シドニー現代美術館:オペラハウス近くにあるオーストラリアの現代美術を紹介する美術館

シドニー現代美術館はオーストラリアのシドニーにある美術館で、1991年と比較的最近に設立されました。オーストラリアのアーティストによって制作された4000点を超える作品が収蔵・展示されているほか、アボリジナル・ピープルの作品が展示されている美術館として注目を集めています。そんなシドニー現代美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

■シドニー現代美術館とは

シドニー現代美術館はオーストラリアのシドニーにある美術館で、1991年に開館しました。シドニーはニューサウスウェールズ州の州都であり、オーストラリア最大の人口を有する都市でもあります。

古くは4万年前からアボリジナル・ピープルが定住していたといわれており、1770年にジェームズ・クックがポート・ジャクソン湾を発見すると、ヨーロッパの関心を集めるようになっていきました。1788年にはアーサー・フィリップ総督がオーストラリア最初の植民地として定め、シドニーと名付けることとなります。シドニーという名前はジェームズ・クックが命名したもので、クックの後援者がシドニー卿であったことに由来しているといわれています。

初期は流刑植民地として囚人が暮らす場所であったものの、1822年に銀行や市場、警察組織などを備えた街となり、徐々にイギリスや他のヨーロッパから移民が渡ってくるようになっていきました。現在では金融や経済、工業においてもオーストラリア屈指の世界都市となっており、その国際的な雰囲気は世界中の人々を魅了しています。

そんなシドニーにあるシドニー現代美術館はオーストラリア出身のアーティスト、ジョン・パワーによって設立されました。パワーは現代美術を広く紹介するという目的で、個人的な財産をシドニー大学に遺贈し、その財産によってシドニー現代美術館が設立されることとなりました。年間を通してユニークな展覧会が行われているほか、さまざまなイベントが行われており、シドニーはもちろん、オーストラリア屈指のアート・センターとなっています。

■シドニー現代美術館のコレクション

シドニー現代美術館のコレクションは国内外の絵画や彫刻、写真、映像作品のほか、先住民であるアボリジナル・ピープルの作品も所蔵しています。その所蔵作品数は4000点を超えており、オーストラリアでも屈指のコレクションとなっています。

そんなシドニー現代美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

(※画像はイメージです。)

・《無題》2005年ステファン・バーチ

本作品は2005年に、メルボルン出身のステファン・バーチによって制作されました。

ステファン・バーチは1961年にメルボルンで生まれました。主に彫刻を主体として制作活動を行っていましたが、彫刻の新しい表現に関心を持ち、インスタレーション作品を制作するようになっていきます。晩年にかけては同僚からスパイダーマンにいたるまで、人間の形に関心を寄せるようになり、文学や心理学的なアプローチを試みました。

本作品はそんなバーチの作品の一つで、バーチの遺産として寄贈されたものです。アメリカン・コミックのとても有名なスーパーヒーロー、スパイダーマンを題材としており、スパイダーマンは壁のほうに向いて立ち尽くしています。その視線の先には壁から突き出た腕のようなものがあり、その先には人の顔のようなものがあります。スーパーヒーローと老人の顔というあまりに対照的な事物が向き合うことにより、鑑賞者はその関係性と両者の間に流れる緊張感に目を向けるようになっていきます。これこそがバーチの目的であり、鑑賞者はこの不自然さから様々な疑問を持つことになるのです。そういう意味でも、この作品はシドニー現代美術館のコレクションの中でも特に注目されています。

MCA公式:https://www.mca.com.au/artists-works/works/2008.59A-B/

(※画像はイメージです。)

・《ストーム・シーケンス》2000年ショーン・グラッドウェル

本作品は、2000年にシドニー出身のアーティスト、ショーン・グラッドウェルによって制作された映像です。

グラッドウェルは1972年にシドニーで生まれ、シドニー芸術大学を卒業。その後ニューサウスウェールズ大学で修士号を取得し、ロンドン大学ゴールドスミス校で研究員として勤務していました。当初は絵画を学んでいたものの、大学院生時代にビデオや他の表現手段を試みるようになり、徐々にビデオアートのアーティストとして知られるようになっていきました。

その後は都市空間と自然環境に関心を持ち、オーストラリアの砂漠で長い時間を過ごした経験をもとに《Maddestmaximus》を制作。また2009年後半にはオーストラリア戦争記念館の公式アーティストとなり、多数の作品を制作しました。そのほかにもバーチャルリアリティやオペラ、パフォーマンスなど新しい分野に挑戦を試みているアーティストのひとりであり、注目を集めています。

そんなグラッドウェルによって制作された本作品は、シドニーのボンダイビーチでフリースタイリングをしているグラッドウェル自身を撮影した作品です。カメラはほとんど動かず、スケートボードの動きにのみ注目するようになっています。シドニーの作曲家カズミチ・グライムの音楽を効果音にし、ゆったりとしたリズムの中、スケーターと波の様子が映し出されています。グラッドウェルはオーストラリアの自然環境を非常に重視しており、芸術を通して自身の環境を疑問視することに重点を置いていました。本作品もそうした作品の一つであり、静かな中に自然に対するグラッドウェルの強い関心が感じられる作品でもあります。

(※画像はイメージです。)

・《謝罪1-6》2007年-2009年ショーン・グラッドウェル

本作品は2007年から2009年に、ショーン・グラッドウェルによって制作された映像です。

本作品はオーストラリアの有名な映画を元にした作品の一部であり、2009年のヴェネツィア・ビエンナーレのオーストラリア展示館でも展示されました。本作品は、オーストラリアでバイクに乗っているグラッドウェル自身を撮影したものです。グラッドウェルは高速道路に倒れているカンガルーを見つけ、バイクを停止させます。そして生き返らせたいかのように抱き上げています。本作品は広い道路や路面電車、空といったオーストラリアのアイデンティティを表しているとともに、カンガルーやワラビーというオーストラリアの自然の象徴に出会い、立ち止まる、といった人間と自然との衝突についても表現しています。

■おわりに

シドニー現代美術館のあるシドニーはもちろん、オーストラリアを代表する現代美術の美術館であり、国外のアーティストの作品や、オーストラリア、シドニー出身のアーティスト、そしてアボリジナル・ピープルのアート作品などを所蔵しています。

シドニー現代美術館はポート・ジャクソン湾に面しており、眺めの良いテラスからオペラハウスをのぞむこともできます。このような立地からも非常に人気を集めている美術館であり、シドニーを訪れた際に訪ねておきたい場所の一つといえるでしょう。

公式HP:https://www.mca.com.au

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