アンカラ財団作品博物館:トルコ全土から集められた民俗学資料を所蔵する博物館

アンカラ財団作品博物館はトルコのアンカラにある博物館です。民俗学の研究に重要な工芸品を多くコレクションしており、研究結果を発表するセミナーも多く開催されています。また、盗難により国外へ流出した作品の多くは、返還後に当博物館で管理・展示されています。そんなアンカラ財団作品博物館の歴史と所蔵品について、詳しく解説していきます。

アンカラ財団作品博物館とは

アンカラ財団作品博物館とは、トルコ・アンカラのアタチュルク大通りにある博物館で、2007年に開館しました。

建物はもともと小学校になる予定で、1927年に建築がスタートします。しかし、完成後は司法法科大学院になることが決まり、その後もアンカラ女子美術学校・アンカラ高等教育財団の女子学生寮・少年寮・オフィスなどが入れ替わりながら使用されてきました。

博物館としての使用が決まったのは2004年で、作品を保存・展示するための改装工事が行われました。3年間の工事を経て完成した博物館には、展示室・図書館・セミナールーム・カーペット洗浄プール・多目的ホール・管理室などが設けられています。

常設展示のほかに定期的に入れ替わる特別展示も行われており、観光客だけでなく、地元に住む人々にも親しまれています。また、博物館の裏庭にはカフェテリアも併設されていて、鑑賞の合間にゆったり休憩することもできます。

アンカラ財団作品博物館の所蔵品

アンカラ財団作品博物館は13世紀~20世紀までの幅広い年代の芸術作品をコレクションしており、そのほとんどが寄贈によって集められました。

カーペット・ラグ・タイルアート・木の工芸品・書道作品が特に有名で、カーペットに至っては専用の洗浄プールを使って保存状態を保っています。

また、2000年代にトルコ各地のモスク・倉庫から盗まれた作品の返還後の受け入れ先として、管理・保存を積極的に行っています。

そんなアンカラ財団作品博物館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な3作品をご紹介します。

《アティック・バリデ・モスクの陶器製タイル》16世紀ハサン・ウスキュダリ

本作品は16世紀頃に制作されたイズニックタイルの作品で、文字部分は書道家であるハサン・ウスキュダリが書き記しました。

もともとウスクダール地区の丘にあるアティック・バリデ・モスクで展示されていましたが、2004年4月29日に盗難され行方不明になります。幸運なことに翌年発見され、2005年10月28日にパリ大使館が収容したのち、イスタンブールに返還されました。返還後は当博物館の所蔵品として保管・展示されています。

イズニックタイルはイスラム諸国で製造されたタイルの中でも特に有名で、主に15世紀~17世紀のモスク・宮殿の装飾に使用されていました。トルコーブルーと呼ばれる青色とサンゴやトマトのような赤色を中心とした配色と、植物・幾何学模様・装飾文字などの緻密で華やかな絵柄が特徴です。しかし、赤色の原料であった金属が取れなくなったため、17世紀末には製造を終了しました。

本作品は24枚のタイルパネルから構成されています。中央の紺色地に記された書には、ジャーリー・スルス体で「アッラーは、本当に凡ての罪を赦される」と書かれています。これはコーランの第39章・集団(アッ・ズマル)の53節から引用されたものです。

《シナン・パシャ・モスクのろうそく台》18世紀~19世紀作者不明

本作品は、18世紀~19世紀にオスマン帝国で製造された鉱物のろうそく台です。

このろうそく台は、イスタンブール・ベイオール地区のシナン・パシャ・モスクで長年保管されてきたものです。しかし、2004年2月29日に盗み出され、2005年7月16日にトルコの港町ボドルムで発見されました。返還後の管理・保存を当博物館が担当することとなり、コレクションに加わったという経緯があります。

トルコにおける鉱物芸術の歴史は古く、発掘調査によると新石器時代から制作されていたことが分かっています。そして、オスマン帝国時代になると伝統技法が引き継がれる一方で、自然主義的な装飾技法など実験的な作品が多く登場します。なかでもチューリップモチーフの装飾は人気があり、15世紀~17世紀頃までの作品に大きな影響を与えました。

本作品は18世紀~19世紀に流行した、「トンバク・イーゼル」という技法で作られた鉱物作品です。「トンバク・イーゼル」とは、銅や真鍮で作った作品に酸化水銀合金の金メッキを施した上で加熱する製造法で、出来上がった作品の表面は金に近い輝きがあります。当博物館にはあらゆる年代のろうそく台が展示されているので、装飾の違いを見比べてみるとさらに歴史への理解が深まるでしょう。

《ダーヴィッシュの手書き本》15世紀~17世紀作者不明

本作品は15世紀~17世紀にオスマン帝国で書かれた本です。

書道はイスラムの世界で古くから親しまれていました。イスラム教の聖典コーランも最初はハーフィズ(暗記した信者)の口伝で広められていましたが、次第に手書きの転写本が布教の中心となります。しかし、本になると読んでもらうための工夫が必要となったため、絵画表現を禁止しているイスラム教では装飾書法が用いられるようになりました。

7世紀以降の装飾書法はさらに盛り上がりを見せ、クーフィー体・ナスフ体・モダン・ナスヒー体・スルス体・タアリーク体・ディーワーニ体などが次々に考案されていきます。15世紀にはオスマン帝国王家が書道文化を高く評価したため、イスラム美術にも引けを取らないほどの芸術性をもつようになりました。

本作品は書道最盛期といわれるオスマン帝国時代に書かれた本で、ダーヴィッシュの詩が記されています。ダーヴィッシュとはイスラム神秘主義の修道僧のことで、預言者ムハンマドの「我が清貧は我が栄光」の言葉を重要視しています。美しい装飾文字が記されており、書物でありながら1つの絵画のようにも見える作品です。

おわりに

アンカラ財団作品博物館はトルコ・アンカラにあり、民俗学において重要な博物館の1つです。古代からトルコで発展してきた産業・工芸の歴史にふれることができます。また、周辺には複数の博物館があるので、ゆったり巡りながらトルコ芸術を堪能するのもおすすめです。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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