アンドリュー・フィールディング・ハクスリー:筋肉の収縮のメカニズムを解明した偉大な数理生物学者

アンドリュー・フィールディング・ハクスリーはイギリスの生理学者で生物物理学者です。
オーストラリア出身の神経生理学者であるジョン・C・エックルスやイギリスの生理学者・生物物理学者であるアラン・ロイド・ホジキンとともに、「神経細胞の末梢および中枢部における興奮と抑制に関するイオン機構の発見」で1963年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
筋肉の収縮について新しい解釈を可能にする方程式を考案するなど数々の業績を残したアンドリューは、20世紀で最も偉大な数理生物学者とも言われています。そんなアンドリュー・フィールディング・ハクスリーの生い立ちや受賞までの道のりを詳しくご紹介していきます。

◆幼少期、学生時代

彼はユニバーシティカレッジ・スクールおよびウェストミンスター・スクールにて教育を受けたのちケンブリッジのトリニティカレッジに進学し奨学金を得て、物理学、化学、数学を学びます。しかし興味があったのは生理学で、医学の資格を得るため解剖学も学んだのち1939年に同大のアラン・ロイド・ホジキンと共にプリマスの海洋生物実験室に赴き、大西洋イカを用いて神経細胞に流れる電流を測定する実験を開始しました。

◆受賞に至るまでの逸話など

アンドリューは大西洋イカの巨大な軸索(神経細胞)を使って「ボルテージクランプ(電位固定)法」と呼ばれる電気生理学的な技術により神経細胞に流れる電流を測定する実験をはじめます。

この実験ははじめ1935年にケンブリッジ大学でカエルの坐骨神経を用いて行われていましたが、第二次世界大戦中には海軍の航空機司令部で砲撃の運用研究をするなどで一時中断されたのち、1940年代まで再び続けられました。

そして測定結果をもとに数学的なシミュレーションを行い神経細胞の興奮と抑制についての「イオンチャネル仮説」を論理的に証明することに成功します。

1952年に発表されたこの理論は、生化学分野における世界初のコンピューターを使用したモデルのひとつとなり、その後40年間神経生物学のモデルの基礎となりました。

さらにアンドリューは筋肉の収縮についての研究において、筋肉繊維の縞模様を研究するために新しい顕微鏡を開発しました。

※イメージ画像

ケンブリッジ大学に1960年まで勤めた後、ロンドン大学ユニバーシティカレッジの生理学部長になり、1969年には王立協会の研究教授に任命されます。ケンブリッジ大学トリニティカレッジの研究フェローシップに選出された1941年以降は生理学や医学を教え、自らの研究も進め、また他大学での講義も行っていました。

アラン・ロイド・ホジキンと協力して行った神経伝導に関する研究では神経インパルスに活動電位としての数学的な説明を与える一連の微分方程式を確立、また骨格筋の収縮の際にアクチン-ミオシン繊維上でミオシンが滑り込むミオシン架橋の様子を数学的に記述する方程式も考案しました。

これらは細菌以上のすべての細胞の、筋肉収縮などの運動に関する理解を可能にするため、アンドリューは20世紀で最も偉大な数理生物学者ともいわれます。

◆おわりに

エルやイカなど哺乳類以外の生き物による実験からスタートし、数々の業績を残せたのはアンドリューや協力者たちの努力の賜物といえるでしょう。

研究のために開発された顕微鏡などの技術もまた、現代の研究において欠かせないものとなっています。

アンドリューの実験や研究がなければ、筋肉の収縮など運動に関する理解は数十年遅れていたのではないでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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