トン・ドゥック・タン博物館:ベトナム革命に重要な役割を果たした人物について学べる博物館

トン・ドゥック・タン博物館はベトナムのホー・チ・ミン市にある博物館で、1988年に開館しました。南北ベトナム統一後、初代ベトナム社会主義共和国主席を務めたトン・ドゥック・タンの人生と革命的キャリアが、多くの工芸品や文書、写真などの展示によって紹介されています。そんなトン・ドゥック・タン博物館の歴史と所蔵品について、詳しく解説していきます。

■トン・ドゥック・タン博物館とは

トン・ドゥック・タン博物館は、ベトナムのホー・チ・ミン市、トン・ドゥック・タン通りに位置する博物館です。ベトナム民主共和国の第2国家主席および、南北ベトナム統一後の初代ベトナム社会主義共和国主席を務めたトン・ドゥック・タンの人生と、彼の革命的なキャリアに関するコレクションが展示されています。彼の生誕100周年を記念する1988年に開館したこの博物館は、もともと「トン・ドゥック・タンの生涯と経歴に関する展示会館」というのが原名でしたが、1990年、文化情報・スポーツ・観光大臣(現在の文化・スポーツ・観光省)により今の名称に変更されました。ベトナム革命における彼の業績を示す貴重な展示により、かつてフランスの支配下にあったベトナムが独立を果たすまでの歴史も学ぶことができます。

この建物は、かつてベトナム戦争時の陸軍将校であったトラン・ティエン・キームの住居として使われていましたが、後に改装され博物館となりました。また、この博物館はベトナムの若い世代への伝統的な教育を行うことに貢献したり、記念日や式典での礼拝の儀式も行ったりもしています。

■トン・ドゥック・タン博物館の所蔵品

トン・ドゥック・タン博物館の常設展示は、多くの工芸品や文書、写真などによりトン・ドゥック・タンの生涯や業績について鮮明に紹介しています。メインテーマとなっている5つの展示室では、トン・ドゥック・タンの幼少期にはじまり、彼の生涯とキャリア、15年のコンダオ刑務所、ベトナム戦争での活動、彼に関する美術品の展示をそれぞれ見ることができます。

そんなトン・ドゥック・タン博物館の展示は、具体的にどのような内容なのでしょうか。主要な展示についてご紹介します。

・《トン・ドゥック・タンの生涯とキャリアの展示室》

この展示室では、ベトナム革命時代に生きたトン・ドゥック・タンの生涯における重要な節目を、年代順に展示しています。

(Public Domain /‘Tôn Đứ c Thắ ng’by Unknown author. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

トン・ドゥック・タンは1888年、フランス領インドシナ連邦(フランスの支配下にあったインドシナ半島東部地域で、現在のベトナム・ラオス・カンボジアを合わせた領域)に生まれました。1897年から1901年にかけては、家庭教師から中国の脚本や歴史、哲学の教育を受けます。反植民地主義者であったこの家庭教師は、タンの政治的信念の初期の発展に大きな影響を与えました。その後、彼はロン・スエンの小学校でフランス語を学びました。

タンは青年期にはすでに共産主義者になっており、1913年にフランスへ渡りました。帰国後はフランスに対する反抗的な活動に参加し続け、1927年からベトナム革命青年協会のメンバーになりました。しかし、1928年、彼はサイゴン(現ホーチミン市)のフランス人によって追放され、コンダオ刑務所へ移送されてしまいます。1945年まで監獄生活を送っていたタンでしたが、釈放後はすぐに再び世間のために立ち上がりました。1945年8月にホー・チ・ミンのベトミン(ベトナム独立同盟会)が政権を握ると、その後タンはベトナム共産党のコーチシナ党委員会のメンバー、コーチシナの管理抵抗委員会のメンバーとなり、1946年からは、国会の議長を務めました。1947年、彼はベトナム共産党中央委員会のメンバーに就任しています。

その後タンは、1951年にベトナム労働党第2回党大会で党中央委員に選出され、1955年から1960年にかけてはベトナム民主共和国の国会常務委員会議長を務めています。1960年の第3回党大会では党中央委員に再選出され、同年に国家副主席に任命されました。1962年には初代国家主席であったホー・チ・ミンが死去したため、その3日後にタンが国家主席へと昇格したのです。

1975年に北ベトナムがベトナム共和国(南ベトナム)を倒したことで南北ベトナムが統一され、1976年にベトナム社会主義共和国が建国されました。タンはこのとき、ベトナム社会主義共和国の初代国家主席に選出され、同年には第3回ベトナム共産党大会で党中央委員に再選出されています。

このように、ベトナム革命で重要な役割を果たしたトン・ドゥック・タンは、ベトナムで最初のレーニン平和賞を受賞した人物でもあります。

この展示室では、タンがかつて住んでいた家や、彼の生涯における多くの貴重な写真が展示されています。そこには、彼の幼少時代や故郷、学校、ベトナムの独立と統一のための戦争に関する写真や品々が含まれています。フランス植民地時代にベトナム人が受けた残虐行為の写真や、彼のベトナム革命における業績を示す展示は貴重なものとなっています。

・《15年のコンダオ刑務所の展示室》

この展示室では、自由闘争の間にトン・ドゥック・タンが15年間過ごした、コンダオ刑務所に関する文書や写真などが展示されています。

1861年からフランスの支配下におかれたコンダオ諸島(ベトナム東南部にあるバリア=ブンタウ省の群島)はベトナム戦争が終結する1975年までの間、インドシナ最大の監獄島とされ、「地上の地獄」と呼ばれていました。コンダオ刑務所は、フランスの植民地政権により政治犯とされた者たちを収容する目的として、この諸島に設立されました。国家の独立や解放のために戦っていた革命家たちがここで拘留され、残虐な拷問が行われていたのです。また、ベトナム人共産主義指導者たちも南ベトナム政府によりここで再教育されました。19世紀以降、約20万人の政治犯がここに収容され、2万人以上が亡くなっています。

1929年にコンダオ刑務所へ移送されたトン・ドゥック・タンも、1945年までの約15年間、このコンダオ刑務所で苦難な日々を過ごしました。この場所には現在でも、ベトナム独立・革命運動の犠牲者の慰霊を目的とし、多くの観光客が訪れています。

■おわりに

トン・ドゥック・タン博物館は歴史的、文化的価値のある博物館として、ホー・チ・ミン市では有名な観光スポットの一つとなっています。敷地内にはビストロやカフェもあり、ゆっくりくつろぐこともできます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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