ウォルターズ美術館:実業家ウォルターズ親子による至福のコレクション美術館

実業家として大きな富を得たウォルターズ親子は、美術愛好家としても有名で数々の芸術品を集め続けました。そんな芸術品を一ヶ所に纏めた、個人のコレクション美術館があります。親子が集めて来た軌跡を知ることのできる美術館です。

ウォルターズ美術館とは

ウォルターズ美術館のあるボルチモアは、メリーランド州最大の都市でもあり、州の経済を支える経済都市として有名です。国歌や星条旗誕生の地としても知られ、アメリカの歴史が生まれた地でもあります。特に豊富な漁場に恵まれた事から、古くから漁業が盛んでした。また、大きな港湾を作り貿易業でも栄えました。ただ近年では犯罪率が高く、町の治安改善を図ろうとしているものの、なかなか改善には至っていません。しかし、水族館や博物館などの大掛かりな観光施設が揃っており、賑やかな活気も有ります。

そんなボルチモアの地に構える美術館は、実業家ウォルターズ親子によるコレクションを集結させた美術館です。親子は、生涯に渡りコレクションを集め、その数は実に2万点以上にものぼります。ただ、親子で芸術品コレクションが趣味であったものの、嗜好のタイプは大いに異なっていた事から、豊富なジャンルが取り揃えられています。特に父ウィリアムは、ヨーロッパからアジアと言った大陸の芸術に興味を持ち、息子ヘンリーは、イスラム教やロシアと言った全く異なる気風の芸術に興味を持ちました。このため、この一ヶ所だけで世界各地の芸術が堪能出来ます。

ウォルターズ美術館の収蔵品とは

元々親子のコレクションを元にしていましたが、今ではコレクションを増やし、美術館も増築されました。今では、そのコレクション数は3万を越え、かなりのコレクションが増やされている事が分かります。コレクションを保管していた建物をそのまま市に寄贈するという寛大さです。観光客にはかつては入場料が掛かっていましたが、今は有難い事に、公益性を高める為に無料となっています。

美術品の王道でもあるヨーロッパ絵画を豊富に取り揃えていますが、ミイラや武器と言った全く嗜好の異なる芸術品も有ります。エジプトの地以外で見るミイラには、感慨深いものがあります。中国や日本の陶器もあり、その違いを間近で見る事が出来ます。仏像もあり、各国の文化が複数に混じっているため、それぞれの文化を見比べる事が出来ると言う楽しみが有ります。

また、コレクションの多くは、未だに研究対象として多くの人が調査を行っています。親子二代によって集められたこれらの作品は、世界各地の芸術の軌跡となっています。

〈マグダレナ〉グイド・レーニ

(Public Domain /‘The Penitent Magdalene’by Guido Reni. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

この作品は、美しい慈愛満ちた表情をした女性を描いた一枚です。ローマで精力的な製作活動を行っていたレーニは、多くの甘美性の強い美しい女性達を描き続けました。理想的で優雅な気風を強めた絵は、多くの人々の心を魅了して高い評価を受けました。生前には、ラファエロの再来とまで言われる程の名声を手に入れ、彼の描くその透明感ある美しい女性達は、現実の女性にもひけをとらないほど人々を魅了させました。

ただ面白い事に、実際のレーニは大の女嫌いとして知られ、生涯に渡り独身でした。ある意味本当の生々しい女性を知らないからこそ、この神秘性の強い女性を描けたのかもしれません。

特に罪深き女として知られるこのマグダレナは、濡れ衣を着せられその儚い運命を悲観しています。その虚ろな眼差しからは、これから来る残酷な運命を予見しているかのように描かれ、より美しさを強調してくれます。その片手に持つ十字架がより深い意味を感じます。

〈燭台の聖母〉ラファエロ・サンティ

(Public Domain /‘Madonna of the Candelabra’by Raffaello Sanzio da Urbino. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

この作品は、赤子を抱き抱え優しい眼差しをした女性の姿を描いた作品です。ラファエロは、存命中からその功績を高く評価されていましたが、37歳と言う若さで亡くなってしまった画家でもあります。その穏やか且つ人間性の強い絵は、人々の心に突き刺さる眼差しをそのままに表現しています。その優美な数々の絵画は、豊かな色彩から人々の心情を読み取れるだけで無く、神話の世界に浸ることが出来ます。またラファエロは、かなり大規模に工房を経営しながらその手腕を発揮し、後進にラファエロ絵画の魅力を伝えました。

ラファエロは、特に聖母の絵を多く描きました。その透明感ある白い肌からは、シミ一つ感じず、美しい塊としか言いようがありません。特にぷっくりした赤子の姿は可愛らしく、赤子特有の真ん丸感を際立たせています。赤子を優しく抱き締める聖母の姿からは、我が子を思う慈愛の心を感じます。一方、背景に写り混む人々は真剣な表情をした暗い雰囲気のため、若干の恐怖や聖母の優しい眼差しとは違う感情を感じます。

〈春〉クロード・モネ

(Public Domain /‘Springtime’by Oscar-Claude Monet. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

春の自然豊かなさまと美しい少女を描いた一枚です。印象派の画家として、特に美しい色彩の絵を多く残したモネの絵は、その色調から明るい物が多いです。世界各地を旅し、自然豊かな情景を目の当たりしながら色々な人々と関わる事で、そのインスピレーションを得ました。特に感受性豊かな絵が多いと言われるモネの絵は、モデルの心を読み解くだけでは無く、消えゆく自然の実情を知る事が出来ます。晩年は白内障に苦しめられましたが、その評価はうなぎ登りでした。死後もモネの評価は衰える事は無く、今では世界的に知られる画家の一人となりました。

特に春の1日を描いたこの一枚からは、春の暖かな陽気と今にも踊り出しそうな自然の豊かさを感じられます。暖かい気候につられ、花を咲かす自然への愛を感じます。そんな木陰でゆっくりと休む少女は春らしい格好をしており、何て事の無い日常が一番の幸せであると感じさせてくれます。綺麗に咲き誇る花と新緑豊かな美しい光景が、一面に広がっています。そんな春の兆しを感じられる一枚です。

終わりに

個人のコレクションでありながら、こんなにも豊富なジャンルを取り揃える事が出来たのは、大富豪故でしょう。その豊富さにも驚かされる事ながら、その財力にも驚かされます。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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