コペンハーゲン国立美術館:デンマーク最大級の美術館

コペンハーゲン国立美術館は、1896年にデンマーク王室のコレクションを一般国民に公開するために開館した、デンマークの首都コペンハーゲンにある美術館です。デンマーク王室がコレクションした作品から近現代アートまでの作品が所蔵されており、デンマーク国内最大の美術館です。そんなコペンハーゲン国立美術館の歴史と所蔵品を解説します。

■コペンハーゲン国立美術館とは

17世紀ごろ、デンマーク王室や貴族たちは絵画を買い集めていました。それらは私有財産であり、限られた人しか見ることができないものでした。しかし19世紀に民主主義が導入されると、王室がコレクションした作品を一般国民にも公開しようという動きが出てきます。そうして膨大なコレクションを保存・展示するために、1896年にエスター・アンレッグ公園に建設された美術館が、コペンハーゲン国立美術館です。

赤褐色のレンガで建設された建物は、デンマークの建築家ウィルヘルム・ダーララップが設計したもので、ネオルネッサンスの建築物として素晴らしい外観となっています。1998年には拡張工事により、旧館とブリッジで連結された白亜の新館が建設され、リニューアルオープンしました。コペンハーゲン国立美術館には年間約40万人が訪れています。

■コペンハーゲン国立美術館の所蔵品

コペンハーゲン国立美術館には、中世ルネッサンスを代表する画家アンドレア・マンテーニャをはじめとして、ルーベンスなどの有名な画家の作品が多く所蔵されています。また、中世の作品だけではなく、近代絵画を代表するアンリ・マティスやムンク、モディリアーニなどの作品もあり、全部で約26万点を所蔵しています。

特にコペンハーゲン国立美術館は、アンリ・マティスの作品が充実していることで有名です。アンリ・マティスの作品は『マティス夫人の肖像』をはじめ、実に18作品を所蔵しています。

また、デンマーク国内で活躍していた、デンマーク絵画黄金時代のコンスタンチン・ハンセンなどの国内作家作品が多く展示されています。フランス印象派前のデンマーク絵画を楽しむことができるでしょう。

そんなコペンハーゲン国立博物館のコレクションにはどのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品を紹介しましょう。

(Public Domain /‘Christ as the Suffering Redeemer’ by Andrea Mantegna. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

≪『贖い主としてのキリスト』1495年-1500年 アンドレア・マンテーニャ ≫

本作品は、初期ルネッサンス期のイタリアの代表的な作家であるアンドレア・マンテーニャによって、1495年-1500年に描かれています。

マンテーニャは1431年にパドヴァ近郊に生まれました。フランチェスコ・スクァルチオーネのもとで修業時代を過ごした後、ヴェネツィア派の画家ヤコポ・ベリーニの娘と結婚しています。1460年以降はゴンザーガ家の宮廷画家として活躍し、1506年75歳で亡くなりました。

マンテーニャは古典的な題材を描くことが多く、遠近法を取り入れた画面構成と彫刻的に描かれた人体など、現実味を帯びた独特の画風を確立させています。彼の画風はイタリアルネッサンスの中でも独自性が強いものでした。

本作品はそんなマンテーニャの、古典を題材とした作品のひとつです。

(Public Domain /‘The Judgement of Paris’ by Lucas Cranach. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

≪パリスの審判≫1527年 ルーカス・クラナッハ(父)

本作品はドイツ・ルネッサンス期に宗教画家として活躍していた、ルーカス・クラナッハによって1527年に描かれたものです。

ルーカス・クラナッハは1472年生まれで、ドイツ・ルネッサンスの代表的な画家として知られています。その作品のほとんどは宗教画です。彼の作品からは、ヴィーナスを妖艶に描くなどのイタリアの影響を見ることができます。また宗教改革で知られるマルティン・ルターと親交があったため、彼や彼の家族の肖像画も多く手掛けています。ルーカス・クラナッハはザクセン選帝侯フリードリヒ3世の宮廷画家としても知られており、その生涯のほとんどを宮廷画家として送りました。

本作品はそんなルーカス・クラナッハが1527年に描いた作品です。この題材は美しいといわれる女神3人が、トロイア王の息子パリスに3人のうち誰が一番美しいかという審判をゆだねたというギリシャ神話のひとつです。パリスの下した審判が、トロイアを滅ぼしてしまう要因のひとつになったとされています。この題材は他にも多くの画家が好んで描いています。

≪クレスチャンスボー宮殿の眺め≫1907年 ヴィルヘルム・ハンマースホイ

本作品は、黒・白・グレーの3色を基調に、色合いを抑えた画風が特徴的なデンマーク出身の画家ヴィルヘルム・ハンマースホイによって1907年に描かれました。

ヴィルヘルム・ハンマースホイは、1864年にデンマーク・コペンハーゲンの恵まれた家庭に生まれています。8歳からデッサンを学び、1879年にはデンマーク王立美術院へ入学しました。このころからすでに白と黒を基調にしたモノトーン調の画風が特徴的だったハンマーホイは、当時のアカデミーにはなかなか認められませんでした。

1888年に初めてアルフレズ・ブラムスンがハンマースホイの作品を購入し、その後ハンマースホイの生涯のパトロンとなり、生前には展覧会などを企画しています。1910年代にはヨーロッパで一定の評価を受けるようになりますが、1916年に彼は病のため亡くなります。生前は高い評価を受けていましたが、死後は忘れられた存在となった彼が、再び評価されるようになったのは最近のことです。

ハンマースホイの作品には、室内の人物画を描いたものが多いです。また肖像画のモデルは家族や知人に限られており、同じ部屋や家具を繰り返し描いています。描かれている人物が、作品を見る人と視線を合わせないように描かれているのも彼の絵の特徴です。

本作品は室内画を描くことが多かったハンマースホイの数少ない風景画といえます。ハンマースホイの風景画には人物が描かれていないものがほとんどです。無人かつモノトーン調で描かれた風景画からは静寂を感じることでしょう。

美術館からの眺望

終わりに

コペンハーゲン国立美術館は王室のコレクションを中心に、中世から近現代の作品を多く展示しています。また、デンマーク出身の画家の作品も多く展示されているので、知らなかった新しい絵との出会いがあるかもしれません。

https://www.smk.dk

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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