グアヤサミン美術館:エクアドルの画家グアヤサミンの美術館

エクアドルを代表する巨匠オスワルド・グアヤサミンの自宅兼アトリエに併設されているのが、グアヤサミン美術館です。通称「人間教会」と呼ばれるアイコニックな建物は、それ自体がコレクションの中核のひとつ。美術館内では開放的な空間でグアヤサミンの傑作たちと向き合うことができます。エクアドルを訪れたら、是非足を運びたいスポットでしょう。この記事ではグアヤサミン美術館の歴史やコレクションと、見どころについて紹介します。

◾︎グアヤサミン美術館とは

グアヤサミン美術館は南アメリカ大陸西部に位置する国、エクアドルの首都キトにあります。新市街と旧市街のコントラストが美しいキトの町。旧市街は16世紀に南米のキリスト教布教の拠点となったことから「アメリカ大陸の修道院」と呼ばれ、1978年にユネスコ世界遺産に認定されています。

美術館の紹介に入る前に、まずはグアヤサミンについて紹介しましょう。オスワルド・グアヤサミンは1919年生まれ、キト出身の芸術家です。絵画、彫刻、デザインを手がけたマルチな才能の持ち主で、「エクアドルのピカソ」と呼ばれ賞賛を集めています。エクアドルの芸術界を語るには外せない巨匠です。

幼少期から絵画に没頭していたというグアヤサミンは、自分で描いた絵画を販売し、その売り上げを勉強の費用に充てていたといいます。キトの美術学校に通いながら絵画や彫刻、建築について学んだグアヤサミンは1942年、23歳のときに初めての個展を開催しました。苦しみ、怒り、悲しみなど、人間の感情を前面に押し出した表現方法が彼の最大の特徴です。大学在学中に親友がデモで亡くなってしまった経験が、彼の作風に大きな影響を与えたと言われています。

グアヤサミンは故郷であるキトを拠点に作品制作をおこなっていました。彼が生活を営み、また作品を制作していた邸宅は、キトの新市街のはずれにあります。邸宅にはグアヤサミンが生前描いた作品や、エクアドルの芸術家による作品が多数展示されています。庭園には彫刻作品が点在し、カフェも併設されています。邸宅は高台に位置しているため、キトの街並みが一望できますよ。この絶景も注目ポイントのひとつでしょう。

グアヤサミンの邸宅に隣接して建てられているのが、通称「人間教会」とも呼ばれるグアヤサミン美術館です。グアヤサミン本人が監修して設計されたという建物は、シンプルでモダンな印象を与えます。建物中央に設置された、火山のような突起がシンボルでしょう。なかに入ると一階は広大なホールになっており、中央には炎をイメージした巨大なオブジェが展示されています。中心にある青い炎は、グアヤサミンの芸術に対する情熱を象徴しているかのようです。

◾︎グアヤサミン美術館の見どころ

グアヤサミン美術館の見どころは、彼の邸宅と美術館の2つに分けられます。ここからはそれぞれの注目ポイントを紹介しましょう。

・グアヤサミンの邸宅

グアヤサミンは世界各国の著名人と親交が深く、生前は多くの人たちが彼の家を訪れていたといいます。訪問した人たちと談笑したダイニング・ルームや、静かな時間を過ごした寝室など、作品からは分からないグアヤサミンの私生活を垣間見ることができます。白を基調に茶色の家具で統一された空間は、上品かつ洗練された雰囲気を漂わせています。

アトリエにはグアヤサミンが実際に使用していた筆や絵具などがそのまま残されています。イーゼルに置かれたキャンバスの様子から、作品を描いていたときのシーンがありありと想像できるでしょう。アトリエには窓がいくつも連なり、木の梁がむき出しになった開放的な空間です。アトリエの地下には制作した作品がテーマごとに分けられて展示されており、画家の作風の変遷を見てとることができるでしょう。美術館のコレクションにも引けをとらない珠玉の内容となっています。

・グアヤサミン美術館

人間教会と呼ばれるグアヤサミン美術館では、彼の作品をたっぷりと堪能することができます。アメリカの先住民とスペイン人の間に生まれた女性を描いた《混血の人》、南アメリカ大陸の人々の顔を描いた《アメリカの顔》など、ここでしか見られない希少なコレクションは圧巻です。また、ホールの天井に描かれた壁画も見逃せません。

モチーフとなっているのはポトシ銀山での強制労働です。ポトシ銀山には先住民を強制的に働かせることで大量の銀を産出してきた歴史がありますが、その裏ではたくさんの命が奪われていました。この壁画は天井に設置された丸窓を太陽に見立て、光と自由を求める人々の姿を描いた作品です。未完の作品だともいわれていますが、そこに込められたメッセージはとても強く鑑賞者を揺さぶるはずです。

またコレクションのなかでも特におすすめしたい作品が《ニカラグアへの敬意》です。ニカラグアで43年間続いたソモサ王朝による独裁と、それに続くニカラグア革命をテーマに描かれた作品には、ニカラグアの人たちの痛み、悲しみ、苦しみといった感情が投影されています。赤色の背景に描かれた3人の人物像は、それぞれに異なる表情を浮かべています。グアヤサミンに特徴的な大きく骨ばった手は、彼らの感情を代弁しているかのようです。見る人によって解釈が異なる傑作でしょう。是非じっくりと、この作品に向き合ってみてください。

◾︎おわりに

エクアドルのキトにあるグアヤサミン美術館の歴史や見どころを紹介してきました。強い感情を作品に込めたグアヤサミンは、エクアドルを代表する巨匠の一人です。彼が暮らしを営んでいた邸宅やアトリエやその横に建てられた人間教会は、キトを訪れたのであればあまり絵画に興味がない方にも訪れてもらいたい場所です。グアヤサミンの作品に、感情を揺さぶる強い願いが込められていることを実感できるはず。是非とも足を運んでみてください。

また、エクアドルの首都キトには、グアヤサミン美術館以外にも見どころがたっぷりとあります。世界遺産に認定されているキトの旧市街はもちろん、中心から北に23kmの地点には、赤道直下に建てられた記念碑ミッター・デル・ムンドがあります。赤道直下ならではのユニークな体験が、あなたを待っていますよ。

グアヤサミン美術館Website

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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