AKIRA:アニメーション新時代の旗手

『AKIRA』は大友克洋監督制作の1988年公開のSFアニメーション映画。1989年にアメリカで公開、その後欧州やアジア6カ国で公開される。日本アニメを指すジャパニメーションの元祖的な存在。

■AKIRAのあらすじ

1982年7月、日本の東京近辺で新型爆弾が炸裂し、東京が崩壊。これをきっかけに世界大戦が勃発し、世界は荒廃していくこととなります。それから37年余りが経過した2019年。東京湾上で新たに再興した「ネオ東京」が広がり、翌年の2020年にはオリンピックも控えることになった。

目まぐるしい復興を見せるネオ東京、しかしその一方で反政府ゲリラはいまだ根強く軍と衝突。街や都市は発展しても、人々の心の中は荒廃したまま世界でした。

そんな世界で主人公である金田正太郎(カネダショウタロウ)もまた、仲間たちとの暴走行為に明け暮れる日々を送りますが、ある日大きな転機を迎えることになり……。

近未来、不良、バイク、恋、バイオレンスなど、あらゆる要素をすべて作品内に盛り込みながら高いレベルでまとまったAKIRA。その凄さや世界に与えた影響をひも解いていきます。

■発表当時から大きな衝撃を産んだ

当時、アニメーション映画としては破格の10億円にも及ぶ制作費を投入。また、制作陣営も「ほかのアニメに影響が出てしまう」と言われるほどのスタッフを集めたものの、それでも尚「厳しい注文や精密さを要求されるのについていけないスタッフもいた」とまで言われています。

また、描く際の「見せ方」も大きなこだわりを持ち「シーンをくっきり見せるのか、背景をぼかすのか本当の映画を撮影するかのように『レンズを使い分ける』」という技法をここまでアニメーションにしっかりと盛り込んだのも、当時では非常に珍しくありました。

AKIRAは観る人の視覚だけでなく聴覚にも訴えかけます。民族楽器を多く取り込んだ映画音楽も海外で高い評価を受けただけでなく、いわゆる映像を先に制作してから声をあてる「アフターレコーディング(アフレコ)」ではなく、先に音声から録音する「プレスコアリング(プレスコ)」を採用していました。

そしてプレスコを採用することに加え、従来のアニメーションよりも口元の動きのパターンを増やしたことにより、自然でよりリアリティのある描写を実現しました。そうしてこだわり抜いた結果、「どんな大作でも普通は10万枚を超えない」と言われていたるセル画枚数は、15万枚にも及ぶことに。

しかしこれで大友克洋監督のこだわりはとどまりませんでした。

後にVHS化する際に、修正や手を加えたかった箇所、更に音響の改善などを1億円かけて施し『国際映画参加版』としてリリース。作品に対して一切の妥協を許さないプロとしての姿勢

『攻殻機動隊』や『スタジオジブリ作品』など、今でこそ日本のアニメは「ジャパニメーション」と呼ばれ世界的にも高く評価をされていますが、その礎を築いただけでなく世界全体のアニメーション業界に大きな影響を与えた作品であったといえるでしょう。

■AKIRAに影響を受けた映画業界

世界に衝撃を与えたAKIRAは、後のクリエイティブ業界に大きな影響をもたらします。

映画界の巨匠スティーブン・スピルバーグ監督がいます。スピルバーグ監督はAKIRAを鑑賞した際に「私はこういう作品が作りたかった」と発言したといわれています。また、世界的大ヒット映画『タイタニック』や『アバター』の監督であるジェームズ・キャメロンはAKIRAを観た結果日本から優秀なアニメスタッフを引き抜きました。

また、AKIRAが大きな影響を残したシーンのひとつとしてよく挙げられるのが、映画冒頭のバイクチェイスシーン。

先ほどご紹介したスティーブン・スピルバーグ監督が2018年に発表した「レディ・プレイヤーワン」にも、AKIRAの金田バイクそしてチェイスシーンが登場。リスペクト感じることのできるワンシーンでした。

■バイクシーンは意外なところにも反響が

AKIRAが公開されたことにより、影響を受けたのは映画監督やアニメーション界といった芸術系のクリエイティブな人たちだけではありません。主人公、金田が乗っているバイク自体にも注目が集まることに。

極端に長いホイールベースや、4輪のレーシングカーのように低いライディングポジション。デジタルメーターなどは、当時のバイクにはまずみられない構造であると同時に、近未来を予感させるものであり、AKIRAの人気ポイントのひとつとなりました。

AKIRA公開後から世界中でこの金田バイクのレプリカ制作をする人が続出。中には7年、1000万円をかけて完成させる強者まで現れましたが、それだけ当時の衝撃が強かったことを表しています。

そして映画公開から14年後の2012年。AKIRAの原作者であり映画監督を務めた大友克洋氏の原画展の開催を機に、自走できる金田バイクが発表されました。

ファンたちの熱意が、当時では考えられなかった金田バイクを実現化。まさに、アニメーションの世界が描いていた未来に、現実が追いついた瞬間でもありました。

■AKIRAが残した功績

映像の美麗さや、音響の素晴らしさ、後の偉人たちのルーツとなった点など、その後の世界のアニメーション業界やアニメファンに大きな影響を与えたAKIRA。

そういった中でも最も偉大な功績のひとつは「アニメーションは子供だけのものではない」という風潮を作った部分ではないでしょうか。

当時はやはり一般的には「アニメ=子供のもの」というイメージが先行していた中で、アニメコンテンツの本来のメインターゲット層である子供をほとんど置き去りにし、青年や大人をターゲッティングしたAKIRAは革新的なものであり「大人向けアニメーション」という新たな在り方を、世界中に示した作品でもありました。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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