ベトナム民俗学博物館:国内54の民族の暮らしがわかる博物館

ベトナム民俗学博物館は、ベトナムのハノイにある国立の博物館で、1997年に建てられました。ベトナムに暮らす54の民族について展示しており、生活道具や衣装、建築物など約1万5000点の資料が所蔵されています。屋外展示では、各民族が利用してきた伝統的な建築物や水上人形劇が見られます。そんなベトナム民俗学博物館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

ベトナム民俗学博物館とは

ベトナム民俗学博物館は、ベトナムのハノイにある国立の博物館です。1997年から正式に一般公開されています。展示スペースは大きく3つに分かれており、「本館(ベトナムの民族学展示)」「屋外展示」「別館(ベトナム以外も含めた民俗学展示)」が見学できます。

本館にあるベトナム民俗学の展示スペースでは、ベトナムに暮らす54の民族の生活や文化などを紹介しています。人口の約9割を占めるベト族(キン族)とその他53の少数民族が、言語の類似性などから5つのグループに分けられています。1階では主にベト族(キン族)とその他少数民族(ベトナム北西部)の生活について、2階ではさらに多くの少数民族について、豊富な資料を展示しています。

屋外展示スペースでは、ベトナム各地から民族の伝統家屋が移築されています。これらの建築物は、地元の建築家により建てられました。また、週末には屋外では珍しい水上人形劇の上演があり、無料で楽しむこともできます。別館のベトナム以外の民俗学の展示スペースでは、2015年に完成した「世界一周」「アジアの片鱗」というテーマの常設展示があります。この展示では、東南アジアをはじめとした世界中のコレクションを見ることができます。

ベトナム民俗学博物館の所蔵品

ベトナム民俗学博物館では、ベトナム全土から収集された約1万5000点もの品々が所蔵されています。ベトナムに暮らす54の民族の生活道具や衣装、冠婚葬祭に使われる道具やその様子が模型で展示されており、それぞれの民族の暮らしぶりがわかるようになっています。

また、広い敷地内には民族ごとの伝統家屋が展示されており、中を見学することも可能です。

そんなベトナム民俗学博物館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な展示物をご紹介します。

《荷物をたくさん積んだ自転車》

フンイエン省に住むカゴの卸売業者が、カゴを販売しに行く様子を再現したものです。

フンイエン省では、魚を捕るための竹製の漁具作りが盛んにおこなわれており、河川や運河の多いベトナム北部の地域に出荷しています。

これらのカゴを生産しているトウシー村では、昔から農閑期の仕事として竹製の漁具が編まれてきました。その時期になると、各民家の軒先は原料となる竹ひごと完成した竹カゴでいっぱいになるそうです。カゴの生産は現在も地域の主要産業として根付いており、村人の暮らしを支えています。トウシー村の竹カゴは耐久性を高めるために、燻煙処理が行われます。稲藁を使い、いぶされたカゴは濃い茶色の美しい色を出します。

《ムオン族のお葬式》

ムオン族のお葬式を再現した展示です。

ムオン族はベトナムの少数民族の中で3番目に多い民族で、ベトナム北部の山岳地帯、特にホアビン省とタンホア省に多く住んでいます。祖先崇拝や多神教の信仰でも知られる民族です。

棺桶には織物がかぶせられ、その周りにも織物の衣類がつるされています。古くから行われている葬儀では、祈祷師によって執り行われる儀式が12日間にわたり続けられ、毎日食べ物やお酒が供えられます。
こういった流れは現在、簡略化されてはいるものの、伝統的な葬儀の風習は続いています。

《タイ族の民家》

2階の展示スペースにある伝統的な民家はタイ族のものです。

タイ族はタイ語系の民族で、ベトナムでキン族に次いで人口の多い民族。少数民族の中では最大の人口です。
民家の中も展示スペースとなっており、伝統的な衣装をまとったタイ族たちが、機織りをしたり、土器を作ったりする様子が展示されています。

《モン族の麻の機織りの様子》

モン族は、ベトナム、タイ、ラオスの山岳地帯に住む少数民族です。彼らは麻素材を大切に使い、織物を生産してきました。展示では、ピンク色をはじめとした色鮮やかな糸が織り込まれた伝統的な衣装を身にまとい、機織りをするモン族の様子が見られます。

《チャム族の民家》

屋外展示のチャム族の家です。チャム族は、ベトナム中南部およびカンボジアに暮らす少数民族です。チャム族の民家は、木製の骨組みに茅葺の二層構造の造りが特徴的で、中を見学するとその様子がよくわかります。壁は風通しの良い構造で、床は板張りの広々とした建築物となっています。

《エデ族のロングハウス》

屋外展示のエデ族による長屋の民家です。エデ族はマレーシア語系の民族で、中部カインホア省とフーイエン省の西部や高原地帯ダクラク省、ザライ省に集中して暮らしています。
展示されているのは、ダクラク省のバンメトート市から移築された建築物です。
42メートルに及ぶロングハウスは、母系の大家族が集まって暮らすためのものとなっています。家族の数により、家の長さは15mから100mと幅があるようです。

こちらも中を見学することができ、風通しのよい竹で造った床や、半個室構造の部屋の様子を見ることができます。また、母系社会の特徴を示す女性の乳房の形の装飾が、北方の階段と支柱に施されています。

《バナ族の集会場》

屋外展示の中でもひと際目立つ建築物は、バナ族の集会場として利用されているものです。バナ族は、ベトナムの中部高原地帯に住む少数民族です。彼らの集会場は「ロン」と呼ばれ、村人たちの共通の仕事について話しあったり、儀式を行なったり、来客が宿泊する場所として使われています。ベトナム民俗学博物館で展示されているものは高さが19mほどあり、長い階段を上って中を見学することができます。

おわりに

ベトナム民俗学博物館では、ハノイにいながらベトナム全土の少数民族の暮らしを垣間見ることができます。実際に伝統的な建築物の中の見学や、少数民族が手掛けた民芸品の購入もでき、一度にそれぞれの民族文化を感じられる場所となっています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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