ホイットニー美術館:アメリカンアート専門、丸一日いても飽きないモダンな美術館

ホイットニー美術館は、アメリカ合衆国のニューヨークにある、現代アート美術を愛するファンの間で大人気の美術館です。世界最大級の美術館であるメトロポリタン美術館の別館という位置づけにあります。アメリカの近代・現代美術作品が充実しており、アレクサンダー・カルダーやアンディ・ウォーホールなどの現代美術家の作品のコレクションも所蔵しています。また、2015年には新築オープンしており、建築様式とルーフトップにも注目すべき美術館なのです。

ホイットニー美術館

ホイットニー美術館は、2015年に現在の場所に移転した、アメリカの近代・現代アートを専門に取り扱った美術館です。新しいホイットニー美術館を設計したのは、イタリアを代表する建築家レンゾ・ピアノ。これまでのホイットニー美術館の建物とは違い、自然光が入り込む現代らしい開かれた雰囲気へと大幅に建築様式を変更し建造されました。ホイットニー美術館にはルーフトップがあり、ハドソン川越しにニュージャージーの景色も堪能できます。景色も展示品として楽しめる場所なのです。

ホイットニー美術館の歴史の始まりは、1930年にまでさかのぼります。鉄道で富を得たヴァンダービルト家の令嬢ガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニーがマンハッタンに設立したことからです。

1931年、「ホイットニー・アメリカンアート美術館」という名称でグリニッジ・ヴィレッジの西8丁目に美術館は開館しました。この当時、あまり良い評価を得られなかったり、作品を理解されなかったりしている不遇の現代美術家たちの作品をホイットニー自身が買い取ることで、助成・紹介することを目的として設立されました。

以降、所蔵作品の数は増えつづけ、1954年に初めて移転、さらに1966年にも移転を行い、ついに2015年3回目の移転となりました。現在に至るまで、アメリカのモダンアートの先駆的存在となっています。

ホイットニー美術館の所蔵品・展示

ホイットニー美術館はよく、ニューヨーク近代美術館との違いを比較されます。
ホイットニー美術館には、20世紀から21世紀にかけてのアメリカのモダンアートだけが所蔵・展示されていて、その保有数は、なんと芸術家約3,000人の作品が21,000点以上!非常に充実しています。そのため、有名な美術家の作品だけではなく、あまり知られていないような若手芸術家の作品も所蔵・展示されているのが特徴です。

中でも注目なのは、1932年から2年に1回のペースで行われている「ビエンナーレ展」です。これは、若手の芸術家の作品を中心に集めた展示会となっており、開催されるたびに注目が集まります。

ホイットニー美術館の常設展では、どのような作品をみることができるのでしょうか。ここで、ホイットニー美術館の主な作品および展示品をご紹介します。

《ハンプティ・ダンプティ》1946年イサム・ノグチ

本作品は、近代彫刻で有名なイサム・ノグチが手掛けた抽象彫刻作品です。ハンプティ・ダンプティといえば、童話「不思議の国のアリス」に出てくる双子のタマゴの兄弟のイメージを持つかもしれません。しかし、イサム・ノグチが生み出した「ハンプティ・ダンプティ」は、ひとりのような、ふたりのような、なんだか不思議な感覚を私たちに植え付けます。

(Public Domain /‘Isamu Noguchi’by Unknown author. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

イサム・ノグチは、アメリカのロサンゼルス生まれ。父は日本人で母がアメリカ人というルーツの日系アメリカ人です。彫刻家・画家・デザイナーなど、多彩な才能の持ち主といえます。

幼少期から少年期にかけて複雑な環境で育ったイサム・ノグチは、やがてアーティストを志すようになります。彫刻家ガッツォン・ボーグラムのもとで助手を務めますが、ウマが合わず途中で医学部へと入学します。しかし、医学部に在籍しながらも、夜間の彫刻クラスへ通い、初の個展を開催するに至るのでした。

その後は彫刻に専念していましたが、1925年にはニューヨークで活躍していた日本人舞踏家・伊藤道郎のダンスに使用する仮面の制作を行い、舞台芸術デザインにも携わるようになりました。その2年後にはパリへ留学し、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシに師事しながらアシスタントを行いつつ、夜間の美術学校へ通っていました。1年後に帰国してからは、アトリエを構え、個展を開いています。

第二次世界大戦中には日系人の強制収容所へ自ら志願し拘留され、のちに出所を希望するも認められないという困難も経験しますが、芸術家仲間たちの嘆願書によって出所し、ニューヨークへアトリエを構えながら制作活動にいそしみます。

以降は日本で個展を開いたり、インテリアデザインをおこなったり、日本にも自らのアトリエを構えたりと、精力的に制作を行いました。数多くの賞を受賞するも、1988年には84歳でこの世を去りました。

《日曜日の早朝》1930年エドワード・ホッパー

(Public Domain /‘Early Sunday Morning’by Edward Hopper. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は、20世紀のアメリカを代表する、具体的な物を描く作風である具象絵画家のエドワード・ホッパーの作品です。何の変哲もない通りを描いている本作品は、なぜだか見る人の心を惹きつける力があります。この絵画は、ニューヨークのマンハッタン区ダウンタウンにあるグリニッチビレッジ・ブリーカー通り233番地付近が描かれていると言われていて、現在でもエドワード・ホッパーが描いた風景はその地にしっかりと残っています。

(Public Domain /‘Edward Hopper, New York artist’by Harris & Ewing. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

エドワード・ホッパーは、ニューヨーク州ナイアックという場所で生まれました。当初は、商業美術の学校に進みますが、まもなくニューヨーク美術学校で絵画を学びます。アメリカの生活風景を描くことを得意としていたエドワード・ホッパーは、ニューヨーク美術学校の教師でもあった画家のロバート・ヘンライの影響を受けているといわれています。

1920年ごろより水彩画と油彩画をメインに制作活動を始めたエドワード・ホッパー。1925年に描いた≪線路脇の家≫は最初期の作品のひとつであり、エドワード・ホッパー自身の作風を決定づけた、非常に重要な絵画作品となっています。

その後は、都会の街路やオフィス、劇場、灯台、ガソリンスタンドから田舎の家といったアメリカの風景を明瞭単純に描いています。強調された輪郭からは、エドワード・ホッパーならではの孤独な雰囲気を漂わせていることから、多くの人々の心を惹きつけてやみません。

おわりに

ホイットニー美術館には、上記以外にも数多くの有名画家の作品や、注目すべき所蔵・展示作品が多数あります。

ホイットニー美術館は、ただ作品を展示しているだけでなく、そこにおいてあるイスやエレベーターなどに至るまで、館内が丸ごと現代アートに囲まれた、不思議な空間です。

また、カフェやミュージアムショップもかなり充実していますので、丸一日過ごしても飽きません。

アメリカのアート作品の展示だけでなく、レストランやミュージアムショップ、ホイットニー美術館のルーフトップから見える景色まで楽しめる美術館となっていますので、ニューヨークに訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。モダンな雰囲気漂うホイットニー美術館の魅力に、吸い込まれていくことは間違いありません!

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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