エルギス博物館:トルコの現代アートシーンをリードする博物館

エルギス博物館はイスタンブールにある現代アート博物館です。トルコの現代アートの発信を目的に設立され、若手アーティストの育成を積極的に行っています。そんなエルギス博物館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■エルギス博物館とは

エルギス博物館はトルコのイスタンブールにある民間運営の博物館で、カンエルギス博士により設立され、2001年に開館しました。当時のトルコには現代美術を専門とする美術館や財団はありませんでした。そのため、現代美術の発展拠点としてエルギス博物館は重宝されています。

若く冒険心のあるアーティストやキュレーターに光をあて、企画展、サポートを行うことで現代美術への関心を集めました。その結果、2005年頃から現代美術を取り扱う美術館がトルコ国内で徐々に増えていきました。

建物はイスタンブールのビジネス街にあり、メイン展示ホール、企画展示ホール、オープンテラスなど設備も充実しています。

■エルギス博物館の所蔵品

エルギス博物館では、1980年代から現在までの現代アート作品をコレクションしています。

トルコ出身のアーティストはもちろん世界的に有名な作品も多く、絵画、彫刻、写真、インスタレーションやグラフィックなど形態も様々です。

そんなエルギス博物館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか、主要な作品をご紹介します。

《3人の男性、4人の女性、訪問者》1989年オメル・ウル

本作品は1989年に制作された作品で、トルコ現代美術の先駆者オメル・ウルが描きました。

オメル・ウルは1931年にトルコで生まれました。1949年〜1953年の間イスタンブールで工学を学び、その後トルコの代表画家ヌリ・イエムの絵画ワークショップに参加します。アメリカに渡り、再び工学の分野で研究を続けますが、後に絵画へと移っていきます。

1955年にボストンで初めての個展を開きました。それを皮切りにし、ヨーロッパを中心に毎年、個展を開く様になります。また、トルコの現代美術家としてパリ、ベルリン、イスタンブールなどの国際的な美術展示会に参加した最初のアーティストです。

2000年代からはインターネットを利用したオンライン展示会を行うなど、積極的な活動を続けました。しかし、晩年に肺がんを患い厳しい闘病生活の末、2010年に79歳で生涯を閉じました。

本作品は、1980年代後半から始めた手法で描かれています。太いブラシを使用するのが特徴で、キャンバスの上に絵の具をのせる動きまで感じ取れる作品です。抽象的な表現にも関わらず、画面上の鳥や犬が生き生きと描かれています。

《時々》2004年トレーシー・エミン

本作品はイギリスを代表する現代芸術家トレーシー・エミンが、2004年に制作した写真作品です。

トレーシー・エミンは1963年にロンドン南部のクロイドンで生まれました。1980年からはカンタベリーにある芸術大学でファッションを学び、1984年にはケントアート&デザイン研究所に入学し印刷技術を学びます。さらに1989年からはロイヤルカレッジオブアートで絵画の修士号を取得し、その後ロンドン大学で哲学を学びました。

エミンのアーティストとしてのキャリアは、1993年にロンドンの現代美術キャラリーで行った個展からスタートします。1995年制作の「The Tent~1963年から1995年まで私が寝たことがあるすべての人~」で注目を集めると、1997年にテレビ出演したことで多くの人にその名を知られるようになりました。

1999年にターナー賞の候補となった「マイベッド」の評価は賛否が分かれ、メディアでも大きく取り上げられます。その後はエルトン・ジョン、ジョージ・マイケル、マドンナ、デヴィッド・ボウイ、ケイト・モスらと親しくなり、ときにはコラボレーション作品を制作するようになりました。

2008年には大規模な回顧展をエディンバラのスコットランド国立近代美術館で行い、現役の芸術家による展覧会の来場者記録を塗り替えました。イギリスを代表する現代アーティストとなったエミンは、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックのポスターに起用され、聖火ランナーも務めています。

エミンの作品のテーマは彼女の内側にある全ての感情で、苦悩・喜び・怒り・悲しみ・幸せ・痛みなどを生々しく表現します。表現方法は、絵画、彫刻、映画、写真、ドローイング、インスタレーション、ビデオ作品など多岐に渡ります。

本作品では現金が縫われたウエディングドレスを着る女性の姿が写真に収められています。政治的なメッセージを発信し始めた時期の作品で、結婚制度への疑問を投げかけています。

《ビッグマン》2002年シュテファン・バルケンホール

本作品は2002年に制作された作品で、ドイツの彫刻家シュテファン・バルケンホールが手がけました。

シュテファン・バルケンホールは1957年にドイツのヘッセン州で生まれました。1972年に開催されたキュレーション展「Realism」で具象絵画、彫刻に大きな衝撃を受けた彼は、「自分にしか表現できないポップアートを作る」ことを心に決めます。そして、1976年にハンブルグ造形大学に入学し、彫刻家のウルリッヒ・リュックリームに師事しました。

個展開催にも積極的で日本、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカなど世界各地で大きな話題を集めました。現在バルケンホールの作品は、東京国立近代美術館、シカゴ美術館、ルードヴィヒ美術館、フランクフルト現代美術館などでコレクションされています。

バルケンホールの人物像には特定のモチーフは存在しません。どの作品も「どこかにいる誰か」として制作されており、鑑賞する人それぞれが誰かを思い描くことで完成するユニークな彫刻です。

本作品も「ビッグマン」というタイトルが付けられており、その名の通り背が高いという特徴があるだけの男性の姿を彫ったものです。柔らかな彩色と顔の表情からは、バルケンホール自身の人間に対する優しい眼差しを感じます。

■おわりに

エルギス博物館はイスタンブールにある現代美術館です。常設展では国内外の有名作家の作品を鑑賞することができます。また、企画展では若手アーティストを積極的に紹介しており、これからのアートシーンで注目の作家を知るきっかけとなりますので、興味のある方は是非立ち寄ってみてください。

公式ホームページ

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧