ラナース美術館:デンマークの近代作品に触れられる美術館

文化センターの中にあるラナース美術館は、多くの市民に愛される公共施設でもあります。古典作品よりかは19世紀から20世紀という、割と現代寄りの作品を中心に展示しており、近代デンマーク芸術の宝庫となっています。今回はそんなラナース美術館を紹介していきます。

ラナース美術館とは

こちらの美術館は、ユトランド半島のラナースにあります。ユトランド半島は、ヨーロッパ大陸の北部の半島で、その大半の領域をデンマークが占めていますが、半島南部にはドイツ領もあるという複雑な半島です。北海とバルト海を分かつような南北に長い半島で、かねてより領土争いが絶えない地です。現在はデンマークとドイツの領有で治まっているものの、それも悲惨な歴史があっての事です。

1887年に設立されたこの美術館は、現在文化センターの2階にあります。同建物には他に博物館と図書館などが併設されており、美術館以外にも見るものが盛り沢山の、たいへん楽しめる場所となっています。文化センターは白っぽい大きな正方形の建物で、それ自体のデザインもモダンで洗練されています。ぐるっと一周回ってみて欲しいほどです。この建物は1964年から1969年に建てられました。

主に19世紀から20世紀に活躍したデンマーク作品を中心に展示しています。

ラナース美術館の収蔵品とは

コレクションの展示は10室で行われ、それぞれ時代やスタイル、ジャンルなどのテーマを設けており、見やすいよう工夫されています。美術館内にはカフェもあり、ゆったりとした時が過ぎます。古典美術館というより近代美術館であり、19世紀から20世紀のデンマーク作品を見たい方にはおすすめの美術館です。

主にデンマーク黄金時代と呼ばれた19世紀頃の作品や、自然主義の作品が飾られています。同じ時代の作品が充実しているので、見比べる楽しみがあります。同時代のアーティストでも、かなり作風が違うことに驚かされることでしょう。他にも、デンマーク絵画の巨匠と呼び声高いクリストファー・ウィルヘルムや、20世紀を代表するアーティストのヴィルヘルム・ランドストロムなどの作品があります。著名な画家の作品も多く、大変見応えがあります。

果たしてどのような収蔵品があるのでしょうか?早速見て行きましょう!

(Public Domain /‘Interior with Young Woman from Behind’ by Vilhelm Hammershøi. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

〈背を向けた若い女性のいる室内〉ヴィルヘルム・ハンマースホイ

ヴィルヘルム・ハンマースホイは、白と黒と灰色という薄暗い色調の作品が多い画家です。静寂を纏った空間を描き出す事を得意としています。モデルとなる人物は大抵後ろを向いており、表情をうかがう事は出来ません。その後ろ姿には哀愁が漂います。

こちらの絵も相変わらずの色調で、その後ろ姿はどこか寂しさを纏っているように見えます。彼は若い女性の絵を多数描き残しており、そのどれもが美しくも儚げな雰囲気をもっています。例え後ろを向いていても、明るい色合いならば全く違う印象を持つ事でしょう。それだけ色というものが絵画の印象を左右する、重要な役割を担っていると感じられる一枚です。

〈ニールス・エベッセン〉アグネス・スロット=モラー

女流画家であるアグネスの絵は写実的でありながなら、どこか女性的な曲線美もみられます。彼女は夫も画家で、夫婦二人三脚で芸術活動を行っていました。彼女の描く人物の顔には虚ろな眼差しが見られ、背景の色調も暗い物が多いです。しかしなぜか柔らかさや優しさを感じられる、そんな不思議な絵を描く画家です。

こちらの絵はユトランド半島に伝わる貴族の伝承を元にした絵です。地元では英雄とされている、レンツボルグ伯ゲルハルトを殺したというニールス・エベッセンがモデルです。どこか誇らしく凛々しい表情で描かれた人物は、強い志と目的をやり遂げた心情をあらわにしています。馬の足取りは力強いように見えますが、疲れた様子も感じられ、遠い彼方から主人を乗せて来たのかなと思わせる一枚です。晴れ晴れとした心情と暗い気持ちという、相反する感情を読み取ることができます。

4:42- 『ニールス・エベッセン』

〈ロスキレフィヨルドの夏の日〉ローリッツ・アンデルセン・リング

ローリッツ・アンデルセン・リングは20世紀初頭のデンマークを代表する画家で、象徴主義と社会主義両方を取り入れ、双方の開拓に力を入れました。彼は美術学校で学ぶ古典的な技法に嫌気がさし、自らで象徴主義などの路線を開拓したと言います。また、学生運動グループに加入していたこともあり、そこで社会主義的な考えをよりいっそう強めたようです。

この絵は彼の傑作と言われ、タイトルの通りロスキレのフィヨルドの夏をそのままに描いています。夕暮れ時なのか、夏の日でありながらそこまで明るくありません。まだ町が開発される前の風景が描かれており、そこからは自然の偉大さと壮大さを感じます。

終わりに

ラナース美術館には、デンマークの現代美術の芸術家たちの作品がずらりと並びます。広々とした美術館で、回り切るのにも時間の掛かる美術館ですが、その分見終わった時の満足感は大きいでしょう。

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※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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