シャーロット・ティルブリー:「寝化粧」というカルチャー

イギリスの人気メイクアップアーティスト、シャーロット・ティルブリーは、2013年に自身と同じ名前のコスメブランドを設立。化粧したまま寝る「寝化粧」発想でスキンケアと化粧品を組み合わせたような質の良いアイテムを展開し、キム・カーダシアンやケイト・モス、アマル・クルーニーなどセレブリティの間でも高い支持を得ています。寝る時も美しくありたいという女性たちに支持され、全世界で彼女の思想は広がってきています。

シャーロットの幼少時代

シャーロット・ティルベリーはイングランドのロンドンで芸術家のランス・チルベリーと高級プロダクション・マネージャーのパッティ・ドッドの間に生まれました。まだ1歳にも満たない幼少期にイビザに移住し、そこからずっと13歳までイビザでの島生活をしていました。そこから美容学校へ通うためロンドンに戻ることになります。イビザからロンドンへの帰省は、彼女の人生の大きな転機となります。

シャーロットの両親はかなりの自由人でした。彼女の母親のパッティ・ドッドは赤いリップにハイヒールという様子で、頻繁に現地のクラブに通いつめていました。その妖艶でゴージャスな様子は、彼女の記憶にも鮮明に残っています。しかし、彼女の育ったイビザという島国のメイクアップは、リップとグロスを重ねはしても、メイク自体は日焼けした肌を生かすと言うナチュラルでシンプルなものでした。

13歳から通い始めたロンドンの美容学校では、都会の女の子達は皆しっかりとメイクをしていました。シャーロットはその時初めて「マスカラ」の存在を知り、非常に大きなカルチャーショックを受けることになりました。彼女は、何も化粧をしていなかった自分の目元は”piggy”(子豚・こどもっぽいの意味)だったと後の取材で語りました。

イビザの自由で自然な風土で育ち、都会的なロンドンで洗練された女性に触れた彼女はメイクアップの魅力に引き込まれていくことになります。

「寝化粧」のルーツ

美容学校の友人達に影響され、13歳にしてしっかりメイクアップをし、目元は漆黒のマスカラを纏っていました。学校が休みの間、再びイビザに帰ったシャーロットに、友人達は驚き、「本当に大人っぽくなったよね!すごく素敵だよ!」と彼女を褒めました。シャーロットはメイクの偉大さに改めて感動を覚え、そこから彼女はすっぴんに二度と戻りたくないと言う想いを強く持ち、人前ではずっとメイクアップを崩さないスタンスに変わっていきました。

今でも夫の前でも化粧を崩さないと言い、あるメディアの取材ではこのように話しています。「一人のときなら全て落として寝ます。夫がいるときにはメイクをしているので、オフした姿を見せたことはありません。一度オフして、少し肌に呼吸をさせてから、もう一度化粧をし直します。」かつてボーイフレンドにすっぴんの目元を見せてしまったことを「失敗」だと笑いながら話す彼女。寝る時には寝る時に適したメイクをする「寝化粧」というシャーロットの概念は、彼女の幼少期の影響を受けて積み上がってきたものなのです。

メイクアップアーティストとしてのキャリア

シャーロットは、イビザで生活する両親の影響で、女優や俳優・アーティストといった業界人に囲まれた刺激的な環境に身を置いていました。その中で「自分も何かクリエイティブなことをしていきたい」という想いが強くなっていきました。

そのときに出会った世界的メイクアップアーティスト、メアリー・グリーンウェルから大きくインスピレーションを受けることになります。メアリーは、スーパーモデルや海外一流雑誌の表紙のメイクはもちろん、英国大使にも任命され、ダイアナ妃・ウェールズ王女などの皇室関係のメイクも担当する世界的にも一流のメイクアップアーティストです。彼女との出会いでシャーロットは、一生涯メイクアップアーティストとしてやっていきたいと決断します。

メアリーに師事し、独立してからシャーロットの華々しいキャリアがスタートします。ケイト・モスやキム・カーダシアン、ジゼルブンチェン、国際人権弁護士のアマル・クルーニーなどのヘアメイクとして活躍。セレブたちを次々にクライアントとして獲得していきました。Zadig&Voltaire、Mugler、Donna Karenなどのブランドのショーメイクディレクターとしてファッションウィークを担当することでファッションのフィールドでも仕事の幅を拡大。ハイブランドのファッションルックや有名雑誌などを担当し、一流の仲間入りを果たしました。

シャーロット・ティルブリーの設立

メイクアップアーティストとしてのキャリアを飛ぶ鳥落とす勢いで加速させる中、シャーロットは2013年に、自身の名前でコスメティックブランド「Charlotte Tilbury」をロンドンに立ち上げました。スキンケア発想で肌への優しさがありながら、高発色高品質で数々のセレブリティを魅了し、業界でも瞬く間に有名ブランドへと浸透していきました。

彼女が普段ジェニファーロペスや、ペネロペクルス、リアーナといった著名人に対して行うメイクから、ファッションショーの舞台裏でも使用し、自身でも愛用していることから、クオリティには定評があり、世界中に多くのファンを抱えるブランドとして成長していきました。

今年2018年にはフラッグシップストア「コヴェントガーデン」「ウェストフィールドホワイトシティ」をロンドンにオープンし、一流メイクアップアーティストの施術を受けられる美容サロン兼小売店として発足しました。ロンドンの美容小売店での最高売上額を叩き出すなどトップセールスを記録すると、Sephoraなど世界中の大手コスメ販売店でも取り扱いが決まり、海外67カ国での展開にまで伸長していきました。

代表的なアイテムである「magic cream」はスキンケアでありながらファンデーションに近しいカバー力を兼ね備えており、もちろん寝る時もつけて使えるということで人気を博しています。

「ベッドルームアイズ」という概念

近年では「ベットルームアイズ」というアンニュイで脱力感のあるアイメイクがセレブの間でも注目されています。ベッドルームアイズという単語自体には「色目、誘惑的な目つき」という意味合いがあり、映画の題名にもなったことがあるキーワードです。

シャーロットのクライアントであり、世界的セレブリティのキム・カーダシアンは、シャーロットを真似て「夫に素顔を見せない」寝化粧派に転向した一人です。目元を明るくするアイクリームで肌トーンを整え、黒ではなく少し抜け感のある茶色のアイラインを引き、軽くマスカラを塗るというシャーロットの教えを純粋に守っています。

影響を受けた女優のクリステン・スチュアートも、肌はメイクオフしても、マスカラやアイライナーは落とさずに過ごしているそうです。翌日の目元のアンニュイ感がいいので落とさないという人も最近増えてきているそうで、じわじわと広がりを見せる「寝化粧」。使用するアイテムには気をつけたいものです。

シャーロットは、「メイクは落とすもの」だという常識を覆し、目元だけアイメイクを施し、魅惑的で美しい姿で寝るというカルチャーを生みました。寝るときでもメイクをしていることは「怠惰」ではなく「こだわり」として認識されるようになってきたのです。まだまだ大きく浸透していない文化ですが、メイクアップという概念を覆す彼女の革新的なアクティビティには今後も目が離せません。

参考:

INTO THE GROSS

CHARLOTTE’S UNIVERSE

VOGUE

SPUR.JP

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