国立アズレージョ博物館:14世紀から現代までの芸術的なタイルを展示する博物館

ポルトガルを旅していると多くの装飾されたタイルを見かけます。ポルトガルではこの装飾されたタイルのことをアズレージョといいます。国立アズレージョ博物館ではこの装飾タイルであるアズレージョのなかでもとくに芸術的価値が高いとされている作品を展示しています。そんな国立アズレージョ博物館の歴史と所蔵品についてくわしく解説します。

■国立アズレージョ博物館とは

国立アズレージョ博物館は1509年にレオノール王妃によって建てられたマドレ・デ・デウス修道院の中を改装して、ポルトガルに独自に発達したアズレージョと呼ばれる装飾タイルを展示している博物館です。現在の建物は17世紀の建物に18世紀のバロック様式の装飾が施されています。

アズレージョは14世紀にイスラム教徒によってスペインへもたらされました。その後15世紀頃にアズレージョはスペインからポルトガルに持ち込まれました。当初はほとんどがスペインなどからの輸入品で、建物の壁面などに取り入れられていました。

その後ポルトガル国内にもアズレージョの工場がつくられ17世紀から18世紀にかけて飛躍的に発展します。ポルトガルのアズレージョは青を基調としたものが多く、それはポルトガルが大航海時代に訪れたアジア諸国の影響を受けているといわれています。

■国立アズレージョ博物館の所蔵品

国立アズレージョ博物館には14世紀から現代までの数々のアズレージョがコレクションされています。またアズレージョを製作するために必要な顔料や道具も展示されています。

コレクションは年代順に見学できるように展示されており、最も古い作品はイスラム圏から14世紀にイベリア半島に持ち込まれたアズレージョです。当初のアズレージョは1枚のタイルで絵柄が完成していました。その後数枚のタイルを組み合わせてひとつの作品を作るという製法に変化していきます。現在もこの製法でアズレージョは作られていますが、そのモチーフは時代とともに変化していきました。

国立アズレージョ博物館では元は修道院だった建物を利用し、複数の回廊や修道院の内部にアズレージョが展示されています。年代順に展示することでポルトガル独自のアズレージョが発展していく様子がよく分かるようになっています。

そんな国立アズレージョ博物館のコレクションにはどのような作品が含まれているのでしょう。主な作品を紹介します。

≪17世紀から18世後半のアズレージョ≫

14世紀にポルトガルに入ってきたころのアズレージョは青、黄色、緑など複数の色彩がありました。その後大航海時代を経て17世紀から18世後半にはポルトガルのアズレージョはアジアの陶磁器などの影響(シノワズリ)を受け、青と白を多用するようになります。

17世紀から18世後半のアズレージョが展示されている部屋は、青と白に統一されたアズレージョで埋め尽くされています。一枚の作品を作るために細かく計算されたタイルをひとつひとつ貼り合わせて風景画や寓話などがつくられています。青色の濃淡の違いが目を引きます。

≪1755年以前のリスボンの街並み≫18世紀頃

リスボンは1755年に大地震に見舞われました。このアズレージョは大震災以前のリスボンの街並みが描かれています。展示室内一面を飾る青いアズレージョによるリスボンの街並みは、震災前の様子を知る上でも貴重な資料となっています。

ポルトガルのアズレージョにはこの震災以降大きな変化が表れます。装飾だけを目的としたアズレージョだけではなく、実用性を重んじたアズレージョに変わっていくことになるのです。

≪18世紀後半以降のアズレージョ≫

リスボンの震災以降、実用性に富んだアズレージョが大量に生産されるようになりました。これまでのように1枚1枚に違う絵をかき手間のかかるジグゾーパズルのような作品ではなく、幾何学模様を組み合わせたアズレージョが多く作られるようになっていきます。

また一方で、17世紀から18世紀にかけて青と白だけのアズレージョが主流でしたが、ポルトガルにアズレージョが入ってきた時代と同じように、黄色や緑を使ったアズレージョも多く作られ始めます。

19世紀頃には工場での大量生産が行われるようになります。ただ手塗りのアズレージョは廃れることなく現代まで受け継がれています。

≪20世紀のアズレージョ≫

20世紀にはアール・ヌーヴォーやアール・デコの様式を取り入れたアズレージョがつくられていきます。とくに有名なのがアール・ヌーヴォーのラファエル・ボルダロ・ピニェイロ、やアール・デコのアントーニオ・コスタなどです。この博物館では近現代の幾何学模様を取り入れた新しいタイプのアズレージョが多く展示されています。

終わりに

アズレージョは時代とともにその時々のニーズに合わせて様々に変化することができる芸術作品です。これからもポルトガルのアズレージョの独自性を残しつつ現代にマッチした様々なアズレージョが製作されていくことでしょう。

国立アズレージョ博物館は観光案内やガイドに登場することは少ないですが、ポルトガル国内最大のアズレージョ博物館です。この博物館を見学するだけでポルトガルのアズレージョの歴史と作品を同時に堪能することができるでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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