世紀末美術館:19世紀末から20世紀初頭のベルギー芸術に注目する美術館

世紀末美術館はベルギー・ブリュッセルにある美術館で、ベルギー王立美術館の地下に位置しています。ブリュッセルで19世紀末からおこった芸術運動に関わる作品を多くコレクションしており、ベルギー芸術界の変遷を知ることができます。そんな世紀末美術館の歴史と所蔵品について詳しく解説していきます。

■世紀末美術館とは

世紀末美術館はベルギーのブリュッセルにある美術館で、2013年に開館しました。

もともとベルギー王立美術館にあった近代美術のコレクションと、ブリュッセル市に寄贈されたギリオン・クロヴェット家の個人コレクションをまとめて展示する目的で設立された美術館です。

館名にも入っている『世紀末』とは19世紀末のことを指し、当時のブリュッセルは文学・絵画・オペラ・建築・音楽・詩など様々な最先端芸術の中心地でした。

当美術館では、象徴主義、表現主義、アール・ヌーヴォーなど、世紀末のベルギー芸術の盛り上がりを知ることができます。

■世紀末美術館の所蔵品

世紀末美術館では19世紀末から20世紀初頭の作品を中心にコレクションしています。

ベルギー近代芸術の代表作家はもちろん、フランス・オランダなど海外の有名アーティストの作品も鑑賞することができます。

そんな世紀末美術館のコレクションには、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介します。

《風変りな仮面》1892年ジェームズ・アンソール

本作品は1892年に制作された作品で、近代ベルギーの代表画家ジェームズ・アンソールが描きました。

ジェームズ・アンソールは1860年にベルギー・オーステンデで誕生しました。実家の土産物屋ではカーニバルの仮面を取り扱っており、のちに代表的なモチーフになります。父はイギリスとドイツで工学を学んだ教養人でしたが、学問よりも芸術分野への興味を示しました。

1877年にブリュッセルの王立美術アカデミーに入学すると、3年間に渡り美術を学びました。卒業後は故郷へ戻り、実家の屋根裏部屋で制作を行います。オーステンデからほとんど出ることはなく、生涯未婚で孤独に作品と向き合い続けました。

初期の作品は独特の色使いで描かれた静物画・室内情景画が中心でした。代表的なモチーフである仮面が登場したのは、1883年の『不真面目な仮面』が最初です。それ以降、作品には必ずと言っていいほど仮面の人物が登場しています。

初期こそ異端児扱いされていましたが、20世紀以降は勲章を受章する巨匠として名声を得ました。しかし、評価の高い作品のほとんどは1885年~1895年頃の10年間に制作されたもので、晩年の作品はあまり知られていません。

本作品はアンソールの全盛期といえる1892年に制作されました。仮面をかぶった人々が並んでいて、絵を見ている人を薄ら笑いで見つめています。赤・青・緑・黄など鮮やかな色彩にも関わらず、どことなく不気味で冷たい雰囲気が独特の世界観を醸し出しています。

(Public Domain /‘The Sphinx, or, The Caresses’by Fernand Khnopff. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《スフィンクスの愛撫》1896年フェルナン・クノップフ

本作品は1896年に制作された作品で、ベルギー象徴主義の巨匠フェルナン・クノップフが描きました。

フェルナン・クノップフは1858年にベルギーのグレムベルゲンで生まれました。実家は由緒正しき旧家で、親族のほとんどが法律家か判事の職に就いていました。検事である父の転勤に伴い、ブリュージュそしてブリュッセルで幼少期を過ごします。

18歳となった1876年、両親の勧めでブリュッセル自由大学法学部へ進学します。しかし、次第にフランスの詩人シャルル・ボードレールや小説家ギュスターヴ・フローベールの作品に情熱を傾けるようになりました。

法律よりも芸術を学びたいと考え大学を中退し、ブリュッセル王立美術アカデミーに入学します。在学中に何度も訪れたパリではロマン主義画家ウジェーヌ・ドラクロワや新古典主義の巨匠ドミニク・アングルらの作品にふれ、その作風に影響を受けました。

卒業後、サロンの展示会に出品したり『20人展会』の設立に参加したりと、精力的に活動を行います。また、イギリスのラファエル前派の画家やウィーン分離派の画家とも交流を持ち、クリムトに大きな影響を与えた画家だと考えられています。

後年はベルギー象徴主義の巨匠として知られるようになる一方で、舞台セットのデザインやオペラの衣装デザイン・市庁舎の屋内装飾など幅広い制作依頼を受けていました。

本作品はクノップフのキャリアの中でも特に有名な作品の一つです。人間の頭とチーターの体をもつスフィンクス。その隣には両性具有の人間が寄り添っています。どちらの顔もモデルとなったのはクノップフの妹マルグリットで、彼女はクノップフのミューズといえる存在でした。本作品では支配欲と快楽への葛藤が描かれており、作品の特徴である神秘的で幻想的な世界観に浸ることができます。

《逆光の裸婦》1908年ピエール・ボナール

本作品は1908年に制作された作品で、前衛芸術家集団・ナビ派の画家ピエール・ボナールによって描かれました。日本絵画から創作ヒントを得た画家としても知られており「日本かぶれのナビ」とも呼ばれています。

ピエール・ボナールは1867年にフランスのオー=ド=セーヌで生まれました。大学に通う傍ら美術学校にも籍を置き、ポスト印象派の画家ポール・セリュジエと親しくなります。1888年にはナビ派と呼ばれる画家グループをセリュジエらと結成しました。

その後、1890年にエコール・デ・ボザールで行われた日本美術展を鑑賞したことで、ボナールの作風は大きく変化します。浮世絵に影響された装飾的な構成や、掛け軸の影響を受けた縦長の画面は、伝統的な西洋美術には無い特徴で見る人を驚かせることになります。

1893年に作品のほとんどのモデルとなるマリア・ブールサンと知り合います。彼女とは後に結婚し、最愛の妻となります。

本作品も彼女をモデルとした裸婦が描かれています。化粧室にいるマリアが香水をつける様子が描かれており、鑑賞者は二人の日常を覗き見しているような感覚を抱きます。画面全体の筆使いには重みがありますが、カーテン越しの窓から降り注ぐ光によって明るい印象を与えているのも特徴です。

■おわりに

世紀末美術館はブリュッセルにある美術館で、その名の通り19世紀末に活躍した画家の作品を数多くコレクションしています。周囲にはベルギー王立美術館に関連する博物館が6つあり、芸術鑑賞には最適です。ベルギーを訪れた際には、是非一度立ち寄ってみてください。

公式ホームページ

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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