スティーヴン・スピルバーグ:希代の映画監督

スティーヴン・スピルバーグはアメリカ出身の映画監督であり、代表作は『ジョーズ(Jaws)』『E.T.』『未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kin)』『プライベート・ライアン(Saving Private Ryan)』『ジュラシックパーク(Jurassic Park)』など。映画監督の中でも「世界一のヒットメーカー」と呼ばれています。

■監督としてのスタートはまさに「映画のようなストーリー」

幼少のころから8mmフィルムで動画を撮影することが大好きだったスティーヴン・スピルバーグが、本格的に映画の世界に触れたのは17歳のころ。ユニバーサル・スタジオにツアーで参加した際、ひとりで抜け出しスタジオ内を探索するという破天荒な行動に。

その後スタッフに見つかってしまい、強制退場……かと思いきや、そのスタッフに通行証を発行してもらい自らスタジオ内でほかのスタッフと懇意になり、最終的には顔パスでスタジオ内へ入ることができるようになるほどの人脈を築き上げていきます。

その後、カリフォルニア州立大学で映画を専攻。その傍ら、空き時間があればユニバーサルへ向かいついに空き部屋を自分のオフィス兼住居としました。その後、映画製作資金を出資してもらい、最初の作品となる短編映画「アンブリン(Amblin)」を完成させ、それがユニバーサルの目に留まり7年間の契約を獲得することに成功します。ちなみにこのアンブリンは後にスティーヴン・スピルバーグが立ち上げることとなる制作会社の名前にもなりました。

これがスティーヴン・スピルバーグとしての監督の第一歩。ここに至るまでは正に映画のようなストーリーだったといえるでしょう。

■20代で大ヒット「世界一の映画監督」に

『ジョーズ』は、名作映画『ゴッドファーザー(The Godfather)』の興行収入記録を破ることとなり、当時の世界歴代1位となります。弱冠28歳にして文字通り「世界一の映画監督」と、なりました。

その後は『未知との遭遇』や『E.T.』など、地球外生命体とのコンタクトや友情を描いたSFモノ。

また、スターウォーズでおなじみのジョージ・ルーカス監督とタッグを組みアドベンチャー映画である『レイダース/失われたアーク《聖柩》(Raiders of the Lost Ark)』を制作。これはのちの大ヒットシリーズである『インディ・ジョーンズ(Indiana Jones series)』の第一作目にあたります。
スティーヴン・スピルバーグ監督作品において特に驚かされるのがその「方向性の豊富さ」ではないでしょうか。

その名を世界中に知らしめることとなった『ジョーズ』は、パニック映画の金字塔として今でも語り継がれる作品です。

王道SFである『未知との遭遇』。その一方で、同じ地球外の生命体をモチーフとしながら全く異なったハートフルファンタジー映画である『E.T.』。

その一方で『未知との遭遇』と『E.T.』の間には、考古学者であるインディアナ・ジョーンズを主役としたトレジャーハントのアドベンチャー作品である『インディ・ジョーンズシリーズ』を発表。

全く異なった題材の映画を次々に発表し、そのどれもが世界的大ヒット作品に。まさに「スティーヴン・スピルバーグ監督作品と書いてある映画を観れば、外れはない」そんな時代が到来します。

■これまでの作風が一変した90年代以降

デビューから90年代までのスティーヴン・スピルバーグ作品は「夢」や「憧れ」や「非現実」を題材にしたものが多くありました。その根底には「ウォルト・ディズニーこそぼくの生みの親」という考えがあってのことでした。

しかし、90年代になるとその作風が一変します。
特に顕著に表れていたのは戦争映画の傑作と名高い『プライベート・ライアン』です。

残虐な表現であろうとクオリティを高めるためであれば一切妥協を許さず盛り込んだこの作品は、特に冒頭の「ノルマンディー上陸作戦」の描かれ方が非常に大きな反響を呼び「その後の戦争映画の在り方を変えた」とまで言われています。

2000年代に入ると更にそこから一変、今度は「政治的メッセージ性の強い作品」を中心に制作をはじめます。『リンカーン(Lincoln)』は、歴史上の人物を題材にした映画の主流である伝記的な描き方ではなく、奴隷の永久解放のための合衆国憲法修正第13条を可決させるために奔走する姿が描かれています。

90年代以降のスピルバーグ作品の多くに共通してみられるキーワードは「自由」ではないでしょうか。

『プライベート・ライアン』は戦うことで自由を手にするために。『リンカーン』は法案を通すことで奴隷に自由をもたらすために。表現の方法は違えど、そんなメッセージ性を感じることが出来ます。

スティーヴン・スピルバーグ監督を知らない人間が、90年代以前の作品とこの『プライベート・ライアン』や『リンカーン』を観て、果たしてどれだけのひとが「同一人物が制作に携わった」と感じることが出来るでしょうか。そう言えるだけの変貌ぶりを遂げていました。

■変わらない映画へのこだわり

題材こそ、90年代以前と以後で大きく変化したものの、スティーヴン・スピルバーグが携わってきた作品にはひとつの共通点が見えてきます。それが「視点」です。

スティーヴン・スピルバーグの名を世に知らしめた『ジョーズ』は、サメが人を襲うシーンで必ずサメの視点に変わりました。『E.T.』では、E.T.自身は子供にしか見えないという設定をよりリアルなものにするため、主人公の視点を用います。

『プライベート・ライアン』では、実際にレンズに血糊がつき、リアリティのある音と共にさながら本当に戦場へスリップしたかのような体験へ観客を誘っていました。

また、作品の題材や作風が年代や作品ごとに一変していった変さを見ていくと、スティーヴン・スピルバーグにとって映画とは「自分の表現したい今を表現したいように映す」という、こだわりや気概を感じることが出来ます。

そのことを示すかのように2018年に公開されたSF作品『レディ・プレイヤー1(Ready Player One)』は、ここ最近のスティーヴン・スピルバーグ監督とはまた少し違った顔をのぞかせる作品に仕上がりました。

変幻自在にして希代の映画監督、スティーヴン・スピルバーグ。
次はいったいどんな作品を産み出すのでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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