ジャマイカ国立美術館:1974年創設のジャマイカ屈指の美術コレクション

中央アメリカのジャマイカで屈指の芸術コレクションを展示しているのが、ジャマイカ国立美術館です。1974年に創設されて以来、ジャマイカを代表する芸術の聖地として人気を集めてきました。公開されているコレクションにはジャマイカを代表するエドナ・マンリーや、ジョン・ダンクリーなど、ぜひ見ておきたい巨匠の作品が含まれています。そのほか彫刻やインスタレーションにも注目でしょう。ジャマイカ国立美術館の歴史やコレクションを紹介します。

ジャマイカ国立美術館とは

ジャマイカ国立美術館は中米のカリブ海に位置する島国ジャマイカにある美術館です。ジャマイカは1509年にスペイン領に、1670年にはイギリス領になり、1962年に独立を果たすという激動の歴史を辿ってきた国です。首都のキングストンは治安面で不安が言及されるものの、レゲエの故郷として愛されており、年間を通して多くの観光客が足を運んでいます。

ジャマイカ国立美術館は、そんなキングストンにあるキングストン・モールの一角にあります。1974年に設立されて以来、ジャマイカ屈指のコレクションを有する美術館として注目を集めてきました。常設展だけでなく、時期によって内容が異なる企画展も開催されています。常設展ではジャマイカの重要アーティストによる作品を、企画展では国際的なアーティストの作品をそれぞれ楽しむことができます。

展示室内は白を基調とした洗練された空間が多くを占めますが、壁が青や赤や黄色に染められた部屋もあり、作品の個性を強調しています。あざやかながらも統一された雰囲気の内装は美術館のひとつの見どころでしょう。

また、美術館内には展示スペースのほかコーヒーショップも併設されています。美術鑑賞の合間に国際的な評価も高いジャマイカ産のコーヒーを堪能してみるのもよいでしょう。珠玉の芸術コレクションとともに、贅沢な時間が過ごせると評判です。

ジャマイカ国立美術館のコレクション

ジャマイカ国立美術館のコレクションの中核にあるのは、20世紀以降に生み出されたジャマイカ人アーティストによる作品群で、絵画、彫刻、陶器、空間を使ったインスタレーションなど様々なジャンルの作品を展示しています。ジャマイカで芸術鑑賞をするのなら、絶対に見逃せないスポットです。

コレクションのなかには、ジャマイカでもっとも重要といわれる芸術家の一人エドナ・マンリー、ジャマイカ出身の画家兼彫刻家のジョン・ダンクリー、画家として活躍したカール・エイブラハムなど、名だたる巨匠の作品が含まれています。

ここからは、ジャマイカ国立美術館の主要な見どころを紹介しましょう。


Negro Arousedエドナ・マンリー1935年

ジャマイカで最初の現代美術家としても知られるエドナ・マンリーによって1935年に製作された彫刻作品です。

エドナ・マンリーは1900年にイギリスのボーンマスで、聖職者の父とジャマイカ系の母との間に生まれました。彼女はロンドンのセント・マーチン美術学校で学んだのち、従兄弟のノーマンと結婚したことをきっかけに1922年にジャマイカへ越しました。人種差別やフェミニズム、貧困などの社会問題を主題とした彫刻を多数発表していきましたが、1975年からは体にかかる負荷の大きさから彫刻を諦め、絵画表現にのめり込みました。1987年に彼女は亡くなりましたが、死後もジャマイカで最も尊敬される芸術家の一人に数えられています。

このNegro Arousedは1930年代に起きた革命運動の精神を表した彫刻作品です。1974年にジャマイカ国立美術館のコレクションに加えられて以来、常設展の中核とされてきた美術館の歴史そのものともいえる作品です。ジャマイカ国立美術館にはマホガニー製のオリジナルが展示されていますが、約3倍の大きさの拡大版も彼女の死後の1991年に製作されています。

バナナ・プランテーションジョン・ダンクリー1945年頃

現在ジャマイカで最も重要な芸術家の一人とされている画家兼彫刻家のジョン・ダンクリーによって、1945年頃に製作されたミクスト・メディア作品です。

ジョンダンクリーは1891年にジャマイカの小さな港町サバナラマルで生まれました。彼は多くの人々と同じように、若い頃はパナマやキューバなどに出稼ぎに行き船乗りとして生活していました。その後ジャマイカに戻ると理髪店を営み、その外装に木や花や蔦植物の絵を描いて塗装しました。これがジャマイカ国立美術館の運営組織であるジャマイカ研究所の人間の目にとまり、彼に絵を描き続けるようにと説得されたことが、ダンクリーの芸術家としてのキャリアの始まりです。彼が生前に残した絵画の数は知られている限りでは50点未満と非常に少ないですが、そのどれもが植民地支配を受けていた1930年代から1940年代のジャマイカを取り囲んでいた、政治的、経済的な不安定さに対する言及に満ちたものとなっています。

バナナ・プランテーションは暗い色調の作品ですが、これは彼がジャマイカやキューバなどの中央アメリカで目にしてきた実体験をもとにした、「心の風景」だといわれています。彼は1947年に亡くなりましたが、死後に名声を得て今ではジャマイカで最も重要な芸術家とみなされています。

おわりに

ジャマイカ国立美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。ジャマイカを代表する巨匠の作品が勢揃いした圧巻のコレクションは、ジャマイカを訪れたら必見でしょう。クラシックな作品よりも前衛的な作品が多数ある印象です。ときに解釈が難しい作品もありますが、ぜひそれぞれの作品に向き合ってみてください。また、芸術鑑賞のあとは館内に併設されたコーヒー・ショップでのんびりとするのがおすすめです。ブルーマウンテンに代表されるジャマイカのコーヒーを堪能できるはずですよ。

ジャマイカ国立美術館があるキングストンには、ほかにも訪れておきたいスポットがあります。レゲエの神様ボブ・マーリーが晩年を暮らした家は、現在ボブ・マーリー博物館として公開されています。ボブ・マーリーが生前暮らしていたリビングや寝室、使用していたステージ衣装やギターなどが公開されています。レゲエファンでなくとも必見のスポットです。

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※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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