ブールデル美術館:ロマンある彫刻の世界が広がる

彫刻は、絵画と違って何処か写実的で官能的な世界に誘ってくれます。そんな彫刻の世界をふんだんに楽しめるこちらのブールデル美術館は、世界的にも著名な彫刻家アントワーヌ・ブールデルの元アトリエ兼住居です。かつてこの地から生まれたであろう、作品の数々の余韻に浸ることが出来ます。そんなブールデル美術館について、詳しく解説していきます。

ブールデル美術館とは

ブールデル美術館は、世界的に芸術の町として名高いパリに構える美術館です。パリと言えば昔から芸術の都と呼ばれ、多くの芸術を生み出してきました。そして現在では、世界有数の大都市として知られ、フランスの首都の役割を担っています。世界屈指の経済都市でありながら、観光都市としても人気で、毎年世界各地から多くの観光客を迎え入れています。その美しい町並みの夜景は、まるで芸術作品のようです。かつて存在した王朝の栄華は、フランス国民のみならず多くの人に知られています。そして、その栄華の滅び行く最期もまた有名です。

そんな魅力を備えた町パリに構えるこちらの美術館は、彫刻家ブールデルの元アトリエ兼住居です。彼は、世界的にも有名な彫刻家ロダンの弟子としても知られています。美術館の設立は1949年。それは彼の死後20年後の事であり、彼の功績を称えてのことでした。展示室など後から増築された部分もあります。その広大な建物の中に数多くの作品が展示されており、特に整備された庭園は本当に美しいです。死後20年立ってからの開館は、彼の存在が世の中から忘れかけられている事を危惧した、彼の妻の強い熱意によるものでした。

ブールデル美術館の収蔵品とは

(Public Domain /Le sculpteur Bourdelle’by Agence Meurisse. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

彼の亡き後、彼の妻や彼の娘により多くの作品がパリに寄贈され、それらのコレクションを元に美術館は開館しました。現在では、定期的に展示会が催されており、他の芸術家の作品も楽しむ事が出来ます。ブールデルは自分の美術館を持つ事を生前の夢として語っていたようで、その意思を確かに受け継いだ家族によって、それらは実現されました。彼は、芸術家としての存在価値を未来永劫伝え行く事を願っていたのでしょう。

ブールデルが芸術家としての才能を強く発揮するようになったのは、師匠でもあるロダンとの出会いがきっかけでした。年は20歳も違った二人ですが、意気投合すると共同製作をするなどお互い切磋琢磨し、共に活躍の場を広げます。しかし、次第に先進的な作風を取り入れるようになったブールデルは、ロダンの元を離れます。このように、ブールデルの活躍があったのは、少なからずロダンとの出会いが影響を与えていると思われます。また、ロダンと共にロダン学院を設立し、後進の育成にも力を入れました。常設展は無料なので、気軽に見学出来ます。

果たしてどのような収蔵品が有るのでしょうか。早速見て行きましょう!

〈弓をひくヘラクレス〉1909年

力強い姿のヘラクレスが、弓をひき敵に向かって果敢に立ち向かう姿を描いています。美術館の回廊部分に置かれている作品です。天高く向ける弓の先には、果たして何が見えていたのでしょうか?そもそもヘラクレスはギリシャ神話の英雄であり、この像でも英雄らしい勇ましい姿が今に残されています。力強い弓の先に広がる青々とした空は、強い神秘性を感じさせます。

題材になっているのは、ヘラクレスが怪鳥ステュムファリデスを狙い打ち、それを命中させる為に強く弓をひく場面です。その肉体は、まさに神々しい筋肉美を表しており、敵を寄せ付けない強いエネルギーを感じます。生々しくもありながら、伝説的な領域も感じさせ、不思議なオーラを纏っています。こういった佇まいから、怪鳥の姿がヘラクレスの強い眼差しの先に、確かに存在している事が分かります。怪鳥の恐れおののいて逃げ惑う姿が、鑑賞しているこちらの目にも浮かんで来て、ヘラクレスの目の前に表れてしまった怪鳥に悲哀すらも感じます。

〈瀕死のケンタウロス〉1911-1914年

瀕死の状態が表現されているため、像を見ると何処か痛々しいケンタウロスの姿がよく分かる作品です。その不気味な姿形からは、若干の恐怖さえも感じます。ただ、元々伝説の存在であるため、その不気味さにも味があるのかもしれません。ケンタウロスは、半人半馬と言う言わば妖怪のような肉体の持ち主です。傷を負い、倒れとんとするその姿を描いています。特に、折れ曲がった首からは、狂気さえも感じます。無言の圧を発するケンタウロスの姿は、より恐ろしさを強めています。

生への執着と苦痛という、相反する感情が物の見事に表現された作品です。ケンタウロスは、生への強い執着にもがく何とも言いがたい表情を見せ、ごつごつとした歪な作りになっています。これは、あえてブールデル自身がそうさせ、モニュメンタルな作風を取り入れた石像と思わせるような作りにしたためです。その頑丈な作りからも、生の力を強く感じ得ます。ブールデルにとってそれは、新たな彫刻の形でもありました。

〈アルザスの聖母子〉1921年

他の力強い作品とは異なり、見た目も優しい雰囲気を纏った作品です。真っ白な故に、余計そう感じるのかもしれません。抱かれているイエスは、十字架になっており、今後の未来をまるで予見しているかのようです。

下の部分には天使達が飛び交い、まるで神聖な儀式として祝福しているかのようです。天使達はきっと、イエスが最後にどんな運命を迎えるのかをまだ知らないのでしょう。イエスを見る皆の目は本当に優しい物で、彼が生まれ成長して行くこの瞬間に皆喜びを感じている事が分かります。絵とは違い、彫刻として形になっている事から、余計それを現実的に感じさせます。これが彫刻ならではの楽しみと言えるのかもしれません。

終わりに

ブールデルの彫刻家としての名声は、今も衰える事はありません。それは、ブールデルの作品が時代を越えて人々に共感され、愛されているからです。そんな姿を作り出すことができたのには、ブールデル本人だけで無く、ブールデルの家族の努力もあったのでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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