ルクセンブルク国立歴史美術博物館:充実のコレクションと巡る歴史と考古学の旅

西ヨーロッパのルクセンブルクにあるのが、ルクセンブルク国立歴史美術博物館。ルクセンブルクの歴史、考古学、芸術に関するコレクションを所蔵した国内屈指の博物館です。2002年に完成したモダンな本館をメインとした展示空間は広く、見応えがあります。ルクセンブルクの街並みと同様に、優雅かつ歴史の詰まったコレクションに魅了されることは間違いないでしょう。この記事では、ルクセンブルク国立歴史美術博物館の歴史やコレクションを紹介します。

◼︎ルクセンブルク国立歴史美術博物館とは

ルクセンブルクは西ヨーロッパに属する立憲君主制国家。フランス、ベルギー、ドイツと国境を接している世界で唯一の大公国です。ルクセンブルクは10世紀、963年に築かれたお城から始まりました。“小さな城”を意味する言葉が転化し、ルクセンブルクの名称になったといいます。スペイン、オーストリア、フランスなどによる統治も経験したルクセンブルクは、現在外資系の企業が賑わう国際的な国家です。

首都は国と同名のルクセンブルクで、混同を避けるためにしばしば“ルクセンブルク市”の名称で呼ばれます。ヨーロッパでも屈指の裕福な街のひとつで、ローマ帝国時代に交通の要所として発展を遂げてきました。市場が作られ要塞が築かれたルクセンブルクは、徐々に規模を拡大していったのです。その古い街並みと要塞のある景観が評価され、1994年に世界遺産認定されました。自然と見事に共存しているルクセンブルクの街並みは、息を飲むほどに美しいです。

そんなルクセンブルクの旧市街にあるのが、ルクセンブルク国立歴史美術博物館です。博物館が開館したのは1939年。特に18世紀以降のルクセンブルクの歴史的資料や考古学にまつわる品々、芸術作品を所蔵しています。入場料は無料で観光客も気軽に立ち寄ることができます。

開館当初は邸宅を改装して博物館として公開していました。ですが2002年に新しい建物を増築、施設の拡充を図っています。モダンな造りの新館はルクセンブルクの歴史的な旧市街と不釣り合いといわれることもありますが、シンプルな形状の建物は美しく、洗練されています。

また、通りに面している邸宅も博物館として開放されています。敷地面積としては相当な大きさになるでしょう。いくつかある建物自体も博物館の見どころのひとつです。新館内部は吹き抜け構造になっており、開放的でとても明るい空間が広がっています。地上5階・地下5階の構造になっており、展示室は総数120にもなります。じっくり見れば半日は要するでしょう。

ルクセンブルクの旧市街にたたずむ国立歴史美術博物館。そのコレクションの見どころはいったいどのようなものなのでしょうか?次章からは、博物館のコレクション内容を紹介します。

◼︎ルクセンブルク国立歴史美術博物館のコレクション

ルクセンブルク国立歴史美術博物館のコレクションは工芸品、民芸品、モザイクタイル、陶器、石板など、歴史的・考古学的に価値のあるものが中心です。また、中世から現代にかけての絵画作品も充実しており、主にルクセンブルク出身の芸術家作品を扱っています。

ジャンルに捉われない幅広いコレクションは、博物館の特徴でしょう。ここからはコレクションの中でも主要な見どころを紹介します。

・《シェンゲン9月13日》1871年

ロマン主義を代表する小説家ヴィクトル・ユーゴーは、1862年に執筆した大河小説『レ・ミゼラブル』で世界的に知られています。政治家としても活躍したユーゴーは、フランスのフラン紙幣に肖像が採用されるなど、国民的人気を集める著名な作家として認知されています。

《シェンゲン9月13日》は、ヴィクトル・ユーゴーが描いた邸宅のスケッチです。丸く優雅な尖塔を手前に配した画面構成からは、たしかな芸術性が伺えるでしょう。ヴィクトルの持っていた才能が文才だけでなく、画才にまで及んでいたことを示しています。まるで水彩画のような独特の幻想的なタッチは、絵葉書を彷彿とさせます。あざやかな色使いも特徴でしょう。

・《ヴィクテンのモザイク》

《ヴィクテンのモザイク》は1995年、ルクセンブルクの中央に位置する小さな町ヴィクテンで発見されたモザイクタイルです。制作されたのは西暦240年頃と考えられていますが、完全な状態は年月の経過を感じさせません。制作者は不明ですがその技術力の高さはたしかでしょう。

タイル上部には紀元前8世紀末に存在したとされる吟遊詩人・ホメロスと9人の女神が描かれています。官能的な女神の姿に魅了される人は多いでしょう。色も鮮やかなまま保存されており、当時の装飾技術の高さも伺えます。博物館で屈指の見どころといえる目玉展示でしょう。

・《慈愛》1536年以降

《慈愛》は1536年以降、ルネサンス期を代表する画家ルーカス・クラナッハによって制作されました。

ルーカス・クラナッハはルネサンス期を代表するドイツの画家です。同名の息子も画家として活躍したため、しばしば“ルーカス・クラナッハ(父)”と表記されることもあります。1504年に初めての絵画を制作したクラナッハはフリードリヒ3世に仕え、傑出した作品を生み出してきました。マルティン・ルターとの親交も深く、ルターと家族をモデルにした作品も多いです。

本作品は3人の子供に囲まれた女性像を描いた作品です。中央に座った女性を中心に小さな子供を描いており、家族の愛のようなものをテーマに感じます。柔らかな肌の質感まで伝わる描写はさすがでしょう。女性は鋭い視線を鑑賞者のほうに向けており、物憂げな表情を浮かべています。子供はそれぞれに無垢な表情を浮かべ、画面の中を奔放に動き回っています。

腰がくびれた特徴的な人物模写は、クラナッハ作品の特徴なのだとか。深い愛情を感じながらも、どこか神聖な雰囲気をまとった作品です。慈愛に満ちた画面に引き込まれてみては?

◼︎おわりに

ルクセンブルクにあるルクセンブルク国立歴史美術博物館の歴史やコレクションを紹介してきました。モダンな建物と邸宅を使用した博物館は建物自体も注目の的でしょう。館内に展示された歴史的・考古学的なコレクション、巨匠の作品も含まれた絵画を堪能してみてください。

また、ルクセンブルクにはルーヴル美術館のピラミッドを手がけた建築家イオ・ミン・ペイが設計した美術館、ジャン大公現代美術館があります。斬新なデザインの建物はそれ自体がコレクションのひとつでしょう。こちらもぜひ合わせて足を延ばしてみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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