モエスガード博物館:あらゆる人たちを虜にする、忘れられない展示と美術館建築

モエスガード博物館はデンマーク第2の都市オーフスという場所にある、ヨーロッパの中でも最大規模の民俗学博物館です。MOMUと略されているこの博物館は、デンマークの歴史に大きくかかわる展示物を数多く所蔵していますが、所蔵品だけでなく、博物館そのものも見ごたえのある建築様式となっています。何故かというと、デンマーク出身の国際的な建築家ヘニング・ラーセン率いる設計事務所が手掛けた作品であるからです。

モエスガード博物館

モエスガード博物館は、デンマークの2番目に大きな都市オーフスという街から車で約20分の郊外にある、デンマークの民族学博物館です。「MOMU」という愛称で呼ばれ、親しまれています。

開館は1970年ですが、リニューアルされたモエスガード博物館の驚くべきポイントは、その建築様式です。
まるで地面から飛び出すような建物に、まず目を見張ることでしょう。この建築様式はたいへんユニークで、森と海を見下ろすようなつくりになっています。
また、博物館内に足を踏み入れると、光のあふれる明るい空間となっており、小さな洞窟を訪れているかのような感覚になります。

モエスガード博物館の建築は、デンマーク出身の国際的建築家ヘニング・ラーセン率いる設計事務所が2013年から2014年にかけて手掛けました。ヘニング・ラーセンはスカンジナビア・モダニズムを代表する建築家で、通称「光の巨匠」と呼ばれています。
残念ながら、ヘニング・ラーセンは2013年にこの世を去っていますが、1959年に事務所を設立して以来、彼の事務所のスタッフはなんと200名以上にものぼっているそう。
エスガード博物館は、名実ともに世界をけん引している建築家の作品でもあるのです。

モエスガード博物館の所蔵品・展示

モエスガード博物館の展示品は、人類の歴史を扱う考古学的な物を中心としています。デンマークの石器時代からバイキング時代までと、所蔵品のほとんどはデンマークの歴史に関わるものばかりです。しかも、考古学だけでなく、自然や芸術までもカバーした展示・所蔵品は、民俗博物館としては大変魅力的ともいえます。特にデンマークの歴史において、バイキングに関する展示は欠かせないものとなります。

ではモエスガード博物館には、どのような展示があるのでしょうか。ここで、主な作品および展示品をご紹介します。

石器時代のブースでは、紀元前12,000~1,800年前の所蔵品の展示を行っています。展示コーナーでは、石器時代当時の生活が見事に再現されています。この時代にデンマーク周辺で生きていた人たちはエルテボレ人と呼ばれており、海に近かったデンマークでは、狩猟だけでなく魚を捕るための漁具を使っていた、という歴史を知ることができます。

《Grauballe Man》1952年

こちらの展示は、1952年に沼地で発見された2000年以上前の鉄器時代に生きていたとされる人間のミイラ「グラウベール・マン」です。モエスガード博物館の「王冠の宝石」と呼ばれるほどの、最も注目すべき展示品となっています。

「グラウベール・マン」がどこの何者で、なぜ沼地で亡くなっていたのかは、現在でもよくわかっていません。デンマークにあるネベルガード湿原で働いていた泥炭職人によって発見された、デンマークの先史時代の人間と言われています。その状態は学者も驚くほど良いもので、遺体の腐敗がほぼなく、赤毛の頭髪、それに無精ひげまでもがきれいに残されています。

この状態のきれいなミイラは発見されるやいなや、世界中から注目を浴びることとなったのです。

現在、モエスガード博物館のホームページでは、「グラウベール・マン」の発見当時から現代の発展した科学技術で解明するまでの様子を、ギャラリーとして見ることができます。なんと、ミイラの姿からの顔面復元も行われていましたので、興味のある方は、ホームページをご覧ください。

《バイキング時代の展示》

北欧の民俗史にかかせないのは、バイキング時代です。この展示では、800年頃から1050年頃にかけてのバイキング時代を追うことができます。また、モエスガード博物館の外には、バイキング時代のピックハウスと呼ばれる建物も再現されています。この建物からは、実際のバイキングたちの生活様式がよくわかるようになっています。

《中世時代の展示》

モエスガード博物館が特に力を入れている展示として、1050年頃から1500年頃にかけての中世時代の展示があります。この時代は、ペストとよばれる疫病の流行や、王室の殺人、戦争時代と暗い出来事が多いですが、お祭りなどといった鮮やかなイベントも行われていた時代です。モエスガード博物館では、これらの展示を新たな常設展「Free us from evil」と銘打って、中世時代に生きた人々の生活などに焦点を当てた展示を、音や映像でわかりやすく展開しています。技術の目覚ましい進歩だけでなく、キリスト教や教会に支配された時代、王政、さらに人口の95%が田舎に住んでいたという農民たちの当時の生活が、モエスガード博物館の展示を通して、今の時代に蘇ります。

おわりに

モエスガード博物館の展示は、歴史的に大変価値が高いものが多いです。博物館は、展示をわかりやすく具体的にしようと、様々な工夫を凝らしています。また、ワークショップも開催しています。

モエスガード博物館は、デンマークの民俗学的歴史を知るためだけの場所でなく、ヘニング・ラーセン設計事務所の建築を堪能できる場所です。そのため、少し行きづらい立地にもかかわらず、たくさんの観光客を呼び寄せています。

博物館を堪能した後は、カフェで休憩するもよし、晴れていれば芝生でゆっくりするのもよし。まさに、自然と歴史を両方堪能できる場所として、おすすめです。特に、海にも近いモエスガード博物館ならではの水平線に夕日が沈む風景は、きっと忘れられないデンマークの思い出となることでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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