アリ・シェフェール:文学を題材に揺らがぬ独自のスタイルで描き続けた画家

(Public Domain /‘Self-portrait’ by Ary Scheffer. Image via WIKIMEDIA COMMONS)
※アリ・シェフェール(1795–1858)

オランダ南ホラント州にあるドルトレヒト出身の画家。ゲーテの「ファウスト」やダンテの「神曲」など、文学から題材をとった作品が多いことで有名である。中でも「神曲」をテーマにした「パオロとフランチェスカ」は肉体や感情の表現が美しく、完成度の高い作品として現在でも評価を受けている。

※パオロとフランチェスカ(1855年)
(Public Domain /‘The Shades of Francesca de Rimini and Paolo in theUnderworld’ by Ary Scheffer. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

<さまよい続ける2つの魂を暗黒の背景の中に際立たせる>

シェフェールはオランダで働く肖像画家の息子として生まれました。1809年に父が亡くなると母と共にパリへ移り住み、新古典主義の画家ピエール=ナルシス・ゲランの工房で絵の修行を始めます。修行を終え工房を出る頃、世間ではウジェーヌ・ドラクロワやテオドール・ジェリコーなどロマン主義の画家が流行していましたが、シェフェールは関心がなかったため独自のスタイルで制作を続けました。

彼はバイロンやゲーテの作品をテーマとした文学的な絵画をよく描いており、中でも「パオロとフランチェスカ」は非常に有名な作品となっています。これはダンテの「神曲」をテーマにしたもので、男性パオロと女性フランチェスカが叶わぬ恋だったにも関わらず一線を越えたことで殺されてしまい、地獄をさまようという内容です。絵は地獄でのワンシーンを描いており、暗黒を思わせるような黒い背景の上にさまよう二人を描くことで言葉では表しきれない寂しさなどの感情を強調させています。

※シェフェールが描いたショパンの肖像画
(Public Domain /‘Portrait of Frederic Chopin’ by Ary Scheffer. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

<王族との結びつきの強さが失墜を招いた晩年>

シェフェールは絵画以外に肖像画も得意としており、作曲家のフレデリック・ショパン、ピアニスト兼作曲家のフランツ・リスト、フランスの貴族ラファイエットなどの肖像画を描きました。画家は王族から肖像画の依頼を受けることで報酬を得ており、シェフェールも同様にフランス王族の肖像画を描くことで生計を立てていました。一方当時のフランスは一般市民が王族に対し大きな不満を抱えており、王族と結びつきのあるシェフェールは市民から反感をかってしまいます。その結果絵の依頼が減少し、作品の出展も中止となるなど収入は激減していきました。晩年になると自身のアトリエに籠り、シェフェールが好むテイストで絵を描き続けました。その絵が生前に公開されることはありませんでしたが、亡くなったあと展示されるようになり現在も美術館などで見ることができます。

慰める者キリスト(1837年)
(Public Domain /‘Christus Consolator’ by Ary Scheffer. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

<シェフェールの描く宗教的作品>

シェフェールは宗教的な作品も描いており、その多くが1830年代〜1840年代にかけて制作されました。どの絵画も彼の特徴がよく表れており、それぞれの表情や風景がとても美しいタッチで描かれています。その中の主要な宗教作品を年代と共にご紹介します。

  • 1837年「慰める者キリスト」
  • 1837年「報いる者キリスト」
  • 1837年「星に導かれし羊飼いたち」
  • 1845年「王冠を置く東方の三博士」
  • 1845年「オリーヴの庭のキリスト」
  • 1845年「十字架を運ぶキリスト」
  • 1845年「埋葬されたキリスト」
  • 1846年「聖アウグスティヌスとモニカ」
※ドルトレヒト中央広場にあるシェフェールの像

<さいごに>

独自のスタイルで制作を続けるも王族との繋がりによって人気を得られなかったアリ・シェフェール。今でこそ高い評価を得ていますが、当時は政治的観点のみで作品が判断されてしまった不遇の画家とも言えるでしょう。有名な肖像画も数多く手がけているので、彼の名前は知らなくても作品は見たことがあるという人は多いかもしれませんね。シェフェールがテーマとして採用したダンテの「神曲」は現在も本として売られオペラにもなっているので、彼の作品「パオロとフランチェスカ」と合わせていろいろな角度から物語を楽しんでみてはいかがでしょうか。

出典:(Wikipedia、アリ・シェフェール)(6,2021)

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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