ペシャワール博物館:仏教美術のコレクションが充実した国内屈指の博物館

ペシャワール博物館は世界有数の仏教美術のコレクションが楽しめる博物館です。特に仏陀をモデルにした彫刻コレクションは圧巻です。ほかにも絵画や武器、コインや陶器など、総数14,000点以上の所蔵数を誇っています。パキスタンを訪れたら、必ず訪れたいスポットのひとつでしょう。この記事ではペシャワール博物館の歴史やコレクションを紹介します。

ペシャワール博物館とは

ペシャワール博物館があるのは、紀元前に栄えたインダス文明からの歴史を誇る国、パキスタンです。南アジアに属するパキスタンは、中国やインドと国境が接しており、1947年にイギリスから独立を果たしました。

首都のイスラマバードには南アジア最大を誇るファイサル・モスクなどがあり、日夜たくさんの観光客を呼び寄せています。

ペシャワールがあるのはそんなパキスタンの北部です。ペシャワールは紀元前6世紀ごろにガンダーラに支配された土地で、ほかの地域との交通の要所として発展を遂げてきました。歴史上ガンダーラの仏教研究で中心的な役割を果たしています。

その歴史上の経緯もあってか、ペシャワール博物館は世界でも有数の仏教美術コレクションを所蔵していることで知られています。また、ガンダーラ芸術に関する所蔵品も屈指のクオリティでしょう。博物館が設立されたのは1907年のことです。開館当初はひとつのホールのみで小規模な建物でしたが、1969年から1970年にかけて2つのホールを増築し、2005年にはさらなる拡張が図られました。現在は充分すぎるほどの展示面積を有する巨大な博物館です。

博物館の建物は、まるで宮殿のような独特のデザインを採用しています。ブリティッシュや仏教、イスラムなどさまざまな建築様式がミックスされ、この独自のデザインが誕生しました。赤茶色の建物は2階建てで、内装は白を基調に落ち着いた色合いで統一されています。

館内の天井は高く、沢山の窓から差し込む陽光が暖かさをもたらしてくれます。ところどころに休憩用の椅子も用意されていますので、たまに一息つくのもよいでしょう。時折ケースにヒビが入っていたり割れていたりすることもありますが、それもまた一興です。訪れる人たちを見てみると、観光客はもちろん現地の人の多さに驚きます。博物館で展示されたコレクションは、パキスタンの人たちも魅了する歴史的な価値も相当に高いものばかりです。

館内へのカメラの持ち込みは有料です。もし希望があれば、チケット購入時に受付で申し出てください。次の章では、博物館が公開しているコレクション内容を紹介していきます。

ペシャワール博物館のコレクション

ペシャワール博物館の作品所蔵数は14,000点以上です。所蔵品のジャンルは多岐にわたり、彫刻・絵画・武器・宝石・碑文・硬貨・陶器・工芸品と、幅広い分野に及びます。また、8,000枚以上にもなるコインコレクションや、カリグラフィーの標本など希少な品も多数展示されています。

なかでも注目したいのが、ガンダーラの仏教に関するコレクションでしょう。ガンダーラの仏像は紀元前から1世紀ごろに生まれたとされており、仏像の元祖とも考えられてきました。仏像や仏教にまつわる彫刻作品、また仏陀に関するコレクションは世界的な知名度です。

博物館の2階には民族博物展があり、パキスタンの伝統的な衣装が展示されています。色とりどりの衣装をまとった女性は頭からベールのようなものをかけ、神秘的な魅力を放っています。対して男性の衣装はシンプルなデザインで、女性に比べて華やかさはなく機能的なデザインです。女性と男性の衣装の違いや、パキスタンならではのオシャレ文化が学べるでしょう。

ここからは、そんなペシャワール博物館のコレクションのなかでも、特に主要な見どころを紹介します。


(※画像はラホール博物館です)

断食する仏陀

断食する仏陀は、パキスタンのラホール博物館に同じ題材をモチーフにしたものが展示されています。

(※画像はイメージです)

断食の苦行で、極限状態までやせ細った仏陀の姿を表現した作品です。破損が激しく腕やお腹周りには何もありませんが、完成度は博物館随一のものです。浮き出た肋骨や血管、落ちくぼんだ目の周辺など、まるで魂がこもったかのような迫力に、多くの人が展示の前で足を止めています。ガンダーラ美術の傑作のひとつに挙げられるでしょう。

ラホール博物館に展示されている仏陀像よりも、こちらのほうが痩せて見えます。制作者の魂の叫びすら聞こえてきそうな完成度の高さは圧倒的です。

仏陀の生涯を描いた彫刻群

仏陀の誕生を予見する占術師を描いた一連の作品は、博物館きっての目玉です。仏陀の誕生から悟りを開くまでの生涯を、美しい彫刻とともに巡ることができます。仏陀の母にあたるマーヤー夫人が木に掴まり仏陀を生むシーンや、大勢の大人に囲まれた仏陀が産湯を浴びるシーンなど、それぞれの状況が繊細な彫刻に仕立てられています。学校に通うところやレスリングに励むところなど、仏陀の何気ない一瞬を切り取った作品はなかなかありません。

結婚式や出家する様子を描いた作品からは、仏陀の並々ならぬ意志が汲み取れるでしょう。悟りを開くときの境地は、鑑賞者にまで波及してくるかのようです。美しい彫刻とともに、仏陀の生涯を巡ってみてはいかがでしょうか。

おわりに

パキスタンにあるペシャワール博物館の歴史やコレクションを紹介してきました。多岐にわたるコレクションはもちろん、世界有数といわれる圧巻の仏教美術コレクションは見逃せません。ガンダーラの中核をなしたペシャワールだからこそ堪能できる作品の数々を、ぜひ隅々まで楽しんでみてください。特に仏陀にまつわる彫刻や彫像の数には、目を見張るでしょう。

ペシャワールにはペシャワール博物館以外にも観光スポットが満ちています。1630年に建造された純白の美しいマハバット・ハーンモスクや、エスニックの香りが漂う旧市街など、パキスタンならではの異国情緒溢れるスポットが豊富にあります。ユニークな体験ができること請け合いです。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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