ノーマン・ロックウェル:THEアメリカンユーモアたるイラスト

『American Chronicles: The Art of Norman Rockwell (Remastered)』

ノーマン・ロックウェル(1894-1978)
アメリカ合衆国ニューヨークのマンハッタンで生まれた、画家およびイラストレーター。軽快なタッチでアメリカの市民生活や子供たちを描いた作品は、現在でも人気を誇っています。

<アメリカ人が描くユーモアとは>

ニューヨークのマンハッタンで生まれ育った彼は、幼い頃から運動が苦手でした。そのため、家の中で遊ぶ事が多く、父の影響で絵を描き始めます。その後、彼はアメリカのボランティア団体、ボーイスカウト連盟のリーフレットや雑誌に挿絵を投稿し始めました。これらの貢献が評価を受け、ボーイスカウト連盟から「シルバー・バッファロー章」を与えられます。

その後の1916年頃、彼はある雑誌の表紙を飾る事になりました。その雑誌とは、アメリカで1、2週間に1回発刊される雑誌「The Saturday Evening Post」だったのです。(現在は年に6回発刊)その後も、彼は雑誌の仕事を続けました。その中でも、1940年代から1950年代頃に描いた表紙や挿絵は、特に人気があります。

ポップで大衆受けする画風は、一般的には認知されたものの、近代美術評論家からは評価を得る事が出来ませんでした。しかし、彼の画風は、国内のみならず海外に住む人々の心も掴んでいたのです。

彼が手がけた作品の中でも、遊び心を存分に発揮した物といえば、「Triple Self Portrait」があげられるでしょう。「自分」、「鏡の中の自分」、「鏡を見ながら描いた自分」の「3人の自分」を表現しています。

『Peter Rockwell on “Triple Self Portrait”, 1993(※Peter Rockwell=Norman Rockwellの息子)』

一方、後期の代表作である「The Problem We All Live With」は、アメリカの公民権運動を主題にした作品です。作品には、スラング「KKK」や「ニガー」という差別用語の落書きとトマトが投げつけられた壁、その横を護衛されながら通学する6歳の少女が描かれています。この作品からも、彼が人種差別に反対している事が伺えるでしょう。

『Painting Tour: “The Problem We All Live With” (1964)』

彼は生涯を通して、イラストや広告など約2,000点の作品を残しました。しかし、1943年に彼のスタジオで火事が発生し、多くの作品が焼失。その後、幸いにも残った作品のほとんどは、美術館に所蔵されています。

彼は、雑誌の表紙も数多く手がけましたが、作品はあまり残っていません。そのため、雑誌が発見されると、数億、数千ドルもの高値が付く可能性があるのです。現に、1954年の作品「息子の旅立ち」は、2006年に約18億円で落札されています。

『Quick Pic: Breaking Home Ties』

<除隊、パーティ漬けの末、顧みなかった家庭と子どもたち>

1916年22歳の時、彼はアイリーン・オコナーと結婚。その頃のアメリカは、第一次世界大戦に突入していました。彼は、海軍への入隊を志願し、海軍の造船所へ派遣されます。造船所では、海軍用雑誌「Afloat and Ashore」の挿絵を描いたり、雑誌の注文管理を担当したりしていました。

除隊後、1920年代半ばになっても仕事は順調でしたが、1930年にアイリーン・オコナーと離婚。同年、メアリー・バーストウと再婚しました。仕事、私生活ともに順調そうに見えましたが、少しずつ歪みが生じていきます。

その原因の一つは、自分専用の酒類密輸業者を雇っていたという事でしょう。彼は、絵を描く事を続けながら、夜な夜なパーティーを開催。交友のために多大なる金額を費やしていきました。

1920年代後半になると、彼は長期契約の広告や大手ポスト誌の仕事に従事していきます。そして、1940年には彼のイラストレーター活動において大きな評価となる、「ベストアドバタイジングポスター賞」を受賞。しかし、1959年になると、妻のメアリーが病に倒れ、亡くなってしまいます。悲しみに暮れた彼ですが、1961年にはモリー・パンダーソンと再婚しました。

また、第二次世界大戦中に彼が制作した数々のポスターは、戦時中のアメリカ国民にとって、多大なる慰めと勇気になっていました。この貢献により、1977年にはフォード大統領からアメリカ国民として最も栄誉ある「メダル・オブ・フリーダム」を授与されます。しかし、翌年の1978年、彼はストックブリッジの自宅で静かに息を引き取りました。

亡くなっても尚、彼の作品からは、アメリカ人の愛らしさを感じる事が出来ます。アメリカ人を愛し、子どもたちのありのままの姿や目の輝きを見つめ続けました。それは、彼にしか描き得ない作品だったのかもしれません。

『Inside Rockwell’s Studio』

出典:(Wikipedia、Norman Rockwell)(07.2021)

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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