労働者博物館:労働者という庶民の立場からの視点でデンマークの人々の生活の歴史を紹介する博物館

デンマークのコペンハーゲン市内にある労働者博物館は、デンマークの労働者階級の人々の日常生活とその発展に関連する内容の展示がされています。デンマークといえば、美しいインテリアデザインや充実した福祉のイメージが強いですが、かつては貧富の差や様々な社会問題を乗り越えたという歴史的背景があります。オブジェクト、芸術作品、出版物、アーカイブ資料等多様なコレクションを通して、来場者は当時の人々と同じ目線でデンマークの労働の歴史を学ぶことができます。今回はそんな労働者博物館の歴史と見どころについて詳しく解説していきます。

(Public Domain /‘The Workers Museum. Courtyard.’ by Ib Rasmussen. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

■労働者博物館とは

労働者博物館は1983年にオープンした、コペンハーゲン市内にある小さな博物館です。デンマークの労働者階級の歴史を記録した博物館で、19世紀後半から労働条件がどのように変化したのか、労働者階級の人々はどのような住居に住み生活をしていたのかを、様々な展示物から知ることができます。館内では当時の生活の様子を細やかに表現しており、デンマークの労働者達の日常や、昔のコペンハーゲンの通りに入り込んだかのような、どこか懐かしいような世界に来場者を誘います。

展示スペースだけではなく、ギフトショップ、 1950年代スタイルのコーヒーバー、地下レストランがなどもあり、特に地下レストランは地元の人たちからも人気が高く、いつも賑わっています。ビールやおつまみも楽しむことができます。ギフトショップには昔ながらのおもちゃやお菓子があり、子どもにも人気です。

■労働者博物館の見どころ

今でこそ福祉に手厚い国として名高いデンマークですが、その成り立ちの背景には、生活様式の大きな変化を経て現在の福祉社会に至るまでのデンマークを支えてきた労働者階級の人々の存在がありました。例えば、8時間労働制を主張する闘いの旗の展示を見ても、労働時間が短いことは自然にそうなったわけではなく、人々が勝ち取ったものだということが分かります。労働者博物館では、当時の人々の生活を知ることができる様々な展示をしています。絵や写真による平面だけではなく、館内には住居の室内や街の様子の再現がされていて、空間に立ち入って立体として世界観を体感することができる体験型の展示が魅力です。

そんな労働者博物館では、どのような展示がされているのでしょうか。見どころをご紹介します。

《居住スペースの再現》

居住スペースの再現エリアでは、家具から小物まで絶妙に再現されていて、当時の人々の生活の様子を伺うことができます。1900年代のものは、装飾性の少ない簡素なキッチン、居間、居間の一角にあるベッドスペースを見ることができます。ベッドスペースの足元にはストーブがあって、その上に洗濯物が干されているなど細部にわたり再現されています。また、室内だけではなく屋外で休日を過ごす家族の様子の再現なども見ることができます。

デンマークの人々からすると、祖父母の家に遊びにきたかのような気持ちになる、1950年代のキッチンや子ども部屋、居間が再現されているスペースがあります。

コペンハーゲンでは1900年代初め辺りに建てられたアパートや集合住宅の中だけを改装したものが現在でも数多く残っています。その為、自らの住居にその面影を感じる地元の人も多いでしょう。この頃の内装では、ポップで暖かみのある色使いの小物やインテリアが増えていることが伺えます。決して派手さや贅沢さのあるものではありませんが、キッチン台やカーテンのカラフルな色使いは、見る人を楽しい気持ちにさせてくれます。

《街の様子の再現》

1930年代の街の様子が再現されたエリアでは、洋服屋や食料品店、自動化が進んだビール工場などが紹介されています。決して広いとは言えない室内での展示ながらも、商品棚やカウンター、レジ、ショーウィンドウの再現や、ウォールの絵、音響、モニター映像による説明など、上手く空間を利用した伝わりやすい展示になっています。レジカウンターでは子供たちがお店屋さんごっこをして実際に遊んだり、展示物に触ったりできる場所もあり、様々な楽しみ方をしている見学者を見ることができるでしょう。

1950年代の街の様子の展示エリアでは、洋服屋のショーウィンドウに力が入っていて、当時のファッションの流行を知ることができます。ハットや手袋、蝶ネクタイなどの小物から、コート、カーディガン、プリーツスカート、夏物はサマードレス、更には下着なども置いてあります。また、当時のテレビやラジオの展示もあり、レトロな雰囲気が漂っています。

《ワークショップやイベント》

館内ではワークショップやダンススクール、1950年代スタイルのファッションショー、歌の会など、様々なイベントが催されています。地域の人たちにも愛される博物館です。

※デンマークの伝統的な料理「スモレブレード」

《2つのカフェ》

上の階のコーヒーショップと、地下レストランがあります。コーヒーショップは1950年代スタイルの落ち着いた雰囲気で、コーヒーや軽食、菓子類を楽しむことができます。読書や勉強をする人の姿もあり、ゆったりとした時間が流れます。地下レストランはコペンハーゲンで唯一伝統的なデンマークランチを提供する場所として有名で、人気が高くいつも賑わっています。

労働者博物館の展示は、楽しげなものだけではなく、貧しい人々の様子を写した写真や展示もされています。例えば貧しいワーキングチルドレンの問題なども細かく扱っており、現代の子どもたちにもわかりやすいように易しい内容で説明がされています。現代の手厚い福祉社会が当たり前のものになっている世代にとって、貧しい労働者たちの暮らしは衝撃的なものかもしれませんが、今の暮らしの背景には過去の人々の努力があったことを再確認する機会になることでしょう。

■おわりに

労働者博物館は、当時の人々の暮らしの様子を立体的に感じることができる博物館です。また、福祉国家として世界的な地位を確立するまでの経緯を知ることができるので、子供の教育の場としても適しています。

公式ホームページ

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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