ポートランド美術館:アメリカ国内でも古い歴史と格式を持つ美術館

(Public Domain /‘Portland Art Museum’by M.O. Stevens. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

この美術館は、元々地元の有志により作られた美術館です。その歴史は古く、この周辺の地域では最も古い美術館となっています。また、アメリカ国内では7番目に古い美術館となっており、今日までアメリカ芸術並びにアメリカ合衆国の歩みをこの地で見てきました。今回はそんなポートランド美術館について、詳しく見ていきたいと思います。

ポートランド美術館とは

太平洋岸北西部の地方都市でもあるポートランドは、環境に優しい都市として知られています。また、100年以上も前から薔薇の町として知られ、多くの農園で気候的に生育に適している薔薇を育てています。他にも、地ビールの鋳造が行われており、かねてより製造業が盛んでした。大きな港湾に恵まれた事から、かつては貿易都市として大いに発展しました。しかしながら犯罪率は高く、決して治安は良くありません。環境に優しい都市を目指している事から、住みやすい町作りを目指していますが、観光に訪れる際には注意も必要です。

そんなポートランドの地に構えるこのポートランド美術館は、1892年に設立されたアメリカ国内でも比較的歴史の古い美術館です。本館は1932年に設計されたもので、ピエトロ・ベルーシによって手掛けられました。隣接地に位置し、現在マークビルと呼ばれる新館は、元はフリーメイソン寺院でした。開館100周年を記念し、美術館の一部として買いられ、今では、展示スペースとして利用されています。

ポートランド美術館の収蔵品とは?

美術館は、1万平方メートルの広大な展示スペースを持ち合わせていますが、それでも足らないほどに膨大な数のコレクションを所蔵しています。その数は、実に4万点以上。特に、アメリカ先住民の民族芸能品は大いに見応えがあり、現在のアメリカの原点を実感できます。また、アメリカ国内の美術史としては、北西派と呼ばれる作品を数多く抱えています。

美術館内では無料ツアーが定期開催されており、美術に疎い人でも詳しく説明してもらえるため、よりいっそう理解を深められます。テーマは曜日によって異なっているため、それぞれの曜日で違った視点を学ぶことができます。また、企画展はポートランドに関する内容で頻繁に開催されており、常設展以外にも新しい出会いがあります。メインとして多く扱われる北西派の作品は、東洋に強く影響されていた事もあり、アジア人にとって親しみやすくなっています。民族芸能品もなんと5000点以上所蔵されており、その所蔵作品の豊富さには驚かされます。アメリカの歴史を1から遡れる作品ばかりです。

果たしてどのような収蔵品があるのでしょうか?早速ご紹介いたします。

〈牛車〉ゴッホ

(Public Domain /‘The Ox-Cart’by Vincent van Gogh. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

牛の力強い姿を描いた一枚です。ゴッホといえば世界的にも著名な画家の一人で、その名は世界中に知れ渡っています。気難しい性質で、また世に言う耳切事件を起こすような暗い話題の持ち主でもあります。実際、ゴッホの絵は暗い色調の物も多く、その内面を如実に表しているとも言えます。その最期は自ら命を絶っており、世間に衝撃をあたえました。生涯弟テオを信頼していましたが、人間不信的要素を強く持っていました。

そんなゴッホの牛車という作品は、力強く生々しい牛の姿が描かれています。一方、後ろに重い荷物を持たされた牛は、何処か苦しそうで過重労働のようにも見え、そんな悲哀を牛が訴えかけているような気がします。また、かくかくとした脚からは、骨の剥き出し感が見て取られます。この牛のリアルな姿により、多くの便利な道具が生まれる前は動物達も貴重な労働力であった事が良く分かります。

〈睡蓮〉クロード・モネ

(Public Domain /‘Waterlilies’by Claude Monet. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

この作品は、モネが多数描き残した睡蓮の絵画の一枚です。モネは、印象派を代表する世界的な画家。睡蓮の絵は200枚も描いたため、思い入れのある題材である事はよく分かります。今では印象派という一ジャンルを確立しているモネですが、当初の世間からの評価は、辛辣なものでした。しかし、美しい自然の形容とその繊細で美しい色彩のタッチは、しだいに評価されていきます。特に日本美術に深い関心を寄せていたモネは、そのインスピレーションを絵にも取り入れ、人々に突き刺さる斬新な絵をヨーロッパに残しました。

モネの絵画の中で特に多く描かれた睡蓮ですが、こちらの作品は晩年に描かれたものです。すでに視力低下やリマウチを患っており、思うように活動出来ていない日々のなかで描かれました。そのような状況下で作成されたにも関わらず、力強いタッチで描かれています。幾輪もの睡蓮の花が咲き、緑の葉の中に浮かんでいます。葉の数々からは、強い生命力を感じます。その青々とした水面から葉が立ち並ぶ描写は、力強い中にも美しく、より自然的な要素を残しています。睡蓮の魅力にとりつかれたモネは、その生き生きとした姿を自らに重ね合わせ、描き続けました。

〈姉と弟〉オーギュスト・ロダン

(Public Domain /‘Photo portrait of Auguste Rodin’by Félix Nadar. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

近代彫刻の父と言われるロダンは、世界的に知られた彫刻家です。当初、なかなか彫刻家としての門戸が開かれなかったロダンは、装飾職人として働きます。しかし、彫刻への情熱を失う事はなく、イタリア旅行で目撃した彫刻家の巨匠ミケランジェロの作品に強い衝撃を受けると、それを糧に再び活動を開始させました。そのリアルな彫刻の作りは当時敬遠される傾向に有りましたが、次第に認められ彫刻家としての権威を得るようになりました。元々ロダンはどこかで特別な鍛練を積んだ訳でなく、制作技法は全て独学で身に付けた物でした。

姉と弟は、二人が静かに寄り添う小ぶりの彫刻です。ぐずっている幼い弟をあやす姉の姿が描かれています。そこには強い姉弟愛や、姉の母性の片鱗が感じられます。彫刻であるためにはっきりとした眼差しは確認出来ませんが、姉の弟に対する強い親愛の気持ちも表現されています。小ぶりなので生々しさは感じられませんが、もしこれが大きい人間と変わらないサイズであったなら、確かにリアル過ぎて恐怖すら感じるかもしれません。姉が弟をあやし、面倒を見ると言う光景は、いつの時代も見られる幸せな光景だと感じます。

終わりに

ポートランド美術館は、アメリカ最古の美術館と言っても良いほど、歴史の長い美術館です。その歴史の古さから、アメリカの民族工芸にも長けており、その作品の数々からはここにありし日の姿が甦ります。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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