イニョチン:2006年開館の世界最大の野外博物館

イニョチンはブラジルにある世界最大の野外美術館です。トリップ・アドバイザーが選ぶ“死ぬまでに行きたい美術館”にも選出されており、国内外から大勢の観光客を集めています。21のギャラリースペースと23の屋外展示空間に広がる圧巻のコレクションは、1日かけても見て回れないほどです。ダグ・エイケン、マシュー・バーニーなど、現代芸術を代表するアーティストの作品に、驚くことは間違いないでしょう。イニョチンの歴史やコレクションを紹介します。

◾︎イニョチンとは

イニョチンがあるのは南アメリカの大国ブラジルのブルマジーニョという街です。あまり聞き慣れない名前ですが、ブルマジーニョはミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテから約60km、車でおよそ1時間30分の距離にあります。

ブルマジーニョを訪れる多くの人々が目的地にしている場所、それがイニョチンです。イニョチンは2006年に開館した世界最大の野外美術館。敷地面積は786ヘクタールで、そのうち140ヘクタールが見学可能エリアとして開放されています。敷地内には自然保護区も含まれており、ブラジルの手付かずの自然が残されています。雄大な自然と一体化したかのような、穏やかな気持ちで芸術鑑賞に浸ることができるでしょう。

その広大な敷地面積ゆえ、イニョチンには移動手段としてカートが用意されています。徒歩で回ることも可能ですが、かなりの時間を要してしまうでしょう。仮にカートを使っても全体を1日で回ることは難しく、来場者の多くはブルマジーニョに宿泊し、3日ほどかけて全体を見て回ります。イニョチンを訪れるときは、時間に余裕を持って向かうようにしてください。

イニョチンが公開している展示スペースはギャラリーが21個、野外展示空間が23個の合計44個です。野外展示のうち4つは時期によって内容が異なり、美術館の特設展のような変化が楽しめます。また、敷地内にある建物は凝ったデザインのものが多く、見応えがあります。礼拝堂などもあるため、建物を見て回るだけでも楽しめるでしょう。

敷地内に点在している木のベンチもアーティストによる作品です。イニョチンを建造する際に伐採した木材を再利用したもので、それぞれに異なる木目や形状も見どころのひとつ。

芸術と自然、そして建物と、好奇心を刺激する要素が詰まったイニョチンは、ブラジル屈指のアートスポットとして人気を博しています。年間35万人が訪れる理由も分かるでしょう。そんなイニョチンの見どころをご紹介します。

◾︎イニョチンのコレクション

イニョチンが所蔵している現代アートのコレクションは、ラテンアメリカで最大級のものです。世界30ヶ国にまたがり、およそ100人のアーティストの作品を含んでいます。公開している作品の総数は500点以上、所蔵している作品の総数は1,300点以上にもなります。1960年以降から現代にかけての現代芸術作品に焦点を当てており、作品を鑑賞しながら時代の変化を感じ取ることができるでしょう。

リオデジャネイロ出身のシウド・メイレリスや、手書きのフィルム作品《動くドローイング》が有名な南アフリカのヨハネスブルグ出身のウィリアム・ケントリッジ、キューバのカルロス・ガライコアなど、世界各国の著名なアーティストの作品をカバーしています。

アメリカ出身のダグ・エイケンの作品を展示した《ソニック・パヴィリオン》は、イニョチンのなかでも屈指の注目を集める人気の展示です。ガラス張りのドームは地下に通じており、地中の音を全身で聴くことができます。

同じくアメリカを代表するマシュー・バーニーは、映像や彫刻が特に有名な現代アーティストです。展示作品の《デ・ラマ・ラミナ》は鏡を多面的に張った大型の作品で、景色が反射し、新しい世界の形を鑑賞者に示してくれるでしょう。

ブラジル出身のアーティスト、エリオ・オイチシカは、白、黄、紫、赤のカラフルな板を使ったインスタレーションを展開しています。地面に立てられた色彩豊かな平面の板は、周辺に独自の世界観を形成しています。

日本を代表するアーティストの草間彌生は、代名詞のひとつである《ナルシスの庭》をイニョチンで公開しています。池に浮かべた銀色のボールは風に揺られて動き、また周囲の景色を反射することで、幻想的な世界の在りかたを提案してくれるでしょう。まるで神秘の海に飛び込んだかのような感覚を、ぜひ楽しんでみてください。

◾︎イニョチンが誇る広大な植物園

イニョチンは現代芸術のための美術館である一方で、世界有数の植物園の側面も持ち合わせています。ブラジル出身の世界的な造園家ブーレ・マルクスがデザインを手がけた植物園は、散策するたびに新しい表情を見せてくれます。総数4,500種類にもなる植物の共演は、まさに自然が生んだ芸術作品の宝庫です。約1,300種類に及ぶ世界最大のヤシの木コレクションや、林立するサボテンのエリアなど、多岐にわたるさまざまな種類の植物に癒されてみてください。

◾︎イニョチンの建物見学も楽しんで

イニョチンでは芸術鑑賞や植物のほかに、もうひとつの見どころがあります。それが建物です。イニョチンの敷地内に建てられた建物はどれもセンスに溢れ、モダンな印象を抱くものばかりです。ふと利用するトイレですら、そのまとまりある設計に驚かされるでしょう。ネイティブ・アメリカンの写真が公開されている建物は、レンガをふんだんに使った、まるでラビリンスのようなデザインになっています、なかを歩けば、自然と気分は冒険者になってしまいますよ。

モダンな建物が勢揃いしたイニョチンでは、ぜひ建物見学にも没頭してみてください。

◾︎おわりに

ブラジルにある世界最大の野外美術館イニョチンの歴史やコレクションを紹介してきました。ブラジルの主要な観光地からはずれてはいますが、イニョチンを見学するためだけでも、足を運ぶ価値は十分にあります。大自然のなかを歩きながら芸術鑑賞に浸る機会は滅多にないでしょう。そんな貴重で贅沢な時間を、イニョチンは提供してくれるはずです。

イニョチンのあるブラジルには、ほかにもさまざまな美術館があります。南半球で屈指のメガシティ、サンパウロにあるサンパウロ美術館、世界的な建築家オスカー・ニーマイヤーがデザインを手がけたニテロイ美術館など、建物自体が芸術ともいえる美しい美術館ばかりです。

イニョチンWebsite                     

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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