トーヴァルセン美術館:デンマークの偉大な芸術家トーヴァルセンの遺贈による美術館

トーヴァルセン美術館はデンマークのコペンハーゲンにある美術館で、1848年に開館しました。19世紀ヨーロッパで活躍した芸術家、ベルテル・トーヴァルセンにより制作された生涯にわたる彫刻作品や、彼の収集した多彩なコレクションを鑑賞することができます。トーヴァルセンの芸術家としての名声を建築によっても表現しているこの美術館は、デンマーク国内で最も美しい建物の一つともいわれています。そんなトーヴァルセン美術館の歴史と所蔵品について、詳しく解説していきます。

トーヴァルセン美術館とは

トーヴァルセン美術館は、デンマークのコペンハーゲン中心部に位置する美術館です。デンマークを代表する芸術家ベルテル・トーヴァルセンの生涯にわたる作品を展示するために建てられた美術館で、彫刻を中心とした彼自身の膨大な作品が所蔵されています。また、彼は熱心な収集家でもあったことから、その他多くのコレクションを鑑賞することができます。

19世紀のヨーロッパで著名な芸術家として活躍したトーヴァルセンは、晩年になると自身の作品や収集した美術品のすべてをコペンハーゲンに遺贈しました。その後、フレデリック6世やクリスチャン8世、またコペンハーゲン市政府からの国立コレクションの貢献により、トーヴァルセンの没後4年にあたる1848年に美術館は開館しました。

この美術館は国内で最も美しい建物の一つといわれています。屋根には馬車に乗った勝利の女神ビクトリアの彫刻があり、トーヴァルセンの偉大なる名声を表現しています。また、黄色に塗られた外壁には、芸術家としてローマで大成功を収めたトーヴァルセンの帰国を歓迎する市民の様子が描かれています。トーヴァルセンは自身の遺言により、美術館の中庭にあるバラの花壇の下へ埋葬され、この場所が彼のお墓となりました。

トーヴァルセン美術館では現在、学校やその他の教育機関と連携しています。学生たちが芸術に触れあうためのプロジェクトや、芸術における幅広い教育サービスにも取り組んでいるのだそうです。

トーヴァルセン美術館の所蔵品

トーヴァルセン美術館では、トーヴァルセン自身が制作した膨大な彫刻やスケッチなどが鑑賞できます。また、トーヴァルセンの収集による、その他の芸術家たちの絵画や彫刻、古代ギリシャ、ローマ、エジプトの美術品やコイン、本、手紙など、多彩なコレクションも多く展示されています。

そんなトーヴァルセン美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。


《金の羊毛とイアーソン》1803年ベルテル・トーヴァルセン

本作品は1803年にベルテル・トーヴァルセンによって制作された彫刻作品です。

(Public Domain /‘Portrait of Sculptor Thorwaldsen’by Carl Joseph Begas. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

トーヴァルセンは1770年、デンマークのコペンハーゲンに生まれました。貧しい家庭で育ちましたが、11歳でコペンハーゲンの王立美術アカデミーに入学するとすぐに才能を発揮し、数々の賞を受賞していきます。デンマークで新古典主義の技法を学んだトーヴァルセンは、奨学金により1796年にイタリアへ移住し、瞬く間に国際的な芸術家としてのキャリアを切り開いていきました。ローマ教皇、ナポレオン、ヨーロッパの王室のための作品制作により、一流の芸術家として40年間をローマで過ごした後、1838年に故郷のデンマークへと帰国します。その後、トーヴァルセンは1844年にコペンハーゲン王立劇場で心臓発作が原因となり、人生の幕を閉じました。1800年代前半において芸術分野で華々しく活躍したトーヴァルセンは、童話作家のアンデルセンや哲学者のキルケゴールとともに、デンマークの黄金文化時代を築いた偉大な人物として有名になったのです。

本作品は、ギリシャ神話の英雄イアーソンを描いた彫刻作品です。トーヴァルセンは古代ギリシャ、ローマに関するスケッチや彫刻を多く手掛けましたが、本作品の評価がきっかけとなり、彼は一躍有名となりました。トーヴァルセンはその後、ヨーロッパ中の王侯貴族たちからの多くの注文や、ローマ法王からも直接依頼を受けるほどにまでなったのです。

《キリスト》1821年ベルテル・トーヴァルセン

本作品は1821年にベルテル・トーヴァルセンによって制作された彫刻作品です。

トーヴァルセンは芸術制作のなかで、美の女神、ヴィーナス、愛の神、キューピッドなど、古代神話から主題を取り上げることがほとんどでした。彼はデンマークでも大きな任務を与えられており、コペンハーゲンの大聖堂、聖母教会のキリストと使徒の彫刻は最も有名な作品となりました。

《ヴェネットの胸像とトーヴァルセン》1833年オラース・ヴェルネ

(Public Domain /‘Self-portrait’by Horace Vernet. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

1789年にフランスのパリに生まれたオラース・ヴェルネは、父親で風景画家のクロード・ジョセフ・ヴェルネのもとで絵画を学びました。近代的な主題に興味を持っていたヴェルネは、フランス兵士たちをよく描くようになり、フランス復古王政時代にはオルレアン公の依頼により戦闘場面を描き、頭角をあらわしていきます。ヴェルネは特に描くスピードが速く、多くの批評家たちが驚嘆しました。画家として重要な依頼をいくつも受けてきたヴェルネは、その長いキャリアの後、1829年から1834年にかけて、ローマ・フランス・アカデミーの校長を務めています。

本作品は、ヴェルネが友人としてのトーヴァルセンを描いたもので、トーヴァルセンが1830年頃に制作を始めた「ヴェルネの胸像」とともに描かれました。ヴェルネが二人の間にある友情の記録を残したいと考え、この作品を描いたとされています。

おわりに

トーヴァルセン美術館にはミュージアムショップやカフェもあり、ゆっくりとした静かな時間を楽しむができます。トーヴァルセンのお墓のある中庭では、植物で装飾された穏やかな環境でのんびりと休憩できるようにもなっています。

公式サイト

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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