南部女性博物館:ベトナムの南部で活躍していた女性たちの歴史を展示する博物館

南部女性博物館はベトナム南部で子育てをしながら家庭を守り、活躍していた女性たちの歴史を展示しています。4階建ての南部女性博物館には、伝統的なベトナムの民族衣装や活躍した女性の写真などが多数展示されています。そんな南部女性博物館の歴史と所蔵品についてくわしく解説します。

■南部女性博物館の歴史

※南部女性博物館のあるホーチミン

南部女性博物館は、伝統と愛国心を引き継ぐための場所として、前世代の女性の意志に従って建てられました。始まりは1983年1月、政治局と党中央委員会事務局の承認を得て、南部女性史研究機関が設立されました。その後1985年4月29日の、ベトナム南部解放から10年という節目に南部女性博物館として公開が始まります。当初は200m2という狭い展示施設でした。

その後多くの資料が収集され手狭になった為、中央党と州の支援のもと博物館はおよそ3,000m2へと拡張しました。この建物は4階建てのフレンチコロニアル様式で以前はフランスの大富豪が所有していた建物です。南部女性博物館は展示室のほかに1,000人が収容できるホールや図書館があります。

1994年以降は外国からの侵略と戦ってきた、南部の女性というコンセプトのほかにベトナムの民族衣装や伝統的な工芸品なども併せて展示されるようになっています。またベトナムの無形文化財の保護にも努めています。

■南部女性博物館の所蔵品

南部女性博物館には現在31,360点の所蔵品があります。ベトナムの民族衣装や伝統工芸に関する道具、ベトナム戦争時に活躍した女性たちの写真など、様々な所蔵品がテーマごとに24に分類され、展示してあります。南部女性博物館には展示品だけではなく、南部の女性に関する多くの書籍も図書館に保存しています。

そんな南部女性博物館にはどのようなコレクションが含まれているのでしょうか。主な所蔵品を紹介します。

≪ベトナムの伝統的な民族衣装アオザイの変遷≫

ベトナムの民族衣装として知られるアオザイは、時代とともに女性をより美しく見せることができるように変化していきました。

ベトナムの民族衣装として知られるアオザイはかつて普段着として着用されていました。女性のアオザイには2つのスタイルがあり、それぞれ工夫がなされています。1932年には画家のキャット・トゥオンとル・ポーによって伝統的なベトナムのアオザイと西洋の洋服を融合させたアオザイがデザインされました。

1968年には裾の長さが短いアオザイも登場します。またオープンネックの襟元のアオザイやノースリーブのアオザイも見られるようになっています。

ただ結婚式やお祭りなど大切な行事の時は、従来のロングドレスのアオザイを近年でも着用しています。南部女性博物館では、このアオザイのデザインの変遷プロセスを知ることができます。1階にはベトナムの伝統的なアクセサリーが展示されており、ネックレスやイヤリングなどがショーケースに収められています。

≪南の民族衣装≫

※ベトナムに存在する生地の数々

ベトナム南部では中国人、チャム、クメール、タオイ、バナ、ムノン、エデ、ギアライ、スティエンなどの少数民族が生活しています。これらの民族には民族固有の色彩やパターンを持った民族衣装があります。南部女性博物館では、これら少数民族の民族衣装も展示されています。

≪女性の革命記念品≫

フランス植民地主義とアメリカとのベトナム戦争中の抵抗運動には多くの南部女性が参加しています。家庭を守りながら女性兵士としても抵抗運動に参加していた、南部の強い女性たちの多くの資料がコレクションされています。

≪抵抗戦争における南部の女性の政治的闘争に関する写真集≫

(Public Domain /‘Portrait of Võ Thị Sáu’by unknownviaWIKIMEDIA COMMONS)

ベトナム南部の女性たちは1945年の八月革命と1945年から1954年にかけて勃発したフランス植民地主義者に対する9年間の抵抗戦争、その後のベトナム戦争において大変重要な役割をしています。「長髪軍」が創設され長年にわたって抵抗勢力として状況に応じて変化しながら活動していたといわれています。南部女性博物館にはこの運動に参加し死刑を宣告された女性囚人の写真があります。とくにホーチミン市で通り名として使用されている女性活動家、ヴォーティサウとグエンティミンカイのふたりは、よく知られた活動家です。

ベトナム南部の女性は自分たちが生活している地域や国に多大な愛情を持っています。そこに生活している自分たちの家族のために立ち上がったといえます。そんな南部の女性たちの闘争の様子を撮影した、1000枚以上の写真をコレクションしています。

≪青銅鏡のコレクション≫

※写真はイメージです

南部女性博物館では20個の青銅鏡を所蔵しています。これらの青銅鏡はほとんど中国からもたらされました。その大半は中国からの移民によってもたらされたといわれています。

≪女性の政治犯に関する文書コレクション≫

多くの南部女性は政治犯として刑務所に収監されていましたが、彼女たちは武器の代わりに詩や歌、そして強い信念で多くの苦難に立ち向かいました。その強い精神力は、たくさんの女性に活力を与えていました。そんな彼女たちの闘争の記録が多くの文書として残されています。南部女性博物館ではこれらの文書を多数コレクションしています。

≪ベトナムの織物工芸≫

※織物をするベトナム女性

ベトナムには多種の織物工芸が存在します。様々な民族が生活するベトナムでは、色鮮やかで個性のある民族独特の織物がたくさんあります。南部女性博物館ではベトナムの根底を支えている機織りや染色のなどの織物工芸の様子を再現しています。

終わりに

※ベトナムの働く女性たち

南部女性博物館は日本ではあまり知られていない博物館です。ベトナムにおける女性解放や女性による抵抗闘争などベトナムの歴史を知るうえでとても貴重な資料が多くコレクションされています。ベトナムの歴史をより深く知りたいと考える方にはおすすめの博物館です。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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