バンクーバー美術館:カナダを代表する美術館

バンクーバー美術館はカナダのバンクーバーにある美術館であり、1931年に設立されました。美術史に残る巨匠たちの作品はもちろん、地元ブリティッシュ・コロンビア州の芸術家たちの作品を数多く所蔵していることで知られており、特にエミリー・カーのコレクションは世界有数のものとなっています。そんなバンクーバー美術館の歴史とコレクションについて詳しく解説していきます。

■バンクーバー美術館とは

バンクーバー美術館はカナダのバンクーバーにある美術館です。バンクーバーはカナダ第三の都市であり、1867年に製材所の労働者のために酒場が開業したことにより発展、現在でも林業が代表的な産業です。
バンクーバー美術館は1931年に設立されました。開館時にはイギリスを中心とするヨーロッパ諸国の作品が展示されていましたが、戦後、カナダを代表する画家であるエミリー・カーの作品が多数寄贈されるなど、徐々に地元ブリティッシュ・コロンビア州出身の芸術家による作品がコレクションされるようになっていきました。

1983年には元々裁判所だった建物を改築・移転し、リニューアル・オープンしました。現在の美術館はフランシス・ラテンベリーによって設計されたものであり、新古典主義のスタイルが特徴的な建物です。石造りで重厚な建物は裁判所であったことを彷彿とさせ、カナダ芸術を楽しめる場であるとともにカナダの歴史を感じることができる場所にもなっています。

■バンクーバー美術館のコレクション

バンクーバー美術館には美術史に残る巨匠たちの作品はもちろん、地元ブリティッシュ・コロンビア州やそのほかのカナダ出身の画家の作品を多く所蔵しています。その中にはグループ・オブ・セブンやガシー・フォーク、マイケル・スノー、ジョイス・ヴィーランドといった画家が含まれています。

そんなバンクーバー美術館の主要な作品をご紹介します。

・《アカスギ》1931年エミリー・カー

こちらはカナダを代表する芸術家の一人エミリー・カーによって1931年に制作された作品です。

https://www.vanartgallery.bc.ca/exhibitions/emily-carr

エミリー・カーは1871年ブリティッシュ・コロンビア州のビクトリア市に生まれ、1890年にサンフランシスコへ移ったのち芸術を学び始めるようになります。1899年にイギリスへわたり、ウェストミンスター芸術学校やコーンウォール、ハートフォードシャーなどの学校で学んでいます。1920年代にはカナダ国立美術館の依頼で招待作品を制作し、その際に1920年代に活躍したカナダの風景画家のグループ、グループ・オブ・セブンと交流を持つようになります。彼女は根源的な風土や歴史、先住民の文化に深く傾倒し、カナダの先住民族の芸術の研究や執筆活動に注力していくようになりました。その後、1945年3月2日に故郷であるビクトリア市で亡くなりました。

エミリー・カーはブリティッシュ・コロンビアとアラスカの風景、そして先住民の文化に多大な関心があり、たびたびこうした地を訪れては作品の主題としました。また先住民芸術に真摯に向き合ったことでも知られており、その経験をまとめた「クリー・ウィク」はカナダ総督賞を受賞し、作家としてもすぐれた才能を見せました。そんな彼女は今でもカナダで称賛されており、バンクーバーにある美術大学にはエミリー・カーの名前が冠されています。

そんなエミリー・カーによって1931年に制作されたこちらの作品には、大きなアカスギが描かれています。ブリティッシュ・コロンビア州は林業が盛んであることから、エミリー・カーの作品にもたびたびこうした風景が登場します。本作品はアカスギに着目しており、隆々とした幹が透明感のある色彩で表現されています。また下部に生い茂るシダや上部で波打つように描かれる葉は非常に特徴的なタッチで表現されており、ヨーロッパでは見られない表現といえるでしょう。

・《松の木とジョージア湾》1931年アーサー・リズマー

こちらはグループ・オブ・セブンの創設メンバーの一人であるアーサー・リズマーによって1931年に制作された作品です。

リズマーは1885年イギリス、ヨークシャー州のシェフィールドで生まれました。13歳で写真製版会社の見習いになったものの、そのころから芸術の才能を見せており、奨学金を授与されてシェフィールドの美術学校の夜間クラスで学ぶようになります。またベルギーのアントワープでも学んでおり、画家として徐々に名を知られるようになっていきました。1911年にはカナダのオンタリオ州トロントに移住。1916年からはハリファックスのビクトリア美術・デザイン学校で教師となり、カナダの芸術の発展に力を尽くし、1969年3月23日ケベック州モントリオールで亡くなりました。

リズマーの作品は初期のころは後期印象派的であったものの、徐々に表現主義的な力強く荒々しいタッチになっていきました。本作品にもそうした傾向を見て取ることができます。ジョージア湾はヒューロン湖にある湾で、全域がカナダのオンタリオ州にあり、たびたびカナダの画家たちの主題として選ばれてきました。近景にはでこぼことした海岸の様子が描かれており、その間から覗く植物は荒々しく、反対に置かれている流木とは異なるタッチで描かれています。また嵐が迫っているのか上部にはグレーの雲が描かれており、移ろいゆく自然を見事に表現しています。

(Public Domain /‘Bisset Farm’byFranklin Carmichael. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

・《ビセット農場》1933年フラクリン・カーマイケル

こちらはグループ・オブ・セブンの創設メンバーにして美術教師としても活躍したフランクリン・カーマイケルによって1933年に制作された作品です。

カーマイケルは1890年オンタリオ州オリリアで生まれました。幼いころから芸術の才能を示しており、1910年にオンタリオ芸術大学に入学。1911年には見習いとして働き始めます。1913年からはベルギーのアントワープのアカデミーで学び、1914年に故郷のオンタリオ州へ戻り制作活動に励むこととなります。1920年からはグループ・オブ・セブンとして活動し、オンタリオ州のアートギャラリーで個展を開催。その後はオンタリオ美術大学のグラフィックデザインで教えるようになり、美術教育に力を尽くしました。そして1945年10月24日にオンタリオ州トロントで亡くなりました。

本作品は色彩を重ねるような滑らかなタッチで冬の農場の風景を描いた作品です。雄大な自然に対して点在する住居や農場の建物はあまりに小さく描かれており、そのことが自然の大きさを強調しています。カーマイケルはグループ・オブ・セブンの他のメンバーに比べると穏やかな画風であるといわれており、本作品もそうした作品の一つに数えることができます。

■おわりに

バンクーバー美術館はカナダを代表する美術館の一つであり、地元ブリティッシュ・コロンビア州出身の画家たちの作品を多数所蔵しています。彼らが作品の主題としたカナダの美しい自然を実際に味わうことで、より深く作品を理解することができるようになるかもしれません。

公式サイト:https://www.vanartgallery.bc.ca

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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