ギュスターヴ・モロー美術館:象徴主義の画家であるモローの個人美術館

ギュスターヴ・モロー美術館はフランスのパリにある美術館で、1903年に開館しました。モローの作品が数千点展示されており、建物や作品の配置にも芸術性が感じられる美術館です。そんなギュスターヴ・モロー美術館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■ギュスターヴ・モロー美術館とは

ギュスターヴ・モロー美術館はフランスのパリにある美術館で、1903年に開館しました。パリ9区のトリニテ駅近くにあり、閑静な住宅街に佇む4階建ての美術館で、象徴主義の画家であるギュスターヴ・モローの作品が集められています。

現在は美術館となっている建物ですが、もともとはモロー自身と家族が1852年から使用していた住居兼アトリエです。モローがこの場所を自分の作品の展示場所にしたいという希望を持っており、1898年にモローが亡くなったわずか5年後に、世界初の個人美術館としてオープンすることとなりました。初代館長は教え子のジョルジュ・ルオーが務めています。

もともと邸宅であったこの場所は周囲の建物と非常に馴染んでおり、中の作品も生前にモローが指示したままの配置になっています。モローが作品を生み出した世界をそのまま味わうことのできる美術館は、世界中のモローの愛好者から支持を集めています。

■ギュスターヴ・モロー美術館のコレクション

(Public Domain /‘Self-portrait’by Gustave Moreau. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘Musée national Gustave-Moreau, Paris’by Andreas Praefcke. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ギュスターヴ・モロー美術館には、モローの油彩画や水彩画、デッサンなど数千点が所蔵されています。モローの描く絵画は聖書や神話を題材にした作品が多く、壮大な世界観の中での緻密な描写が魅力ですが、膨大な量のモローの絵画が壁一面に飾られている展示は圧巻です。3階から4階にかけての螺旋階段も美しく、上から眺める形で大きなサイズの絵画を鑑賞することもできます。また、2階にはモローの書斎や寝室が公開されており、生前の姿を映し出すような作りになっています。

そんなギュスターヴ・モロー美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

・《レダと白鳥》1865年ギュスターヴ・モロー

(Public Domain /‘Leda’by Gustave Moreau. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

モローは、1826年にフランスのパリで生まれました。フランソワ=エドゥアール・ピコに師事し、サロンで初入選したのは26歳の時です。テオドール・シャセリオーやウジェーヌ・ドラクロワの影響を受け、1866年の作品「オルフェウス」がリュクサンブール美術館に買い上げられたことにより、画家としての地位を確立していきました。

時には世間に物議を醸す作品を発表し、批判を浴びることもありましたが、モローの幻想的な作風は熱狂的に指示されることが多かったと言われています。1892年には美術学校の教授となり、マティスやルオーという絵画の巨匠を育てました。

(Public Domain /‘Leda and the Swan’by Cesare da Sestoafter Leonardo da Vinci. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「レダと白鳥」は、ギリシャ神話をテーマにした作品です。レダと白鳥の逸話はモロー以外にも西洋の絵画ではよく題材にされ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどもこのモチーフで作品を制作しています。スパルタの王妃であるレダが水浴びをしている時に白鳥に姿を変えたゼウスが現れ、レダを誘惑する姿を描いたもので、古典的な官能表現とされています。

後に、レダはゼウスとの間と自分の夫との間の両方に子供を授かり、卵を二つ産むことになります。それぞれの卵からは双子の男児であるカストルとポルックス、双子の女児であるヘレネーとクリュテムメストラが産まれました。このヘレネーとポルックスがゼウスの子供であると考えられています。

・《出現》1876年ギュスターヴ・モロー

(Public Domain /‘The Apparition’by Gustave Moreau. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は、1876年に制作された作品で、ギュスターヴ・モローが50歳の時に描かれました。

「出現」は新約聖書をもとに制作された作品です。ユダヤ王ヘロデ=アンティパスの前で、姪であり後妻の娘であるサロメが踊りを披露し、その褒美として洗礼者ヨハネの首を求めたというエピソードをモチーフに制作されています。このモチーフも西洋の画家に人気があり、ティツィアーノやベノッツォ・ゴッツォリなどの画家もサロメを題材に絵画を制作しています。

この作品ではサロメの目前に聖ヨハネの首が現れ、それと対峙するサロメの堂々とした様子が描かれています。その他の登場人物は後ろに描かれ、サロメと聖ヨハネだけが浮かび上がるような構成です。モロー独自の解釈で描かれたこの作品は、臆することなく聖ヨハネに立ち向かうサロメを幻想的に捉えています。

(Public Domain /‘The Apparition’byGustave Moreauin Fogg Museum. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

「出現」は愛好者が多く、モロー自身の手で複数制作されています。ギュスターヴ・モロー美術館だけではなく、ルーブル美術館やフォッグ美術館などにも所蔵されており、ギュスターヴ・モロー美術館にある「出現」は水彩画です。「出現」の他にも、モローはサロメを題材にした作品を多く生み出しています。

・《テスピウスの娘たち》1853年-1883年ギュスターヴ・モロー

(Public Domain /‘Les Filles de Thespius’by Gustave Moreau. Image viaWIKIMEDIACOMMONS)

この作品は1853年に制作が始まりましたが一度中断されており、1883年に加筆したことで完成しました。

この作品もギリシャ神話をモチーフに描かれた作品です。ギリシャ神話には、英雄ヘラクレスが12の功業を成し遂げるという逸話がありますが、その中の一つにテスピウス王の領地に現れたライオンを退治するというものがあります。感謝したテスピウス王が50人の娘と一晩で交わることを許し、娘たちそれぞれが子を授かったとされています。この神話を主題として「テスピウスと娘たち」が描かれました。

中央に描かれたヘラクレスを囲むようにテスピウスの娘たちが裸体で描かれています。官能的なテーマでありながらも、幻想的に描かれた本作品は、モローの美の追求が感じられる作品です。

■おわりに

(Public Domain /‘Musée national Gustave-Moreau’by Andreas Praefcke. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ギュスターヴ・モロー美術館は、モローの数々の作品を見ることができると同時に、建物や作品の配置にも芸術性が感じられる美術館です。

Website : https://musee-moreau.fr/

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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