ブルケンタール国立博物館:1817年に開館したルーマニア最古の博物館

ルーマニアの古都シビウにあるのがブルケンタール国立博物館。6つの複合的な施設からなる博物館です。その中心にあるブルケンタール男爵の邸宅を改装した博物館には、ヨーロッパ各地の画家の作品が集結。初期フランドルを代表する画家ヤン・ファン・エイク、ハンス・メムリンクなど、ここでしか見られない希少な画家の作品が公開されています。ルーマニアを訪れたら、必見の見どころです。ブルケンタール国立博物館の歴史やコレクションを紹介します。

◼︎ブルケンタール国立博物館とは

ブルケンタール国立博物館があるのは、東ヨーロッパに属する共和制国家ルーマニアです。雄大なカルパディア山脈に分断された国土は大きく4つの地方に分かれており、それぞれに異なる個性が根付いています。

ブルケンタール国立博物館があるのは、東ヨーロッパに属する共和制国家ルーマニアです。雄大なカルパディア山脈に分断された国土は大きく4つの地方に分かれており、それぞれに異なる個性が根付いています。

ルーマニア北部に位置するシビウは、トランシルヴァニア地方にある古都です。14世紀から15世紀にかけて顕著(けんちょ)な発展を重ねてきました。交易の中心地として、大勢の商人が足を運んだのです。そんなシビウの旧市街の一角に、ブルケンタール国立博物館はあります。

1817年に開館したブルケンタール国立博物館は、シビウの街中に6つの施設に分かれて運営されており、ルーマニア最古の博物館として親しまれています。中でも主要となる見どころは、総督サミュエル・ブルケンタール男爵の邸宅を改装して公開された豪華な博物館でしょう。ブルケンタール男爵は女帝・マリア・テレジアの顧問として活躍した歴史的な重要人物です。

建物はオーストリア・バロック様式を採用した豪華絢爛な造りが特徴でしょう。3階建て構造になっており、各階には小さな部屋が無数に用意されています。敷地内には図書館もあり、蔵書量はなんと30万冊を超えるといいます。古代ルーマニア文字で書かれた古書や専門誌など、価値が高いものばかりです。

古都シビウにそびえるブルケンタール国立博物館。そのコレクション内容は、いったいどのようなものなのでしょうか?詳しく紹介します。

◼︎ブルケンタール国立博物館のコレクション

ブルケンタール国立博物館のコレクション総数は約1,200点です。絵画のほか彫刻、書籍、鉱物などのコレクションも含まれています。絵画作品はフランス、オーストリア、スペイン、イタリアなど、主要なヨーロッパ各国の作品を網羅しており見応えがあります。建物は3階すべてが公開されていますが、圧巻は3階の展示でしょう。メインとなる展示室は大部屋になっており、それぞれの作品はガラスケースに覆われ厳重に管理されています。

ここからは、そんなブルケンタール国立博物館の主要なコレクションを紹介します。

《青い帽子の男の肖像》1430年頃から1433年頃

(Public Domain/‘Portrait of a Man with a Blue Chaperon’ by Jan van Eyck. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《青い帽子の男の肖像》は1430年頃から1433年頃、フランドルを代表する画家ヤン・ファン・エイクによって制作された作品です。

本作品を描いたヤン・ファン・エイクは、油彩画に革新をもたらしたといわれる初期フランドル絵画の巨匠です。15世紀の北ヨーロッパで最も重要視されている画家の一人に挙げられます。幼少期の情報は少なく謎に包まれていますが、自身の工房を運営しており、宮廷画家としてフィリップ3世に仕えていました。1454年に出版された本では「第一級の画家」として紹介されています。歴史的な評価も高く、後世の画家に大きな影響を与えた画家として知られます。

本作品である《青い帽子の男の肖像》は、現存するヤン・ファン・エイクの作品としては最初期の作品と考えられています。青色のターバンのようなものを頭に巻いた男の胸像を描いており、その表情はどこか虚ろです。右手に指輪のようなものを持っていることも作品の特徴に挙げられます。

濃い茶色の服に身を包んだ男性は、どのような職業に就いていたのでしょうか?背景の黒色が虚ろな男性の表情をさらに神秘的なものに引き立てています。まるで人形のような質感は、ヤン・ファン・エイク作品の特徴でしょう。艶やかな質感は、時代を変えた画家の個性です。

《本を読む男》

《本を読む男》は、フランドルを代表する画家ハンス・メムリンクによって制作されました。

ハンス・メムリンクはヤン・ファン・エイクと同様にブルッヘを拠点に活躍した画家です。ヤン・ファン・エイクに続いてフランドルの絵画を牽引した巨匠とみなされています。メムリンク作品の特徴は徹底的とまでいわれる写実的表現でしょう。まるで本物を写し取ったかのような繊細な描写は、一目でメムリンクの作品と分かるほどです。激しさはなく静寂に満ちた作品の世界観も特徴でしょう。描かれた人物は、どこか静かさをたたえた表情を浮かべています。

本作品は、牧師のような服装の男性を描いた作品です。静かに本に目を落とす男性の雰囲気は静寂そのもの。はっきりとした目鼻立ちは、男性の端正な顔立ちを見事に描ききっています。袖口についた毛皮の質感まで伝わる描写は、メムリンクの高い写実性の証です。

男性の背後に描かれた少年、もしくは少女は一心に祈りを捧げており、男性に対する神の加護を暗に表現しているかのようです。背景に描かれた自然と建物の壁は、想像と現実の狭間を表現しているのでしょうか?いくつもの解釈が生まれる、感性を刺激してやまない傑作です。

◼︎おわりに

ルーマニアのシビウにあるブルケンタール国立博物館の歴史やコレクションを紹介してきました。オーストリア・バロック様式の優雅な建物内には、ここでしか見られない希少な絵画コレクションが所蔵されています。ルーマニアを訪れたら芸術鑑賞もぜひ楽しんでみてください。

また、シビウには旧市街のシンボルとなっているシビウ大聖堂など、さまざまな見どころがあります。大聖堂はルター派の教会として長年シビウの人々に愛されていますよ。首都ブカレストにも負けない魅力が根付いた街シビウへ、ぜひ足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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