ホヤ・デ・セレン遺跡・博物館:世界遺産ホヤ・デ・セレンのための博物館

中央アメリカのエルサルバドルにあるのが、世界遺産にも認定されたマヤ文明のホヤ・デ・セレン遺跡です。1976年に発見された遺跡は美しい状態が維持されており、マヤ文明の生活様式を解明する大きな手がかりとなりました。この博物館のエリアでは10棟の建物や台所、共同浴場などが公開されています。付属の博物館では遺跡から出土した器や壺など、貴重なコレクションが沢山あります。この記事では、ホヤ・デ・セレン遺跡と付属の博物館の歴史や見どころを紹介します。

ホヤ・デ・セレン遺跡とは

ホヤ・デ・セレン遺跡があるのは中央アメリカの国エルサルバドルです。エルサルバドルは中央アメリカの中部に位置する共和制国家。首都のサンサルバドルはスペイン語で「聖救世主」を意味し、中央アメリカ屈指の発展を遂げている大都市です。

そんなサンサルバドルから北西におよそ35kmの距離に、ホヤ・デ・セレン遺跡はあります。スペイン語で「セレンの宝石」を意味し、エルサルバドルの北西部に位置するラ・リベルタ県で1976年に発見されました。「メソアメリカのポンペイ」と呼ばれる遺跡は、1993年にユネスコ世界遺産に認定されています。2019年時点で、エルサルバドルでは世界遺産に認定さている国内唯一のものになっています。

ホヤ・デ・セレン遺跡の一帯は、紀元前1200年頃すでに人類が住んでいたといわれています。マヤ文明に属する文化圏で、インパロゴ山の噴火によって地域一帯が荒廃しましたが、6世紀頃にセレンの集落が形成され再び人々が住むようになりました。その後、集落は590年頃にセレン周辺にあった別の火山、「ロマ・カルデーラ山」が噴火し、集落一帯に多くの火山灰が降りました。このときの噴火の影響は大きく、数時間で4mから8mの火山灰が一帯に降り注いだといわれています。

幸い住民が火山灰に埋もれることはなく、遺体が発見されることはありませんでした。一方で家具や調度品、食べかけの食事の跡などが発見されており、急を要した避難であったことが伺えます。短時間でかつ低温の火山灰が一気に降り注いだため、集落の保存状態はほかにないほど良好な状態を保っていました。ホヤ・デ・セレン遺跡はかつてのマヤ文明の生活様式を紐解くための貴重な資産となっています。

発見のきっかけは1976年に行われた農業計画で、重機を操縦している作業員によって見つかったとされています。1978年と1980年に本格的な調査で、遺跡の全貌が徐々に明らかになってきました。1989年以降からは継続的に調査が行われ、1990年代後半から博物館としての公開が始まっています。2018年に初めて人骨が発見されますが、死因は火山の噴火によるものではありませんでした。

マヤ文明の神秘が詰まった貴重なホヤ・デ・セレン遺跡。その見どころは、いったいどのようなものなのでしょうか。

ホヤ・デ・セレン遺跡の見どころ

ホヤ・デ・セレン遺跡には17棟の建物があります。このうち公開されている建物は10棟で、なかには台所や共同浴場、大勢の人々が集まったとされる集会場があります。建物は日干しレンガを使ったもので地面よりも低いところにあり、周辺には火山灰が山積しています。見学はフェンス越しになりますが、マヤ文明の生活の軌跡を、垣間見ることができるでしょう。占いをしていた場所や、重要な儀式がおこなわれていた建物など、見どころは豊富にあります。

それぞれのエリアにはパネルによる解説がありますので、どのように使われていた建物か、一目で判別できるようになっています。現代とは大きく異なる生活の風景を、容易に想像することができるでしょう。

テマスカル

テマスカルは先住民族が使用していた蒸し風呂を指す言葉です。建物の中央には大きな石が置かれ、石に水をかけることで蒸気を発生させていました。展示の横には使用する様子を描いたパネルがあるので、どのように使われていたかわかるでしょう。

展示の最後にはテマスカルのレプリカがあり、実際に中に入ることができます。三角屋根が特徴の建物で、中央にぽっかりと開いた縦穴から内部に入ります。蒸気を発生させるための石も設置されているので、テマスカルを体感することができるでしょう。集落の人たちは、テマスカルを魂の浄化に使っていました。マヤ文明の文化を理解するうえでも、重要な展示となっています。

遺跡に付属した博物館

ホヤ・デ・セレン遺跡には、遺跡からの出土品を所蔵した博物館があります。館内ではかつてのセレンの集落を再現した模型や写真が展示されており、遺跡からは知ることができないセレンの様子を伝えています。民族的な模様が入ったお皿や壺など、ここでしか見られない貴重なコレクションも必見でしょう。完全な状態で発掘された農機具も展示されています。建物がどのように造られたのか、工程を紹介したブースもあります。

遺跡と博物館は合わせて訪れるのがおすすめです。コレクションを見学することで、新しい発見に出会えるかもしれません。

おわりに

エルサルバドルにあるホヤ・デ・セレン遺跡と博物館について紹介してきました。エルサルバドルで初めて、かつ唯一の世界遺産は、訪れておいて損はないはずです。かつてのマヤ文明の生活風景を、じっくりと想像してみてください。地面よりも低いところに広がる建物群は、歴史のロマンを演出してくれます。歴史が好きでもそうでなくても、エルサルバドルを訪れたらぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

ホヤ・デ・セレン遺跡の周辺には、ほかにも数多くの遺跡があります。サン・アンドレス遺跡は、ホヤ・デ・セレン遺跡から約10kmの距離です。緑が広がる広大な遺跡は、同じくマヤ文明の貴重な遺産を残しています。また、首都のサンサルバドルを訪れたら、ぜひエルサルバドル美術館を訪れてみてください。ラテンアメリカの現代アート作品が充実しており、建物前に設置された巨大なオブジェも必見でしょう。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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