ルーマニア国立美術館:ルーマニア最大規模の珠玉のコレクション

ルーマニア最大規模の芸術コレクションを誇るのがルーマニア国立美術館。首都ブカレストの中心地に位置する美術館です。宮殿のような優雅な建物はそれ自体が芸術作品のひとつでしょう。館内では2つのセクションに分かれてルーマニア国内外の美術品が展示されています。エル・グレコ、ピーテル・パウル・ルーベンス、クロード・モネなど、世界的な巨匠の作品を堪能することができるでしょう。この記事では、ルーマニア国立美術館の歴史やコレクションを紹介します。

◼︎ルーマニア国立美術館とは

ルーマニア国立美術館があるルーマニアは、東ヨーロッパに属する共和制国家です。ヨーロッパの南東部に位置しており、国の中央を走る雄大なカルパディア山脈によって大きく4つの地方に分かれています。紀元前からの長い歴史は、ルーマニア独自の個性を生み出してきました。

ルーマニアの首都ブカレストは国土の南東部に位置する国内最大の街で、文化・経済・産業の中心地として知られています。国立美術館があるのは、そんなブカレストの中心地にある革命広場の一角です。その珠玉のコレクションから、国内で最も有名な美術館といわれています。

美術館の建物は、かつてルーマニア王族が暮らした宮殿を改装したものです。白色を基調とした見た目は目にもあざやか。円柱が連なる優雅な造りは古代の神殿を彷彿とさせます。アーチ状の窓は建物全体にクラシックな印象を加えているでしょう。門の装飾も見応えがあります。

美術館が開館を迎えたのは、1937年のことです。歴史を重ねながらも美しい状態を維持しているのはさすがでしょう。内装は随所に宮殿時代の名残が見られます。展示室もシンプルな白色で統一されており、清潔感があります。スペースもゆったり取られており、それぞれの作品にじっくりと向き合うことができますよ。この快適さも国立美術館の大きな魅力のひとつです。

建物にも注目のルーマニア国立美術館。そのコレクション内容は、いったいどのようなものなのでしょうか?

◼︎ルーマニア国立美術館のコレクション

ルーマニア国立美術館のコレクションの多くは、ルーマニア王室が収集したものとされています。エル・グレコ、クロード・モネ、ピーテル・パウル・ルーベンス、ルノワール、カミーユ・ピサロ、ブリューゲルなど、歴史に名前を残す巨匠の作品も、圧倒的に充実しています。

美術館は2つのセクションに分かれており、ルーマニア美術館ではルーマニア国内の芸術家の作品群を、ヨーロッパ美術館ではルーマニア国外の芸術家の作品群を、それぞれじっくりと堪能できるでしょう。ここからは、ルーマニア国立美術館の主要なコレクションを紹介します。

・《羊飼いの礼拝》

(Public Domain/‘The Adoration of the Shepherds’ byEl Greco. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《羊飼いの礼拝》はマニエリスムを代表する画家エル・グレコによって制作された作品です。

エル・グレコはクレタ島の首都カンディア出身の画家で、マニエリスムを代表する人物として知られています。縦に長く伸びた描写が特徴で、特にスペインを拠点に活躍しました。スペインで屈指のコレクションを誇るプラド美術館には、グレコの作品が多数所蔵されています。

エル・グレコはクレタ島の首都カンディア出身の画家で、マニエリスムを代表する人物として知られています。縦に長く伸びた描写が特徴で、特にスペインを拠点に活躍しました。スペインで屈指のコレクションを誇るプラド美術館には、グレコの作品が多数所蔵されています。本作品《羊飼いの礼拝》は、スペインのドーニャ・マリア・デ・アラゴン教会の大祭壇衝立画として制作された作品です。しかし完成後ナポレオン戦争時代に破壊、散逸してしまい、現在は部位ごとに分かれて作品が公開されています。合計6点の作品があり、そのうちの5つはスペインのプラド美術館に所蔵、残りのひとつがルーマニア国立美術館に唯一所蔵されています。

画面構成は誕生したばかりのキリストを中心に描き、周辺には礼拝に訪れた羊飼いを配置、上空にはキリストの誕生を祝福する天使たちが描かれています。キリストはまるで光を発しているかのように描かれており幻想的な描写が目立ちます。色彩の豊かさは画家の特徴でしょう。

エル・グレコの個性が詰まった、美術館を代表する傑作です。

・《ネメアのライオンと戦うヘラクレス》

(Public Domain/‘Hercules fight with the Nemean lion’ byPieter Paul Rubens. Image viaWIKIMEDIA COMMONS)

《ネメアのライオンと戦うヘラクレス》は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスによって制作されました。

ピーテル・パウル・ルーベンスはバロック期を代表するフランドルの画家です。肖像画、風景画、祭壇画など、幅広いジャンルの作品を手がけてきました。また、外国語を巧みに操る外交官としても活躍。話す言語は7つに及んだといいます。絵画制作の場として大規模な工房を設け、傑作と呼ばれる作品を弟子とともに生み出していきました。ナイト爵位も受けています。

本作品に登場するネメアのライオンとは、ギリシャ神話に登場する動物です。人々や家畜を襲い、大きな被害をもたらしました。拠点としていたネメアの谷から、この名前が付いたのでしょうか?ヘラクレスによって仕留められたライオンは、ゼウスによって獅子座となりました。

ヘラクレスが挑んだ最初の難業が、このネメアのライオンを仕留めることでした。頑強な毛皮を持ったライオンを、ヘラクレスは3日間首を絞めて仕留めたといいます。画面に描かれたヘラクレスの背中は隆起し、顔は紅潮しています。命がけの行動であることが伺えるでしょう。

画面全体に漂う暗黒の雰囲気が、場面の壮絶さを象徴しています。足元には口を大きく開いたヒョウが転がっており、その横にガイコツもあります。細部にわたる描写の細かさはルーベンスの真骨頂でしょう。臨場感に溢れた、バロック期を代表する傑作絵画のひとつといえます。

◼︎おわりに

ルーマニア国立美術館の歴史やコレクションを紹介してきました。ルーマニア国内はもちろん、ヨーロッパを代表する巨匠の作品まで堪能できる贅沢な施設です。ルーマニアで芸術鑑賞をするなら、この場所は外せないでしょう。多種多様な傑作たちを、一堂に鑑賞できます。

ルーマニアの首都ブカレストには、ほかにもぜひ足を運んでおきたい施設があります。まるでローマ宮殿のようなたたずまいのルーマニア国立博物館では、ルーマニアの歴史の変遷を学べるでしょう。宝物庫にあるルーマニア王室の重要なコレクションも見逃せません。

ブカレストを訪れたら国立美術館と合わせて訪問してみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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