀礼用スタンダードはこのサンディスクのほかにも3頭の鹿をモチーフにしたものもあり、プリミティブながらも精巧な作りになっています。こちらのスタンダードはアナトリア博物館でもサンディスクと並んで有名で、ガイドブックなどにもよく掲載されています。

・《戦士の像》BC14~13世紀頃

※画像は現在ハットゥシャに設置されているレプ

こちらの『戦士の像』は、ハットゥシャの王の門にあったオリジナルのレリーフで、石灰石でできています。2mもの大きさと、彫像に近い立体的な作り、そしてプリミティブさを感じさせる力強い様子など実に迫力満点です。

ハットウシャシュは紀元前17~13世紀に栄えたヒッタイト帝国の首都でした。現在はボアズギョイと呼ばれる村で、1906年にこの地を調査していたドイツの考古学者フーゴー・ウィンクラーによってハットウシャシュの遺跡が発見されました。本作品はその遺跡からもたらされたもので、遺跡には有名な『ライオン門』や『スフィンクス門』、大神殿跡など、当時の面影をうかがえる遺構が数多く残されています。

■おわりに

アナトリア文明博物館では、人類初の鉄器文明をもたらしたとされるヒッタイトの文化を中心に、アナトリアで興った国や文明に触れることができます。そのコレクションは古代文明ファンならまさに一生に一度は見るべきといえるほど貴重なものばかりです。

Website : https://muze.gov.tr/

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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