ダナン・チャム彫刻博物館:専門家もうなる至極の展示品の数々

ダナン・チャム彫刻博物館には、ベトナムにある世界遺産のひとつ「ミーソン遺跡」で発掘された石像が多数展示されています。それらがとても良い保存状態で展示されていることから、世界遺産ファンの間では大変名の知れた美術館です。
また、展示されている石像の数が多いことはもちろん、パネルによる解説を交えながらの展示もありますので、見ごたえある彫刻博物館です。
実際にミーソン遺跡へ行く前の予習に訪れるもよし、ダナン観光の一環として訪れるもよし、気軽に訪れることができる名物観光スポットです。

■ダナン・チャム彫刻博物館

ダナン・チャム彫刻博物館はベトナムのダナンに位置し、彫刻の展示をメインにする博物館です。ここで展示されている彫刻は、ただの彫刻ではありません。2世紀~14世紀ごろにかけてベトナム中部から南部で発展した、チャンパ王国の遺跡から発掘された彫刻や遺物を所蔵・展示している貴重な美術館なのです。

チャンパ王国の聖地と呼ばれているのが、1999年に世界遺産に認定された「ミーソン遺跡(ミーソン聖域)」と呼ばれる場所です。ダナン・チャム彫刻博物館では、ここからの出土品である神々の彫刻や、チャンパ王国で生活していた、チャム族の祖先である古チャム人の残した遺物を鑑賞することができるのです。

(Public Domain /‘Early view of the Cham Sculpture Museum’by Unknown author. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

ダナン・チャム彫刻博物館は、1919年に開館しました。建築を手掛けたのは、2名のフランス人建築家です。当時博物館で展示されていたのは、フランス人の考古学者らによって収集されたコレクションでした。その後、1930年代半ばと2002年の2回にわたり増築が進められ、現在は2階建ての構造となっています。増築を経験していながら、1919年の開館時に建築された部分もうまく残されており、当時の面影を感じさせます。美術館自体も見どころのひとつとなっていますので、時代を超えた建築の雰囲気も感じ取ってみてください。

■ダナン・チャム彫刻博物館の所蔵品・展示

ダナン・チャム彫刻博物館の所蔵・展示品は、「ミーソン遺跡」から出土された数多くのヒンドゥー教にまつわる彫刻や、古チャム人の遺物がメインとなっています。ヒンドゥー教は、チャンパ王国で信仰されていた宗教でした。展示品は時代や地域によって分けられ、8つのグループで構成されています。中でも、ミーソン遺跡をテーマにした「ミーソン・ギャラリー」は見ごたえ抜群!はるか昔に栄えた遺跡から出土されたにもかかわらず、彫刻類の保存状態は抜群です。特に、神々の彫刻はヒンドゥー教ならではと言える特徴のある容貌をしているので、見ているだけでもその美しさに吸い込まれそうになります。

このような要素が相まって、この博物館に展示されている彫刻などの展示品は、専門家の間でもお墨付き。トップクラスを誇るクオリティであるといわれているようです。

しかし、どんなに貴重な彫刻でも展示用のショーケースには入っておらず、案外無造作に置かれています。ある意味ベトナムらしさを感じさせられると同時に、歴史を身近に感じることができるのです。

ダナン・チャム彫刻博物館では、どのような所蔵・展示品が私たちを出迎えてくれるのでしょうか。所蔵品や展示について少し見てみましょう。

・《Shiva lingam at the Museum of Cham Sculpture(リンガとヨニ)》

本展示は、円柱の棒とそれを支える平たいくぼみの石像です。
棒の方は「リンガ」、くぼみは「ヨニ」と呼ばれ、それぞれ男性器と女性器を表しています。

特に男性器は破壊の神「シヴァ神」のものとされ、女性器と合わさることで世界を形成していったことから、信仰の対象になっています。

ちょっと恥ずかしい由来があるものの、リンガとヨニはヒンドゥー教のシンボルなのです。

・《シヴァ神の彫刻》

ダナン・チャム彫刻博物館には、シヴァ神単独の彫刻も展示されています。
シヴァ神といえばヒンドゥー教における最高神のひとりで、額に第三の目を持つ破壊と死の神です。

彼が激怒すると激しい炎が出てきて、すべてを焼き尽くすとされています。一方、生殖と豊穣の神としても崇められています。このことから、男性器「リンガ」として表現されることもあるのです。シヴァ神はこのように2面性をもった特徴的な神であるとされています。

ちなみに、誰もが一度は見たことがあるであろう、人の身体に象の頭をしたガネーシャは、このシヴァ神の子供とされています。

・《Statue of Garuda, Thap Mam style,》13世紀ごろ

本展示は、13世紀ごろに造られたヒンドゥー教の神ガルーダの彫刻です。
ガルーダは、頭がワシで、体は人間という姿をしています。ゲームやアニメのキャラクターでは、おなじみのモチーフとなっているようです。
また、ヒンドゥー教の中でも解釈が分かれていることから、一方では災をもたらす神ともされています。

この像はガルーダ単独ですが、ガルーダはヒンドゥー教の最高神の1人ヴィシュヌ神の乗り物とされることから、ガルーダとヴィシュヌ神は一緒にモチーフになることが多いのが特徴です。

・《ミーソン遺跡の模型》

博物館ではミーソン遺跡から出土した彫刻や遺物を展示しているだけあり、遺跡のわかりやすい模型を見ることもできます。

ミーソン遺跡は森の中にある遺跡なのですが、実際に行くとどれだけ広いのか、全体像を把握することは大変難しいです。そのため、模型を使ってあらかじめ遺跡の規模がチェックできるのは、一風変わった体験と言えます。

■おわりに

ダナン・チャム彫刻博物館には、上記以外にも注目すべき所蔵・展示作品がたくさんあります。

ミーソン遺跡では今もなお発掘作業が行われており、発掘するたびに新しい遺跡や出土品が見つかっているようです。今後も新たな情報や出土品の展示が増えていく可能性がありますので、ダナン・チャム彫刻博物館を訪れるたびに新たな出会いを経験することができるでしょう。

ダナン・チャム彫刻博物館は、ミーソン遺跡へ行く前の予習としても、ミーソン遺跡へ行った後の復習としても楽しめる博物館です。ダナン市内からもアクセスしやすい場所に位置していますので、ダナンの有名観光スポットとしても大変見応えがある場所です。

英語の音声ガイドを借りることもできますので、是非ダナンを訪れる際はチェックしてみてください!

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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