シアトル美術館:「ハマリング・マン」が出迎えてくれるシアトルの名所!

ハンマーを振り下ろす男性の彫刻「ハマリング・マン」が出迎えてくれるシアトル美術館は、世界中の古代美術から現代アートまでを網羅した、北米屈指の規模を誇る総合美術館です。所蔵・展示品数は24,000点にものぼり、北米にある美術館の中でも5本指に入るほど。その中には西洋絵画やアジア美術も多く含まれています。地産地消にこだわったミュージアム・レストランもあり、シアトルの観光スポットにはなくてはならない存在です。

■シアトル美術館

シアトル美術館は、北米の中でも最大規模を誇る総合美術館です。正面玄関にあるハンマーを持った巨大な男性の彫刻が大変印象的です。この彫刻は「ハマリング・マン(Hammering Man)」といい、ゆっくりとハンマーを振り下ろす動きを繰り返しています。美術館は、「Seattle Art Museum」の頭文字をとった「SAM」の愛称で地元の人々にも親しまれています。

シアトル美術館は、ワシントン州シアトルのダウンタウンにあります。設立のきっかけは、シアトル美術協会がリチャード・フラーと彼の母の資金提供のもと、フラーの指導でシアトル美術館の建築を始めたことからです。1933年に開館したときには、シアトル市内のキャピトル・ヒルという地域にあるボランティア・パーク内に建てられていました。アールデコ調の建物だった当時のシアトル美術館は、1991年に改築工事を終えて、現在の場所へと移転しました。1991年に行われた改築部分のデザインを手掛けたのは、ペンシルバニア州フィラデルフィア出身の有名建築家ロバート・ヴェンチューリです。

2007年にさらなる拡張工事がなされた際に設計を手掛けたのは、アメリカのデザイン事務所「アライド・ワークス・アーキテクチャー」創設者のブラッド・クロエフィルでした。ロバート・ヴェンチューリとブラッド・クロエフィルの設計した美術館建築を、一度に観ることができるのもシアトル美術館の面白いところです。

■シアトル美術館の所蔵品・展示

シアトル美術館の所蔵・展示品は140以上の国と地域を網羅し、古代芸術から現代アートに至るまで、そのジャンルは多岐にわたっています。美術館が買い取ったものもあれば、寄付されたものもあり、現在その数はなんと24,000点以上!アジア美術のコレクションも充実しており、そのコレクション数は全米でも5本指に入るほど。一方、たびたび元にあった国に作品が里帰りすることもあるそう。

シアトル美術館では、どのような作品を鑑賞することができるのでしょうか。続いて、シアトル美術館の主な作品および展示品をご紹介します。

・《鹿下絵和歌巻》1610年ごろ書:本阿弥光悦画:俵屋宗達

本作品は、1610年ごろに描かれた22メートルに及ぶ長巻物《鹿下絵和歌巻》の後半部分です。本来、《鹿下絵和歌巻》は1巻構成だったのですが、のちに二分され、そのうちの一つを当時シアトル美術館副館長でアジア美術のコレクターでもあったシャーマン・リーが購入したという経緯があります。

シアトル美術館は《鹿下絵和歌巻》を購入するにあたり、前半部分を買い取るか後半部分を買い取るか迷ったそう。この時、シアトル美術館創立者のリチャード・フラーの助言により「動きがよりダイナミック」な後半部分が選ばれた、というエピソードがあります。

前半部分は、日本のサントリー美術館、山種美術館、五島美術館、MOA美術館、サンリツ服部美術館、そして個人所蔵に分断されて保管されていますが、その他の前半2か所部分は現在も所蔵先が分かっていません。

《鹿下絵和歌巻》を書いたのは江戸時代初期の書家・陶芸家・芸術家である本阿弥光悦、作画は同じ時代の画家である俵屋宗達です。この2人は琳派と呼ばれる、金箔をメインに使用する豊かな装飾性とデザイン性を持つ流派の創設者でした。

(Public Domain /‘Hon’ami Kōetsu’by retouch: Qurren (talk). Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本阿弥光悦は寛永の三筆の一人と呼ばれていますが、実は書だけでなく、陶芸などにも携わったいわばマルチアーティストです。
本阿弥光悦の家は室町時代から続く刀剣の研ぎ・ぬぐい・目利きの名家でした。日本の刀剣は投信だけでなく、鞘や柄、つばなどにも細かな装飾が施されています。幼い頃からその光景を見て育ってきた本阿弥光悦には、自然と美術の才能が培われていたのでしょう。この知識や才能を生かして、好きな和歌や書に反映させてきたとされています。

(Public Domain /‘Wind God and Thunder God’by Tawaraya Sotatsu. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

一方の俵屋宗達は、江戸時代初期に活躍した画家で、京都の建仁寺にある《風神雷神図》屏風が代表作です。世界的にも有名な《風神雷神図》を描いているにもかかわらず、京都の地で「俵屋」と呼ばれる彼の生涯は不明な点が多いそう。画家工房を率いて屏風絵などの制作をはじめ、芸術品の修復を行ったことはわかっています。

また、天皇や武将への作品提供、歌人や本阿弥光悦といった書家の仕事に携わっていたということから、一流の絵師として認められていたこともわかります。

・《パリスの審判》1516~1518年ルーカス・クラナッハ(父)

(Public Domain /‘The Judgment of Paris’by Lucas Cranach the Elder. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品は、ドイツのルネッサンス期の画家であるルーカス・クラナッハ(父)の描いた作品で、「パリスの審判」とはギリシャ神話の挿話です。「最も美しい女神へ」と書かれた黄色のリンゴを巡って3人の女神が争い、最終的に羊飼いのパリスに一番を選ばせます。やがてこの出来事は、トロイア戦争を引き起こすのです。

(Public Domain /‘Portrait of the artist’s father, Lucas Cranach the Elder’by Lucas Cranach the Younger. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

本作品を描いたルーカス・クラナッハ(父)は、ドイツのクラナッハという場所で生まれたとされています。やがて彼はドイツのヴィッテンベルクに工房を構え、当時の領主であったザクセン選帝侯フリードリヒ3世の御用絵師として仕え始めます。主に宗教画に重点を置きつつ、親交があった宗教改革者マルティン・ルターの肖像画も数多く残しています。

■おわりに

シアトル美術館には、上記以外にも注目すべき所蔵・展示作品がたくさんあります。ミュージアムショップも充実しているだけでなく、レストランでは地産地消にこだわったオーガニック食材を中心に取り揃えた、カジュアルなレストランもあります。持ち帰りもできるそうなので、美術館と併せて是非立ち寄ることをおススメします。

また、シアトル美術館は、毎月第1木曜日に常設展と一部特別展が無料で鑑賞できるようになっています。シアトル美術館で、世界の美術品に触れてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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