アムステルダム市立美術館:オランダ近代美術のメッカと称される美術館

アムステルダム市立美術館は、1874年に設立し、1895年に開館しました。『オランダ近代美術のメッカ』と称されるほどの莫大なコレクションを所有し、印象派やポスト印象派の巨匠作品のみならず、21世紀初頭のアーティストが手掛けた作品も数多く所蔵・展示しています。そんな近代美術ファンにとってまさに楽園と呼ぶべきアムステルダム市立美術館について、所有しているコレクションも含めてご紹介していきます。

■アムステルダム市立美術館とは

アムステルダム市立美術館は、オランダのアムステルダムにあるミュージアム広場に位置しています。近隣にはゴッホ美術館やアムステルダム国立美術館があり、美術館巡りには最高のロケーションです。1874年に設立し、当初はアムステルダム国立美術館館内に併設されていたのですが、1895年に自前の建物が建設されて移動し、アムステルダム市立美術館として開館しました。

過去に2度改修工事が行われていて、1度目の1945年から1954年のときは、作品をさらに展示できるように2倍の面積に拡張され、2度目の2003年から2012年にかけての改修工事では、新しくウィングが増築されました。その後、改修工事が終わった2012年9月23日に再オープンした際は、1か月間でおよそ9万5,000人以上の観覧客が来館したというのですから、その人気ぶりがうかがえます。

(引用:Wikipedia)

アムステルダム市立美術館は『オランダ近代美術のメッカ』と呼ばれるほど、膨大な数の近代美術作品を所蔵・展示しています。そのコレクションは21世紀初頭までの近代美術と幅広く、ゴッホやカンディンスキー、シャガール、マティス、ピカソといった巨匠作品から新進気鋭のアーティストまで、幅広く取り扱っています。また、絵画のみならず、部屋全体を使ったインスタレーション作品などもあり、様々な手法の近代美術を鑑賞することができます。そのほか、ワークショップやパフォーマンスなど催し物も頻繁に開催され、近代美術に対する理解と関心を深めることができます。

アムステルダム市立美術館を目にして驚くのが、そのスタイリッシュな外観です。アムステルダム出身の建築家で、過去にはスキポール空港を手掛けたメルス・クローウェルによって設計され、2003年から2012年のおよそ10年に及ぶ改修によって生まれました。因みに建材には、帝人グループが開発した防弾性に優れた素材が使われています。その特徴的で斬新な外観から、『バスタブ』という愛称で親しまれています。

■アムステルダム市立美術館の所蔵品

アムステルダム市立美術館では、近代美術が絵画、彫刻、映像美術やポスターなどジャンルを問わず広く集められています。その内訳は油絵4,393点、彫刻1,654点、インスタレーション211点、映像・音声作品622点、版画・素描19,678点、ポスター19,322点、写真10,880点、グラフィックデザイン19,450点、インダストリアルデザイン5,322点、美術書4,253点と実に膨大で、総数9万点以上(2010年現在)を誇るコレクション数からアムステルダム市立美術館が『オランダの近代美術のメッカ』と称されているのが分かります。

(Public Domain /‘Still life with bottles and apples’ by Paul Cézanne. Image via WIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘Composition XIII’ by Theo van Doesburg. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ゴッホやシャガール、セザンヌといった巨匠作品のみならず、ポップアートやデ・スタイル、バウハウス、ドローグ、モダンアート、コンテンポラリーアート、広告、インダストリアルデザイン、インテリアデザインなど手法やジャンルを問わず、実に多種多様な美術作品が集っています。

そんなアムステルダム市立美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

・《サント・ヴィクトワール山》 1888年頃 ポール・セザンヌ

(Public Domain /‘La Montagne Sainte-Victoire’ by Paul Cézanne,. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

1888年頃、ポスト印象派の巨匠として知られるポール・セザンヌによって描かれました。

青空の下、堂々とそびえ立つセント・ヴィクトワール山のすそ野に牧歌的な田園風景が広がり、自然の雄大さと人の営みの穏やかさが漂います。

(Public Domain /‘Paul Cézanne’. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

セザンヌはセント・ヴィクトワール山をモチーフにして油彩画44点、水彩画43点ほどの連作を生み出しました。この作品もそうした連作の一つで、セザンヌはセント・ヴィクトワール山そのものをそっくり描くというよりも、その中にある本質や空気を描いたのではないかとされています。優しく、それでいてしっかりとした色彩を用いて描くことで、南フランスの豊かな自然によって生み出された景勝としてだけでなく、セザンヌにとっての拠り所であったセント・ヴィクトワール山を表現したかったのかもしれません。

・《ルーラン夫人ゆりかごを揺らす女》 1889年頃 フィンセント・ファン・ゴッホ

(Public Domain /‘La Berceuse (Portrait of Madame Roulin)’ by Vincent van Gogh. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

1889年頃にポスト印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホによって描かれた油絵で、フランス・アルルに住んでいたルーラン一家の夫人をモデルに描かれました。白く華やかな大輪の花々が描かれた壁紙を背に、ルーラン夫人がゆりかごを揺らすための紐を持ちながら椅子に座った姿が、ゴッホらしいタッチと色彩によって描かれています。

(Public Domain /‘Self-portrait’ by Vincent van Gogh. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

夫人の穏やかな表情は、子を想う優しい母親の姿に見え、この作品はゴッホにとっての母性のシンボルとされています。本作品を含め、ルーラン夫人をモチーフにした連作は5点ほど残されていますが、どの作品が最初に手掛けたものかは分かっていません。

・《ヴァイオリン弾き》1912年 マルク・シャガール

ロシア出身のフランス画家、マルク・シャガールによって1912年に制作されました。顎鬚を豊かに蓄え、陽気な笑顔を見せる緑色の顔をした男が、小さな町にヴァイオリンを響かせている姿が描かれていますが、どこか哀愁と切なさが漂っています。

(Public Domain /‘Marc Chagall 1941 cut’ by Carl Van Vechten. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ヴァイオリンやそれを弾く人物はシャガール作品の中で重要な位置にあります。それにはシャガールが幼少期に、ユダヤ人居住区であるビテブスクで生活していた事が影響しています。ビテブスクでは冠婚葬祭においてヴァイオリンの演奏が行われており、伝統的なユダヤ人の慣習とヴァイオリン弾きの関係は切っても切れないものでした。つまり、画面に描かれているヴァイオリン弾きはただの演奏家としてではなく、宗教的な意味でも重要な意味を含んでいるのです。

注目したいのが、ヴァイオリン弾きの顔です。穏やかで楽しそうな笑顔を浮かべつつ、精神バランスの不安定さを象徴する緑によって描かれているため、楽しく陽気な気持ちとともに彼が置かれている現在の状況に対する不安も同時に感じさせます。当時、順風満帆な生活に満足していながらも、故郷を離れて他国へと亡命せざるを得なかったシャガール自身の心境を、ヴァイオリン弾きに重ねて描いたのかもしれません。

■おわりに

今回は、オランダ・アムステルダムにあるアムステルダム市立美術館についてご紹介していきました。巨匠作品のみならず21世紀初頭のアーティストによる作品も幅広く展示されていて、近代美術ファンでも満足できるほど充実しています。アート好きならもちろんのこと、そうでない人の興味を引くようなユニークな展示も沢山あるので、アムステルダムに訪れた際にはぜひ来館してみてください。

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※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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