サンパウロ美術館:奇跡と呼ばれる南米屈指の美術館

南米最大の国ブラジルにあるサンパウロ美術館は、「奇跡の美術館」と称されています。赤い柱で支えられた建物はそれ自体が芸術作品のひとつ。館内ではピカソ、ゴッホ、ラファエロなど、世界各国の巨匠の作品が公開されています。ブラジルに足を運んだら、必ず訪れておきたいスポットです。この記事ではサンパウロ美術館の歴史やコレクションを紹介します。

サンパウロ美術館とは

サンパウロ美術館があるのは、ブラジル最大の街サンパウロです。サンパウロは人口1,000万人を超える南半球屈指のメガシティ。ブラジル国内をはじめ、南アメリカ一帯の文化や経済の中心地です。そんなサンパウロの目抜き通りであるパウリスタ通りに、サンパウロ美術館はあります。

サンパウロ美術館は1947年に、ブラジル初の現代美術館として開館しました。正式名称はサンパウロ・アシス・シャトーブリアン美術館。略称のMASP(マスピ)の名称でも親しまれています。美術館の名前にもなっているアシス・シャトーブリアンは「ブラジルの新聞王」と呼ばれ、国内屈指の敏腕実業家として名を馳せた人物です。シャトーブリアンは主に第二次世界大戦前後に美術作品を収集し、世界屈指のコレクションを形成していきました。

アメリカやヨーロッパを除いて、これほど質の高いコレクションは中々無く、サンパウロ美術館は「奇跡の美術館」と称されています。年代や地域ごとに分けられた充実のコレクションは、美術館を訪れる人たちを魅了してやみません。建物自体に目をやると、コンクリート製の重厚感のある本館が4本の赤い支柱によって支えられ、宙に浮いています。また本館は全面ガラス張りになっておりとてもモダンな印象です。20世紀を代表する名建築であるこの博物館はサンパウロのランドマークとして親しまれています。

地下階を含めると五階建て構造になっているこの美術館のなかでも、特に三階の常設展は必見です。展示スペースには壁や仕切りはなく、とても開放的な空間が広がっています。作品はそれぞれガラスケースに収められており、建物同様に宙に浮いているかのよう。この独特の展示方法も美術館の特徴のひとつです。解説のパネルなどは設置せず、作品の裏面に掲示することでスマートな空間が演出されています。

サンパウロ美術館のコレクション

サンパウロ美術館の所蔵作品の総数は1万点以上。絵画や彫刻、写真など様々なジャンルの作品がコレクションされています。作品が制作された時代も中世から現代にまで及んでおり、ルネサンス、ロココ、バロック、印象派など、各時代を網羅しています。またイタリア、フランス、イギリス、スペインなど芸術が盛んな地域の作品を網羅しているので、この美術館の展示をひと通り鑑賞すれば、芸術の潮流や時代の変化を感じ取ることができるでしょう。

イタリアのペルジーノ、ティントレット、フランスのドラクロワ、カミーユ・コロー、ドイツのハンス・メムリンク、ハンス・ホルバインなど、美術史を彩ってきた巨匠の作品も充実しています。ピカソ、ゴッホ、ラファエロ、ヒエロニムス・ボスなど、美術の教科書で出会うような芸術家の作品も堪能できるでしょう。

ここからは、サンパウロ美術館の主要なコレクションを紹介します。

《受胎告知》1600年エル・グレコ

(Public Domain /‘The Annunciation’byEl Grecoin São Paulo Museum of Art. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

受胎告知は1600年に、マニエリスムを代表する画家エル・グレコによって描かれた作品です。

(Public Domain /‘Portrait of a man’byEl Greco. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

エル・グレコは現在のギリシャ領クレタ島出身の画家です。16世紀中盤から後期にかけてみられたマニエリスムを代表する画家として知られています。エル・グレコが制作した作品の多くは宗教画で、ほかの画家にはない独特の劇的な描写が人気を博しました。画家としての活動のほか、礼拝堂の建築や採光などの考案もおこなっていたといいます。

受胎告知は、エル・グレコが生涯にわたって何度も描いてきた題材です。天使ガブリエルがマリアにキリストの妊娠を告げるシーンを描いたもので、エル・グレコ独自の劇的な描写が目を引きます。画面右側には金色の衣装をまとったガブリエルを、左にはガブリエルをまっすぐに見据えるマリアを描くことで、劇的な構図を生み出しています。中央には稲妻のような光とともに鳩が描かれていますが、これは聖霊を意味しているそうです。

(Public Domain /‘The Annunciation’byEl Grecoin Museo del Prado. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)
(Public Domain /‘The Annunciation’byEl Grecoin Ohara Museum of Art. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

受胎告知を題材にした彼の作品はスペインのプラド美術館、日本の大原美術館でも目にすることができます。それぞれの作品の違いに注目してみるのもおもしろいでしょう。

《ピンクとブルー》1881年ピエール=オーギュスト・ルノワール

(Public Domain /‘Pink and Blue -The Cahen d’Anvers Girls’by Pierre-Auguste Renoir. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ピンクとブルーは1881年に、フランスの印象派の画家ルノワールによって描かれた作品です。

(Public Domain /‘Self-Portrait 1910’by Pierre-Auguste Renoir. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ピエール=オーギュスト・ルノワールは、フランスの印象派の中心メンバーとして知られる画家です。当初は絵付けや装飾をおこなう職人として活躍していましたが、徐々に絵画の世界に没頭していきました。印象派としての活動初期は、人の温かみが感じられる柔らかなタッチが特徴です。活動後期にはイタリアの巨匠ラファエロの影響を受け、徐々に古典的な手法に回帰していきました。活動時期によって手法が異なることから、ポスト印象派にも挙げられます。

本作品・ピンクとブルーの正式名称は《ダンヴェール家のアリスとエリザベス》といいます。パリで描かれた作品で、制作年に開催されたサロンでは見事に入選を果たしています。モデルとなっている5歳と6歳の2人の少女は、裕福な銀行家の娘でした。二人の少女のあどけない表情がいきいきと描かれているのが特徴です。純白の服の柔らかな質感まで伝わってくる描写は、まさに巧みの技でしょう。

おわりに

ブラジルのサンパウロ美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。「奇跡の美術館」と賞賛されるこの美術館では、世界各国の巨匠の作品をじっくりと堪能できます。また、建物自体の芸術性やガラスを用いたユニークな展示方法も注目でしょう。美術館にはカフェも併設されていますので、鑑賞後にぜひ立ち寄ってみてください。

また、ブラジルのサンパウロにはサンパウロ美術館以外にも注目のスポットが豊富にあります。南アメリカで最大級の規模を誇る教会建築サンパウロ・メトロポリターナ大聖堂や、サンパウロ美術館と同じパウリスタ通りに2017年オープンしたジャパン・ハウスサンパウロなど、見逃せないスポットばかりです。

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※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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