サンパウロ州立美術館:ブラジルで最も重要な美術館のひとつ

サンパウロ州立美術館は、ブラジルで最も重要な美術館のひとつに挙げられます。館内で公開されているのは主に19世紀に活躍した、世界的な評価を獲得しているブラジルのアーティストの作品です。また、プリツカー賞を受賞した建築家パウロ・メンデス・ダ・ロシャがリフォームを手がけた建物にも注目でしょう。サンパウロ州立美術館の歴史やコレクションを紹介します。

サンパウロ州立美術館とは

サンパウロ州立美術館はブラジル最大の町サンパウロにある美術館です。サンパウロは南半球を代表する屈指のメガシティとしてリオデジャネイロと並び称され、町には観光スポットや美術館が多数点在しています。

サンパウロ州立美術館は、そんなサンパウロの中心地に位置しています。1905年に設立され、1911年に州立美術館となりました。オレンジ色のレンガが輝くクラシックで魅力的な建物は、1990年代にブラジルを代表する建築家のパウロ・メンデス・ダ・ロシャがリフォームを手がけたものです。このサンパウロ最古の美術館では、クラシカルな外観とモダンな内装が融合した独特な雰囲気のもと作品を鑑賞することができます。

ピナコテカ(絵画館)とも呼ばれているサンパウロ州立美術館は、緑が豊富なルース公園に隣接しています。ルース公園はサンパウロで最も古い公園のひとつとされ、園内はいつも大勢の人たちで賑わいをみせています。ルース公園には美術館の彫刻コレクションが展示された「彫刻の庭」があるため、合わせて訪れてみてください。

美術館の一階には企画展、二階には常設展が展示されます。常設展は11個の展示室にわけられており、内容も分かりやすく整理されています。また、館内にはカフェも併設されているので、芸術鑑賞後にゆったりと感想を友人と話してみるのもよいでしょう。これだけの充実ぶりですから、年間50万人もの人たちが足を運ぶのも納得です。

サンパウロ州立美術館のコレクション

サンパウロ州立美術館が所蔵している作品数はおよそ9,000点といわれており、これはブラジル国内では最大級の規模です。特に19世紀の絵画や彫刻のコレクションは美術館の代名詞で、ブラジルのモダニズムに関する傑作は高い評価を獲得しています。また、日本からブラジルに移民として渡ったアーティストの作品やヨーロッパの有名画家の作品も展示されていますよ。

ここからは、サンパウロ州立美術館の主要なコレクションを紹介します。

《ローマの奴隷》1894年オスカー・ペレイラ・ダ・シルバ

(Public Domain /‘Roman Slave’byOscar Pereira da Silva. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ローマの奴隷は1894年に、ブラジルを代表する画家オスカー・ペレイラ・ダ・シルバによって制作された作品です。

(Public Domain /‘Self-portrait’byOscar Pereira da Silva. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

オスカー・ペレイラ・ダ・シルバはブラジルを代表する画家であり、イラストレーターとしても活躍した人物です。彼はまるで写真のように写実的な肖像画や宗教画を多く残しています。描かれた人物の肌の質感や服の肌触りまで伝わってきそうなほどの緻密な描写は、画家の名声を確固たるものとしました。

ローマの奴隷は、画家の代表作ともいえる作品です。奴隷の女性が客の前へ売りに出されている状況を描いています。物憂げな表情を浮かべた女性の首にかけられたプレートは、彼女が奴隷市場にいることを示しています。一方で腰に手を添えた女性のポーズからは、どこか挑発的な印象を覚えるでしょう。腰に巻かれた布の質感まで伝わる描写は、圧巻の一言です。

《疾風》1888年アントニオ・パレイラス

(Public Domain /‘The Windstorm’by Antônio Parreiras. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

疾風は1888年に、ブラジルの画家アントニオ・パレイラスによって制作された作品です。

アントニオ・パレイラスはブラジル出身の画家です。ブラジルのニテロイとフランスのパリにスタジオを開設しサロンに出展するなど、世界的な活躍をしました。彼はブラジルで最も人気のある画家の一人とされ、かつての自邸は美術館として公開されています。

疾風は、題名の通りすさまじい風の威力を画面いっぱいに表現した作品です。描かれた木々は激しい風になびき、地面はひび割れ抉れています。画面の左手前では女性がうずくまり、手に顔を埋めて泣き崩れている様子が描かれています。ドラマチックな構図が目を引く、画家の傑作といえる作品です。

《The Inopportune》1898年ホセ・フェラーズ・デ・アルメイダ・ジュニオール

(Public Domain /‘The Inopportune’by José Ferrazde Almeida Júnior. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

The Inopportuneは1898年に、ブラジルとヨーロッパを拠点に活躍した画家ホセ・フェラーズ・デ・アルメイダ・ジュニオールによって描かれた作品です。

ホセ・フェラーズ・デ・アルメイダ・ジュニオールは、19世紀後半に活躍したブラジルのアーティストです。出身地のブラジルとヨーロッパを拠点に活躍の幅を広げていきました。49歳の若さでこの世を去るまで、芸術史に残る作品を描き続けています。

本作品のタイトル《The Inopportune》は、都合の悪い、機を逸したなどの意味を持つ言葉です。登場人物は女性と画家の二人ですが、画面の大部分を占めるように大きく女性が描かれています。純白の衣装をまとった女性は、おそらく画家の絵のモデルなのでしょうか?スカートの裾に手をかけ、物陰から画面奥にいる画家の方向を見つめています。画家はカーテンをめくり、何かを探しているようです。もしかしたら、奥にいる誰かと話をしているのかもしれません。

意味深なタイトルと構図から、いくつもの解釈が生まれる面白い作品です。

おわりに

サンパウロ州立美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。国内で最も重要な美術館のひとつとされ、コレクションの数はブラジルでも最大級のもの。ほかの美術館では味わえない満足感に、じっくりと浸ることができるでしょう。隣接するルース公園で公開されている「彫刻の庭」にも、ぜひ合わせて足を延ばしてみてくださいね。

また、サンパウロを訪れたら、目抜き通りのパウリスタ通りにあるサンパウロ美術館も必見です。現代美術のための美術館で、四つの支柱に支えられたモダンな建物にも注目です。サンパウロ州立美術館とはまた違った芸術鑑賞の機会を提供してくれるでしょう。

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※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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