イスラム科学技術歴史博物館:イスラムで発展した科学機器などが展示されている博物館

トルコのイスタンブールにあるイスラム科学技術歴史博物館は、イスラムの「科学」や「技術」に関する様々な機器を展示している博物館です。ヨーロッパとはまた異なった世界を堪能できる博物館の歴史と、所蔵品について詳しく解説していきたいと思います。

■イスラム科学技術歴史博物館とは

2008年に開館したイスラム科学技術歴史博物館は、トルコのイスタンブールにあるギュルハネ公園内の旧厩舎(元トプカプ宮殿の庭園)にあります。

※トルコ・イスタンブールにあるギュルハネ公園の敷地内

建物自体はトプカプ宮殿の一部を改装して作られており、当時の遺構が残されています。また、イスラム世界の天文学などを知る上でも大変貴重な博物館で、施設の中央には地球儀が設置されています。

イスラム科学は、主にアラビア語を話す文化圏で、イスラム世界に古くから伝わる科学と、ユダヤ教徒やキリスト教徒など、様々な宗教の人々によってもたらされた科学を吸収しながら8〜16世紀にかけて発展していきました。当初、ヨーロッパの科学よりも進歩していたとされる「イスラム科学の成果」を展示しているのがイスラム科学技術歴史博物館なのです。

■イスラム科学技術歴史博物館の所蔵品

イスラム科学の文学・医学・化学・光学・兵器技術など、各分野のコレクションが展示されています。博物館にある所蔵品のほとんどは当時の資料や現物をもとに復元されたレプリカなのですが、精巧に復元されており大変迫力があります。

最近、多くの博物館で行っている体験型の展示ではなく、展示物それぞれに詳しい解説が付いており、1つ1つをじっくりと読み込んで見られるように工夫されています。また、分野別に細かく分類されて展示されているので、興味のある分野から観察することが出来るのも、この博物館の特徴と言えるでしょう。

そんなイスラム科学技術歴史博物館のコレクションには、どのような物があるのでしょうか。主な所蔵品をご紹介します。

※14世紀に作られた水時計の断片(イスラム科学技術歴史博物館内に展示)

≪14世紀の水時計≫

「時計」というよりも、まるで「イスラムのインテリア」のような水時計で、14世紀に作られたと考えられています。

水時計とは、ひとつの容器に水が流入するように設定し、その容器に入った水面の高さによって時間を計るという物です。日時計は、日中でないと使用することが出来ず、日が暮れた夜にも時間が分かるようにと作られたのが水時計です。日時計と共に人類が使用した「世界で最も古い時計」とも言われています。

紀元前16世紀のバビロニアや古代エジプトでは、すでに水時計が作られており、イスラム世界だけではなく、インドや中国でも使用されていました。ちなみに、中国で発展した水時計は漏刻(ろうこく)と呼ばれ、日本にも伝わってきています。

東ローマ帝国などに支配されたイスラム地域で発達した水時計は、複雑な歯車の組み合わせによって正確な時刻を示すことが出来るようになり、ヨーロッパにおいて更なる発展を遂げました。約1000年もの間、時間を知るためのツールとして世界中で使用されてきた水時計ですが、次第に水時計よりも正確な時間を計測することができ、更にコンパクトになった、振り子時計が使用されるようになっていきました。

イスラム科学技術歴史博物館に展示されている水時計は、14世紀に使用されていた物とされています。とても大きな物ですが、当初の水時計よりも正確に時間を計測することが出来るようになったようです。またゾウやペルシャ絨毯の模様など、様々なデザインの水時計を見ることも出来ます。

※古代の天文学者などが使用していた、天体観測用機器(イスラム科学技術歴史博物館内に展示)

≪イスラム科学の天文機器≫

イスラム科学において、特に注目されていた分野は天文学と言われており、イスラム科学技術歴史博物館では天文学に関する多くの機器が展示されています。

※イスラム教徒の人々による祈りの様子

イスラム世界では、毎日メッカの方角へ向かってアッラーに祈りを捧げる習慣があり、出来るだけ正確な祈りの時間やメッカの方向を知る必要がありました。また、イスラム教徒の多くはヨーロッパの大航海時代以前から、船で世界各地を旅していました。イスラムの人々は、世界中で見ることの出来る「星」を研究し、正確な時間やメッカの位置を知ろうとしました。イスラム世界で天文学が大きく発展したのは、敬虔なイスラムの教えがあったとも言えます。現在でも、多くの星にアラビア語の名前が付けられている由縁でもあります。

※ウズベキスタンにある、天文学者ウルグ・ベク像

また、天文学者のウルグ・ベクは、1年が365日であることを計測し、現代の精密機械で測った数値との差は、なんと僅か62秒の差であったと言われています。

ヨーロッパで天文学が発達するよりも以前、イスラムの天文学者たちは次々と天文機器を発明していきました。そんな天文学者たちの発明品は、イスラム科学技術歴史博物館で堪能することが出来ます。

■終わりに

イスタンブールでは人気スポットを巡る観光バスが運行されています。乗り降りは自由で、イスラム科学技術歴史博物館も観光施設の1つとして訪れることが出来ます。

観光客にはまだあまり知られていないですが、イスラム科学の原点、科学者たちの素晴らしさに触れることが出来きる博物館です。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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