イスタンブール郵便博物館:トルコの郵便事業の歴史を紹介する博物館

イスタンブール郵便博物館はトルコ・イスタンブールにあり、別名でPTTイスタンブール博物館としても知られています。オスマン帝国やトルコで発行された切手コレクションや、郵便事業・電話事業に関わる豊富な資料を展示しているのが特徴です。また、トルコ国立建築様式で建築された初期の建物としても、大きな注目を集めています。そんなイスタンブール郵便博物館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■イスタンブール郵便博物館とは

イスタンブール郵便博物館は、トルコのイスタンブールにある博物館で2000年5月6日に開館しました。

当博物館は、イスタンブールの中央郵便局に収容されています。1909年の建設当初は、オスマン帝国の郵便電信省となる予定で「郵政省」のパネルも設置されました。しかし、トルコ共和国が設立された後、郵便局として使用するようになります。

また、一時期ラジオ局が入居し、退去後は郵便と電信サービスを主に取り扱いました。そして、2000年からは、建物の一部でイスタンブール郵便博物館としての展示をスタートします。

建物はトルコ建築初の国家様式「国立建築ルネサンス」で建てられ、のちの建築物に大きな影響を与えました。設計を担当したのはトルコの著名な建築家ヴェダット・テックで、彼が特別にデザインしたものだと伝えられています。

※アラビア語のタイルイメージ

注目すべきなのは、古典的なオスマン帝国の装飾技法です。イスラムの幾何学模様のタイル、アラビア語のタイル、イスラム建築の伝統技法など、建築物としての見どころも充実しています。

展示は定期的に特別展示も行われており、地域別の切手展やこども絵画展、スタンプコンテスト、ポスターアート展、書道展などバラエティに富んだ作品を鑑賞することができます。

また、レストラン、カフェテリア、ギャラリーショップ、キッズクラブや多目的ホールなども併設しており、訪れる人々が楽しめ工夫された素敵な博物館です。

■イスタンブール郵便博物館の所蔵品

イスタンブール郵便博物館では、オスマン帝国時代にスタートした郵便、電信、電話、歴史の事業を紹介しています。

実際に使用された機器はもちろん、事業に関わる職員がどのように働いていたのかを知ることができます。建物の建設工事中の写真もパネル展示されており、建築技法に興味がある方にもおすすめです。

そんなイスタンブール郵便博物館のコレクションは、主に4つのテーマに分けて展示されています。それぞれのテーマの主要展示物をご紹介しましょう。

《郵便・宅配》

郵便、宅配のテーマでは、実際に配達員が使用していた郵便鞄や郵便袋、郵便料金メーター、郵便箱などが展示されています。

注目は郵便配達員が着用していた制服のコレクションです。オスマン帝国時代、トルコ共和国時代の歴代の制服がマネキン展示されており、時代の移り変わりをファッションから感じとることができます。

《電信》

電信のテーマでは、電信事務所で使用されていた看板、テレタイプライターやテレプリンターなどが展示されています。

興味深いのはクリミア戦争の戦場の様子を描いた絵画。なぜ展示されているかというと、1853年~1856年に勃発したクリミア戦争は、初めて本格的に電信技術が用いられた戦争だったからです。本国との連絡強化が情報戦の要となるため、各国が競うように電信設備を設置しました。その結果、首都イスタンブールには現地での軍の動きが逐一報告され、連合軍の勝利が決定した際には戦争終結前にセバストポリの包囲を解いています。

また、当博物館の3階にはオスマン帝国の書記官が使用していた電信室は、当時の設備のまま保存されています。第一次世界大戦で連合軍がイスタンブールを占領された際、彼は敵国兵士が電信室に入る瞬間まで通信を行っていました。トルコの歴史的にも大きな意味を持つ資料の1つです。

《電話》

電話のテーマでは、電話交換機や電気機械式の自動電話交換機、手回し式マグネトジェネレーター、回転ダイヤル式電話、ボタン式ダイヤル電話など、電話が発明された初期の機器が展示されています。

注目は、1882年に電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルによるオリジナル電話のレプリカです。この展示物は、トルコ郵便局の設立150周年を記念して、世界的通信機器メーカーのアルカテル・ルーセント社から贈られました。

※1959年トルコの切手

《切手コレクション》

当博物館最大の目玉と言えるのが、切手のコレクションです。オスマン帝国からトルコ共和国時代までに発行された大量の切手を鑑賞することができます。

オスマン帝国で最初に郵便切手が印刷されたのは1863年で、当時の郵便大臣アガ・エフェンディが発行しました。裏面に粘着性のある郵便切手は珍しく、アジアでは2番目に取り入れた独立国家として知られています。印刷は基本的に黒か茶色が一般的で、文字は全てトルコ語のアラビア文字で記載されていました。

1923年10月29日からはトルコ共和国となり、初の郵便切手には月と星のモチーフが採用されました。オスマン帝国時代と変わらぬ技法でスタートしましたが、1937年にはリソグラフィーの技術・1938年にはフォトグラビアスタンプの技術を取り入れるようになります。そして、2012年からはデジタル印刷での切手発行がスタートしました。

現在、切手コレクションではオスマン帝国、トルコ共和国だけでなく、世界中から集めた郵便切手を展示しています。オーストラリア、イタリア、フランス、エジプト、アメリカ、南アフリカ、中国、イングランド、ロシア、インドやブラジルなど、デザインの違いから各国の文化が浮かび上がる貴重な資料です。また、郵便切手だけでなく、封筒やはがきといった郵便にまつわる小物も紹介しています。

■おわりに

イスタンブール郵便博物館はトルコにある博物館です。歴代の郵便配達員の制服コレクションや電話交換機など様々な展示物がありますが、一番評判なのは切手のコレクションです。オスマン帝国、トルコを始め世界中から集められた切手は見応たえがあります。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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