ザッキン美術館:パリの町で味わうザッキンの世界観

ザッキン美術館は、主に彫刻家として活躍したザッキンの世界観をそのままに感じる事の出来る美術館です。その美しいアトリエから多くのザッキン作品が誕生したと思うと、大変感慨深くなるでしょう。こぢんまりとした感じが、可愛らしい美術館です。今回は、そんなザッキン美術館についてご紹介します。

ザッキン美術館とは

芸術の町と言えば必ず思い浮かぶのが、フランスの首都・パリです。世界最古のバレエ団が生まれるなど、多くの芸術の中心となってきました。その芸術性は町並みにも表れており、特に夜景は本当に美しいです。また、長い歴史の中でこれほど芸術が発展したのは、古くから経済開発がなされていたからです。現在でも、多くの多国籍企業を抱え、世界屈指の経済都市として栄えています。観光都市としての側面も大きく、生涯で一度は訪れたい町として世界各地から観光客を迎え入れています。

そんなパリの郊外に、彫刻家並びに画家として活躍したザッキンと、その妻で画家のヴィランティーヌが過ごしたアトリエ兼住居を改装した美術館がひっそりと佇んでいます。この美術館は、パリ市に遺贈された後の1982年にオープンしました。2012年には、全面リニューアルを経て新装オープンもしています。邸宅とあってこぢんまりとした作りながら、緑豊かな庭園に囲まれた、静寂の世界となっています。

ザッキン美術館の収蔵品とは

(Public Domain /‘О.Цадкин’by Unknown author. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

妻がフランス人だった事もあり、フランスに帰化したザッキンは、妻と共にこの地に住み続け、精力的な活動を行っていました。一時戦乱の影響でアメリカへ亡命した時期も有りましたが、最後にはこの家に戻っています。ザッキンはこの家を気に入り、多くの年月で過ごしました。この美術館は、そんなザッキンの情熱が流れた空間でもあります。展示エリアは、6室に分かれ、多くの像が展示されています。

日本人の藤田嗣治とも交遊し、日本へ渡航して二科展に出展したことがあります。これらの経験は、少なからず彼の作風に大きな影響を与えました。庭園にも彼の彫刻作品が飾られ、まるで一体化しているようです。季節によって移り変わる葉の色と共に、作品を味わうことができます。作品は、年代によって順を追うように展示されている為、ザッキンが辿って来た軌跡を丸々知ることができるでしょう。その真っ白な邸宅の色合いが、余計彫刻の力強さを際立たせてくれます。こだわりのある展示方法により、ザッキンの素朴で詩情性のある作品群がより輝いて見えます。

果たして、どのような収蔵品があるのでしょうか。早速見て行きましょう!

〈母性〉1929 年

ザッキンが母性をテーマとした初めての彫刻とされています。頭部が曲がっているので少々不気味な感じもしますが、そのしなやかな体付きと露になった乳房から女性の神秘的な姿と甘美性を感じます自由な曲線から感覚的に作り上げた物のように感じられ、視覚的にも楽しめる作品です。また、奥ゆかしい印象も与え、その柔らかな姿からは、聖母のような眼差しを感じます。

木でつくられている事から、何処か作品の中にも温かみを感じる作品です。子供は一緒に居ませんが、優しい眼差しの先に、この像は何を思っていたのか気になります。

〈兵舎〉1917年

キュビズムに代表されるこちらの絵は、兵舎での様子を描いています。彫刻家として知られるザッキンですが、実は多くの絵画も残しています。彫刻では、その瞬間がまるで止まったかのように表現していますが、絵画では、心情が着色されることでまた違った彼の雰囲気を感じることができます。こちらの絵では、はっきりとした面持ちや背景は分かりませんが、殺伐した雰囲気の場である事は確かに感じられます。

ザッキンはロシア出身ながらフランスでの生活が長く、第一次世界大戦では自ら志願してフランス兵の外国人部隊の一員として従軍しました。この作品は、その時に見た記憶をそのままに絵に残した物です。従軍の経験は、少なからずザッキンの心に暗い陰を落としました。その悲惨で痛ましい戦争という現実に直面している兵士達の、心の闇を描いています。横たわる兵士の横に、悲しんでいるとも怒っているとも取れる顔をした兵士が立っており、その表情からはやるせない怒りを感じます。この思いはザッキンだけではなく、多くの兵士達が思い描いていた事でしょう。

終わりに

ザッキン美術館には多くの像が飾られ、ザッキンが過ごしたその空間で、彼が思い描いたインスピレーションに触れられます。全面的にリニューアルした事で、より見学しやすい環境が整っています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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