ベルギー漫画センター:ベルギー発、世界中で愛される漫画の歴史を紹介する博物館

ベルギー漫画センターは、ベルギーの首都ブリュッセルにある漫画専門の博物館です。世界中で愛されているベルギーの漫画『タンタン』をはじめ、ヨーロッパ中から集めた貴重な作品を鑑賞することが出来ます。そんなベルギー漫画センターの歴史と、所蔵品について解説していきましょう。

■ベルギー漫画センターとは

ベルギー漫画センターは、1989年にベルギー・ブリュッセルで開館した博物館です。

※ベルギー・ブリュッセル市内の壁画アート

ベルギーでは古くから漫画が親しまれており、ヨーロッパ各国の中でも漫画愛好国として有名になりました。

20世紀からフランスと共にヨーロッパの漫画文化を牽引し、国内では700人以上もの漫画作家が活動しています。そんなベルギーの漫画文化を紹介するため、この博物館は誕生しました。

博物館の建物は、1906年に建設されたアールヌーヴォー様式の旧デパートを再利用しています。

大理石で作られた立派な階段や、外の光によって煌く天井など、建築物としても高い評価を受けています。建物を設計したヴィクトール・オルタは、ベルギーの著名な建築家で、アールヌーヴォー様式を建築物へ取り入れた最初の人物とされています。

しかし、この建物は時間の経過と共に荒廃し、解体せざるを得ない状況になりました。そこで建築家のジャンデルハイは、当時発足しつつあった「ベルギー漫画センター」の拠点地として、この建物の利用を提案したのです。

その結果、建物はベルギーの公共事業として購入され、1984年「ベルギー漫画センター」が正式に設立されることとなりました。ちなみに、初代議長を務めたのは、漫画家エルジェのアシスタントである、ボブ・デ・ムーアでした。

いよいよ博物館としての開館が決まり、建築家・ピエール・ヴァン・アッシュに改装・修復工事を依頼しました。そして、ヴィクトール・オルタの建築物を残しつつ、漫画文化をアピールするためのスペースとして生まれ変わったのです。

現在は、図書館・レストラン・研究室なども併設しており、年間約20万人もの人が訪れる、ブリュッセルの観光名所の1つとなっています。

『Musée de la Bande Dessinée/ Stripmuseum / Belgian Comics Art Museum』

(ベルギー漫画センター)

■ベルギー漫画センターの所蔵品

ベルギー漫画センターでは、ベルギーの漫画家が描いた『タンタン』『スマーフ』の特集展示の他、現在では手に入りにくい絶版作品・漫画原稿の原画・フィギュアなどもコレクションしています。ちなみに、展示品にはフランス語・オランダ語・英語の説明書きがありますが、さらに詳しく知りたい方にはパンフレットのレンタルも行っています。

そんなベルギー漫画センターのコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

《タンタンの実寸大フィギュア》原作者・エルジェ

本作品は、ベルギーの漫画家であるエルジェが描いたキャラクター、『タンタン』の実寸大フィギュアです。

エルジェは、1907年にベルギーのエテルバークで生まれました。中学生の頃にイラストを描き始め、次第に学校の雑誌やベルギーのボーイスカウト雑誌にも掲載されるようになっていきます。

1925年に20世紀新聞へ就職してからもイラストを描き続け、ボーイスカウト雑誌では「コガネムシ隊長トトールの奇妙な冒険」を連載しました。このトトールこそが、後の『タンタン』誕生のアイデアとなり、20世紀子ども新聞で「タンタンとスノーウィ」の物語がスタートすることになるのです。

「タンタンとスノーウィ」は、一躍人気キャラクターとなり、ベルギー中の注目を集めました。しかし、第二次世界大戦をきっかけに、連載紙を新聞「ル・ソワール」へ変更したのです。この出来事が原因でエルジェへの批判は殺到し、連載休止に追い込まれる事態となりました。

風向きが変わったのは1946年、週刊誌「タンタン」の創刊により連載を再開すると、再び多忙な日々を送るようになっていきました。さらに、1950年になると「ベルギー漫画センター」の初代議長ボブ・デ・ムーアやロジェ・ルルーらをアシスタントに起用し、自らのスタジオを設立しました。

本作品の原作である『タンタン』は、主人公の少年「ルポライター・タンタン」と、相棒の犬「スノーウィ」が世界を旅する中、次々と事件に巻き込まれていく冒険物語です。タンタンのモデルは、エルジェの弟・ポールであるとされています。原作はフランス語ですが、80ヵ国語以上に翻訳され、ベルギーを代表する漫画となりました。本作品は、博物館内でも老若男女に大変人気のある展示物で、写真撮影スポットとしても話題を集めています。

『Tintin is 90! – 10 January 2019』

(タンタンは90歳です! -2019年1月10日)

《スマーフの家》原作者・ピエール・クリフォール

本作品は、ベルギーの漫画家ピエール・クリフォールが描いたキャラクター、『スマーフ』の家を実物大で再現した作品です。

ピエール・クリフォールは、1928年にベルギー・ブリュッセルで生まれました。従兄弟の名前に由来する「ペヨ」という名前で親しまれています。

ペヨは、美術学校を卒業してからアニメーションスタジオで働き始めます。戦後にスタジオが閉鎖し、新聞の漫画や宣伝用イラストを積極的に請け負うようになりました。やがて、新聞での連載・子供用漫画雑誌の連載も手掛けるようになっていきました。

『スマーフ』とは、1958年にペヨが連載していた雑誌、「スピルー」で誕生した青い妖精のキャラクターです。スマーフが人気キャラクターになると、ペヨは監督業に専念し、多くの漫画家が物語を紡いでいきました。その後、漫画は25ヵ国語に翻訳され、世界中のファンに愛され続けています。

本作品は、そんな『スマーフ』が住んでいる家を再現したもので、多くの子どもたちが出入りして遊べる人気の展示品です。

『Le Centre belge de la Bande dessinée à 25 ans』

(25のベルギー漫画センター)

《ヴィクトール・オルタとデパートにまつわる展示》

本展示は、建築物としてのベルギー漫画センターの歴史を伝えています。

ベルギー漫画センターは、もともとチャールズウォケスが経営していた、布販売のデパートを再利用しています。今もなお、傑作と言われる建築物ですが、ブリュッセルの経済状況悪化のあおりを受け、1970年に閉店しました。

この展示からは、ブリュッセルの地で生き残りをかけて踠いた、デパートの姿を見ることが出来ます。

■おわりに

ベルギー漫画センターでは、ベルギーの代表的な漫画をはじめ、ヨーロッパ全土の漫画文化を学ぶことが出来ます。アールヌーヴォー様式の独特な作りなど、建築物としても見ごたえのある博物館です。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧