王立軍事博物館:ベルギーを中心にヨーロッパの軍事の歴史を伝え続ける博物

王立軍事博物館はベルギー・ブリュッセルのサンカントネール公園、凱旋門左翼に位置する博物館です。10世紀に渡る軍事産業の歴史と技術を紹介している博物館で、ベルギーをはじめドイツ、オランダ、フランスなどヨーロッパ各国の貴重な資料を鑑賞することができます。そんな王立軍事博物館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■王立軍事博物館とは

王立軍事博物館はベルギーのブリュッセルにある博物館で、1923年に開館しました。

設立のきっかけとなったのは、1910年のブリュッセル国際博覧会で軍事史の展示が大きな成功を収めたことでした。人々からの注目度の高さに押されるかたちで、軍事博物館の開館が決定します。

当初博物館はラカンブレ修道院の旧陸軍士官学校の建物でスタートしますが、国内外からの寄贈品が増えたことで収容しきれなくなります。そのため、1923年に現在の建物であるジュビリー宮殿へ移転しました。

ドイツが第二次世界大戦中に博物館を占領したため一次閉館し、大戦後に再オープンします。その後、図書館・印刷室・地図室などの新しい施設が順に作られました。また、展示セクションでは、航空セクション(1972年)・装甲車両セクション(1980年)・海軍セクション(1996年)などが次々に新設されています。

主に子供たちを対象としたワークショップが多いのも特徴で、中世の騎士になる方法・博物館で起こった殺人事件の推理など、楽しみながら学習できるよう工夫されています。

■王立軍事博物館の所蔵品

王立軍事博物館のコレクションは、ブリュッセル国際博覧会の展示物が基盤となって構成されています。

博覧会の展示を担当したのは若き将校のルイ・ルコンテで、ベルギーの軍事資料を約900点集めました。彼は博覧会終了後に退役し、学芸員としてコレクションの充実に貢献しています。

展示物は、中世の鎧や武器、現代の装甲車・飛行機・軍服など多岐に渡っており、10世紀に渡る軍事産業の歴史を網羅しています。

2020年1月現在、王立軍事博物館では12セクションの常設展示を行っています。それぞれどのような展示が行われているのでしょうか。主要なセクションの展示内容を紹介します。

《鎧と武器のセクション》

本セクションでは、中世から18世紀末に使用されていた兵士の鎧や武器を展示しています

コレクションの多くはブリュッセルの宮殿に保管されていたため、保存状態が良いのが特徴です。中世の騎士は上半身・下半身・頭を覆うセットアップの武装が一般的で、統一感のあるデザインに注目して鑑賞するのがおすすめです。

また、子供用の鎧、狩猟用の鎧、飾り用の鎧なども展示されており、戦争だけではなく人々の生活に武器が根付いていたことがよく分かります。

《装甲車両セクション》

本セクションは1980年5月9日に発足し、様々な種類の戦車を展示してその歴史を伝えています。

戦車の歴史はイギリスのキャタピラートラクターからスタートします。当初の設計では防御力が弱かったため、装甲板を装備して敵の攻撃に抵抗するようになりました。改良された装甲車両は『タンク』というコードネームを付け敵に戦車だと気付かれないようにしていました。

また、装甲車両はその国ごとに使用目的に違いがあったことが分かっています。フランスでは武器・食料・燃料の輸送のため。ドイツでは飛行場の防衛のため。アメリカでは壊れた戦車を避難させるため。それぞれの役割によって、少しずつ装備にも違いがありました。

本セクションでは、実際に第一次世界大戦で使用された3つの『タンク』を展示しています。さらに、偵察車両・救助戦車・歩兵車両・戦闘車両など、世界中で作られたほぼ全ての種類の装甲車両があり、軍事資料として貴重な役割を果たしています。

《航空セクション》

本セクションの展示会場は、1880年に作られたマシンギャラリーを改装して使用しています。マシンギャラリーでは見本市・展示会・乗馬イベントなど様々な催しが行われてきました。

1972年に当博物館の展示会場となることが決まり、航空機の歴史を伝える航空セクションに生まれ変わります。オープン当初は30機程度の展示数でしたが、各国と積極的に国際交流を深めたことで多くの資料を集めることに成功しました。

航空機の歴史は、モンゴルフィエ兄弟が1783年に熱気球による初の有人飛行を成功させたことから始まります。その後、1852年にフランスのアンリ・ジファールが蒸気機関を利用した飛行船の飛行に成功し、1878年のパリ万国博覧会でも展示され注目を集めました。

航空機が軍事利用されるようになったきっかけは、1891年にドイツの元軍人フェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵が開発に乗り出し、ツェッペリン社を設立します。1900年に飛行実験が成功すると、1909年にはドイツ軍に飛行船を納入し、飛行船は第一次世界大戦で偵察・爆撃任務で使用されるなど戦闘に加わりました。

本セクションでは、現在約130機の航空機と約100のエンジンを所蔵しています。注目はツェッペリン社の飛行船で、本体はありませんが分解後のエンジンを含む部品が展示されています。

また、水上飛行機の展示、イギリスの戦闘機ハンターMK6のコントロール室など見どころの多くセクションです。

《戦争と占領のセクション》

本セクションは2019年に展示スタートした新しい常設展示です。1000以上のコレクションを集め、1919年から1945年までのベルギーとヨーロッパ、アジアの軍事史を紹介しています。

主なテーマは、ベルギーの占領と解放の歴史(1940年~1944年)・ヨーロッパとアジアの戦争の終結(1944年~1945年)です。同時に民族への弾圧運動、迫害、大量殺戮も主要テーマとして取り上げています。

本セクションは、一般的な戦争展示、軍事展示とは大きく異なります。歴史的な事実をただ羅列するのではなく、戦時中の国王の役割、人々の抵抗、ユダヤ人の迫害などを、社会的、政治的、人間的といった各方向から検証しているのが特徴です。

■おわりに

王立軍事博物館はブリュッセルにある博物館で、ベルギーをはじめとした各国の軍事史をテーマに展示を行っています。産業としての開発の歴史はもちろん、平和の尊さを伝える貴重な資料の数々を鑑賞することができます

公式ホームページ

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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