コンポントム:世界遺産以外の見どころ

コンポントムは、カンボジア中央部にある敷地面積国内第2位の州。豊かな穀倉地帯とトンレサップ湖に流れ込むセン川を有し、農業と漁業が盛んな地域である。観光名所としては、2017年にユネスコの世界遺産に登録されたサンボープレイクック遺跡があるほか、市街地近郊には地元の人々の素朴な暮らしに触れられるスポットがある。本記事では、サンボープレイクック遺跡以外のコンポントムの見どころを紹介する。

カンボジア中央部に位置し、国内第2位の面積を有するコンポントム(Kampong Thom)州。のどかな農村地帯が広がり農業を主産業とするほか、東南アジア最大の淡水湖トンレサップ湖に接しているため、漁業も盛んな地域です。

従来は観光客がこぞって訪れるような場所ではありませんでしたが、州内にあるサンボープレイクック遺跡が2017年にユネスコの世界遺産に登録されたことにより、観光地としても注目を浴びるようになりました。(サンボープレイクックについては、別記事「サンホーフレイクック:カンホジア第三の世界遺産」をご参照ください)

コンポントムまでは、プノンペン、シェムリアップの両都市から車で3時間ほど。せっかく訪れるなら、遺跡見学のみならず、街中の観光もしておきたいもの。

今回は、サンボープレイクック遺跡以外にチェックしたい、コンポントムの見どころをご紹介します

市内を潤すセン川のほとりを散策

観光でコンポントムを訪れる方の多くは、プノンペンまたはシェムリアップといった都市を拠点とし、バスで訪れることになるでしょう。

両都市を出発した長距離バスの多くは、コンポントム市街地のレストラン「ArunrasRestaurant」の前に停車します。

バスの発着所から300mほど北に向かうとすぐに目に入るのが、コンポントムのシンボルといってもよいセン川(Stung Sen River)

写真:筆者提供

東南アジア最長の河川メコン川の支流であり、コンポントムの人々に水の恵みをもたらしています。

川面に時折浮かび上がるのは、水浴びをして遊ぶ子供たちや網を引く漁師の姿。川沿いには、公共の遊具やエクササイズ用具で、体を動かす人々もいます。

写真:筆者提供

毎年11月頃に国を挙げて行われる年中行事「水祭り」の際には、白熱のボートレースが行われますが、コンポントムでの地区予選はこのセン川で行われます。数十人以上が乗り込んだ木製の細長いボートが接戦を繰り返す様子には、胸が熱くなります。

陸上交通の要となっているのは、川にかかる2つの橋。東側のアーチ状の橋は、フランス植民地時代の1920年代に作られた歴史的な橋。

写真:筆者提供

周辺には派手なアトラクションがあるわけではありませんが、川辺に吹く爽やかな風を浴びながら、のんびりとしたコンポントムの街の雰囲気を感じてみましょう。

目で見て、食べておいしいマーケットを物色

セン川から南に300mほど戻ると、地元の人々の暮らしを支える市場「コンポントムマーケット」に行き着きます。道沿いに掲げられた看板にアルファベットで大きく“KAMPONG THOM MARKET”と書かれているので見つけやすいでしょう。

写真:筆者提供

コンポントム市の玄関口のようなマーケットは、食料品、洋服、日用品までなんでも揃う場所。

採れたての新鮮な野菜や魚が並ぶ朝に訪れると、一際賑やかな雰囲気を感じることができます。市場の軒先をカラフルに彩る野菜や南国フルーツは、見ているだけでも楽しいもの

写真:筆者提供

コンポントムの豊かな土と水に育まれた特産品の数々を、目と舌で味わってみましょう。

また、せっかく立ち寄ったなら市場の奥深くまで足を踏み入れ、細い路地を歩いてみましょう。

写真:筆者提供

少々薄暗い市場内部には、様々なジャンルの商品が入り混じって並ぶディープで味わい深い世界が広がっています。

トンレサップ湖の恵みをたっぷり受けたコンポントム名産の干物はおつまみにもってこい。

写真:筆者提供

その他、軽食やおやつにぴったりのローカルフードもたくさん売られています。

小腹を満たしながら、この地で暮らす住人になったような気分で市場内を散策し、目ぼしいアイテムを探してみてはいかがでしょうか。

コンポントム名物コオロギ料理を食す

魚の干物やカシューナッツと並ぶコンポントムの名産物がコオロギ。

昆虫が名産物というのも珍しいですが、良質なタンパク質やカルシウムを豊富に含むコオロギは、カンボジアの人々にとって貴重な栄養源。食用品として様々な料理に用いられているのです。

養殖によってコオロギを育てる一家が存在するほか、天然コオロギが獲れることでも有名なコンポントム。セン川のほとりには巨大なコオロギ像があり、フォトスポットにもなっているほどで、コオロギは州の観光大使的存在でもあります。

写真:筆者提供

コンポントムマーケット周辺を訪れたら必ず目に入るのが、コオロギの素揚げを売っている屋台。

写真:筆者提供

無数のコオロギが積み上がったビジュアルは、初めて見る方には少々衝撃的かもしれませんが、味は意外とシンプル。

一般的に馴染みのある食材に例えるなら、小エビに近い味といえるでしょう。サクサクと歯ごたえがあり、スナック感覚で食べられます。

最初は恐る恐る「1匹だけ」と手を伸ばした筆者も、癖になる食感と味わいにびっくり。甘辛く味付けされたビールのおつまみにぴったりの一品で、危うく手が止まらなくなってしまいそうでした。

写真:筆者提供

こちらの屋台では、軽量カップにたっぷり1杯分のコオロギが$1とのこと。

屋台によっては、コオロギ以外にタガメなどの別の昆虫も一緒に売っているところも。

写真:筆者提供

コオロギの虜になってしまった方は、昆虫ごとの味の違いを比較してみてください。

博物館でプレ・アンコール期〜アンコール期の歴史に触れる

世界遺産サンボープレイクックを訪れる前後に立ち寄ってみてほしいのが、コンポントム博物館(Kampong Thom Museum)。市街地から北東のサンボープレイクック方面に向かう途中にあります。

写真:筆者提供

コンポントムマーケット周辺からは2kmほど。コンポントム州内で発掘された遺物を展示する博物館の中には、サンボープレイクック遺跡などから発掘されたプレ・アンコール期の彫像や寺院建築の一部のほか、アンコール期に入ってから作られたものもみられます。

写真:筆者提供

サンボープレイクックは、アンコール王朝(9世紀〜15世紀)の前身である真臘の都として6世紀後半〜7世紀前半に栄えたイシャナプラの跡地に広がっている遺跡。

当時、20,000世帯もの人々が住む都市区域の傍で、インドやヒンドゥー教文化の影響を多分に受けたユニークな建物や彫刻が多数生み出されました。

たとえば、円筒状の柱はプレ・アンコール期の寺院特有のもの。アンコール期の八角形の柱と比較すると、違いがはっきりと分かります。

写真:筆者提供

小ぶりな展示室には、その他にも、アンコール期前後を代表する彫像、リンガ、精緻な浮き彫りが施されたまぐさ石などがずらりと並べられています。

写真:筆者提供

建造物や彫刻に描かれる世界は、その時々の思想や風習を映し出すもの。

時代ごとの意匠の変遷を追いながら、現在のコンポントムの地で古都イシャナプラが栄え、その後大帝国アンコール王朝に繋がっていった歴史をたどってみましょう。

博物館内には、展示用のガラスケースがないのもポイント。展示品の質感を間近で感じてみてください。

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【参考】コンポントム博物館
入場料:無料
定休日:なし
地図:https://goo.gl/maps/TN4TdkXqj8b1kr6W6
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山上の寺院から絶景を望み、珍宝を探す

街中を一通り巡ったら、街はずれまで少しだけ足を伸ばし、山上の寺院プノンソントック(Phnom Santouk)を訪れてみましょう。

写真:筆者提供

標高約200mの山頂には、アンコール期以降に建てられたとされる仏教寺院や仏塔、彫像が点在。地元の人々の間では、仏教の聖地や夕日鑑賞スポットとして有名なところです。

市街地のコンポントムマーケットがある辺りからプノンソントックまでは約20km。近くに停車しているトゥクトゥクを拾えば、30分程度(料金は要交渉で、往復$12前後)で麓まで連れていってもらえるでしょう。

麓に到着すると、眼前にそびえ立つのは、びっしりと整列した人物像に挟まれた809段の階段。

写真:筆者提供

カンボジアでは、山頂に設置された寺院は珍しくないものの、800段超えの階段はかなりのヘビー級。普段足腰を鍛えていない方にとっては、過酷な運動になるでしょう。自力で上るのが難しい場合は、麓で待機しているバイクタクシーに乗り、裏手の舗装路から上ることもできます。

頂上に向かう途中には、猿がたくさんいます。近寄って来て手荷物を取ろうとする猿や、攻撃性が高い猿もいますので、極力刺激しないように、荷物をガードしながらゆっくりと横を通るようにしましょう。

中腹には見晴らし最高の岩場も。

靴を脱いで岩の上から雄大な田園風景を一望してみましょう。

写真:筆者提供

さらに地道に歩を進め、809段の階段を登りきった先には、数々の見どころがあります。

巨大砂岩から切り出された涅槃仏、中国風の五重塔、水槽に浮かぶ12kgの石、岩場の陰に潜む現代風の着色彫像など、フォトスポットが満載です。

写真:筆者提供
写真:筆者提供
写真:筆者提供
写真:筆者提供
写真:筆者提供

あちこちに散りばめられた珍しい宝物を見つけるような感覚で散策を楽しめるスポット。市街地から少し離れていますが、時間に余裕があったらぜひ訪れたい地元の人々に人気の観光名所です。

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-【参考】プノンソントック
入場料:$3
地図:https://goo.gl/maps/fyKra9qR76UNhhLn8
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世界遺産の傍で、何でもないカンボジアの日常風景を楽しむ

写真:筆者提供

トンレサップ湖へと流れ込む雄大なセン川を眺めて思いにふける。マーケットを散策し、ビール片手に名物のコオロギを食す。プレ・アンコール期からアンコール期にかけてコンポントムで生まれた石像彫刻を間近で鑑賞する。のどかな農村地帯にゆっくりと沈む夕日を山頂から拝む。

コンポントムの市街地近郊は、素朴なローカルライフと歴史に触れられる場所。

サンボープレイクック遺跡を訪れるなら、ぜひ街の周辺も探索してみてください。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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