セントルイス美術館:セントルイス万国博覧会の跡地にある無料の美術館

セントルイス美術館は元々、セントルイス大学の一部でしたが、現在は独立した美術館として存在しています。現在の建物は、かつてセントルイス万国博覧会の会場として使用されたもので、文化の発展に大いに役立っています。地方都市の美術館ながら豊富なコレクションを抱え、センルトルイスの観光を支えています。

セントルイス美術館とは

セントルイスは、アメリカ合衆国ミズーリ州東部の地方都市ながら、工業都市として栄えています。大きな工場にも恵まれているため、今日までアメリカ経済を支える重要な都市です。ただ近年は人口流動が激しく、経済の停滞感も否めません。特に急速な市街地の老朽化がすすみ、犯罪率も決して低くありません。ですが、交通インフラや公共サービスは充実しており、住みやすい町としても人気です。

そんな土地にあるセントルイス美術館は、元々大学の一部だった事もあり、公共性の強い美術館です。セントルイス万国博覧会の跡地であり、近隣には動物園が存在するため、セントルイス市民の憩いの場としても利用されています。美術館として本格的に歴史を歩むようになったのは1909年の事で、既に長い歴史が有ります。この美術館一ヶ所でアメリカ美術の軌跡を知る事も出来ます。

セントルイス美術館の収蔵品とは?

コレクションのジャンルは豊富で、アメリカ芸術に関しては、古い物から現代の物までを取り揃えています。また、中世ヨーロッパの作品も豊富に揃えつつ、イスラム圏、アジアやアフリカ迄ありとあらゆる地域の芸術品を揃えており、一度にたくさんの作品を堪能することが出来ます。収蔵品の総数は3万4000点余りと言われています。

また、芸術を通して人間性を高めて行きたいという理念のもとに美術館は運営されており、入場料は掛かりません。美術館の前には、セントルイスと言う地名の由来とされるフランスのルイ9世が果敢に馬に跨がる像がそびえ立ち、入館者を出迎えてくれます。美術館の建物自体が、まるでギリシャの神殿を思わせるかのような白亜の重厚な作りとなっています。世界各国の名画や陶磁器などの作品を飾るには大変相応しい場所となっています。

果たしてどのような収蔵品が有るのでしょうか?早速見て行きましょう!

〈睡蓮〉クロード・モネ

(Public Domain /‘Water Lilies’by Claude Monet. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

モネは、生涯に渡り睡蓮の絵を描きました。その数は実に200点以上です。モネは、自身の邸宅に庭園を作ると、モネ自身が整備して美しい新緑や花を植え、特に池には睡蓮を浮かべました。桜なども植え日本風の空気感を作る事で、よりモネのインスピレーションを高めるのに、良い素材となりました。モネは、庭弄りにも強い自信を持っていて、美しく成長して行く自然の様を身近で感じる事で、その瞬間を絵に残しました。

この美術館に所蔵されているものは、モネの晩年の作とされていますが、睡蓮の力強い生きざまをひしひしと感じつつも美しい幻想的な自然美を残した絵です。その神秘的な雰囲気を醸し出した睡蓮を、モネの強い観察眼でより自然的な美しさの絵としました。まるで自分がその庭園で睡蓮を見ているかのような空気を味わわせてくれます。この睡蓮の美しさを保つ為に、モネ自身も日々丹精を込めて世話をしていた事が分かります。うすこけたその色合いには自然の悲哀を感じますが、それも何処か自然的で美しく、温もりを感じさせる絵です。他の睡蓮の作品と見比べると、より各絵の違いが分かる事でしょう。

〈水浴〉ポール・セザンヌ

(Public Domain /‘Bathers’by Paul Cézanne. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

人々の水浴びの様子を描いた一枚です。セザンヌは近代絵画の父とも言われる程、現代の芸術に影響を与えた人物の一人です。セザンヌの名前がそこまで挙げられる要因としては、伝統的な技法に拘らず、革新的で自己流の描き方を貫き、新しい芸術の世界を生んだことが挙げられます。当初はロマン主義に傾倒し、それを中心に描いていましたが、次第に独自路線へと変換すると、独特な色彩の中にその秩序を埋め込んだ絵を描くようになります。しかし晩年は体を壊し、なかなか思うような制作活動には至りませんでした。

この作品は、炎天下であろう真夏の日に水を浴びる人々の日常を描いています。全て後ろ姿で描かれ、引き締まった彼らの体には明らかな筋肉はないものの、強い筋肉美と男性像を思い浮かべます。何だかむさ苦しくも感じますが、水を求める真剣さが伝わって来ます。それと同時に、人々が水を浴びる事が出来る自然の冷水地がある事が分かる、美しい自然の表現でもあります。

〈誘惑〉マルク・シャガール

この作品はキュピズムの一枚で、一見何を描いているのか分かりませんが、隅っこに鹿がちょこんと座っています。シャガールは、別名愛の画家とも呼ばれ、妻ベラに対して強い敬愛の念を生涯に渡って持ち続け、それを絵にしました。とは言っても、ベラの死後には再婚しており、愛の移り変わりと言う情愛も感じ得ます。ナチスの迫害により一時アメリカへ亡命するも、後にパリへ戻り芸術活動を続けました。愛の画家としてはにつかわぬ程の毒舌家としても知られていました。バレエ団の衣装デザインを手掛けていた事もあり、如何に色合いやデザインが作品に影響するかと言う事を強く感じてもいました。それだけ探究心が強いとも言えます。一部からは超自然主義とも言われ、表現の難しい愛と言うテーマを描き続け、人々を魅力させました。

その独特な作品からは、まるで人を誘惑させるような不思議なオーラを感じさせます。人間の体とも取れる、不可思議な作り。それを遠くの方から鹿が見つめています。鹿だけは確かな形をしており、逆に不思議な感じを際立たせています。鹿の円らな瞳には、何が写っているのか気になる一枚です。パーツの一つ一つが繊細に描かれ、その色彩も美しい事から、まじまじと見てしまいます。見ている側の想像力を掻き立てくれる一枚です。また、シャガールは、あまりキュピズムの作品を残していない事からも、珍しい気質の絵のようです。

終わりに

地方都市にあるちょっとした美術館なのでは?と思ったら、大間違いです。セントルイス美術館は著名作品も多く、存分に作品を楽しめる美術館です。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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