ノーベル生理学・医学賞1951年マックス・タイラー:死の病として恐れられた黄熱のワクチン開発に携わった医学者

マックス・タイラーは、南アフリカ共和国出身のウイルス学者です。1951年に『黄熱に対するワクチンの開発』でノーベル生理学・医学賞を受賞しています。当時、致死率30%~50%とされた黄熱は、彼の功績により予防可能な病気となりました。そんなマックス・タイラーの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆生年月日、生まれた町、生まれた町の概略

マックス・タイラーは、1899年1月30日にトランスヴァール共和国(現在の南アフリカ共和国北部)のプレトリアで生まれました。

プレトリアは南アフリカ共和国ハウテン州北西部にあり、大統領官邸を始めとする行政府が集約されている街です。各国の大使館も集まるプレトリアは、アフリカでも有数の世界都市であり、重要都市となっています。

また、プレトリアには約70000本のジャカランダが街路樹として植えられていることから、『ジャカランダの街』と呼ばれていることでも有名です。開花時期の10月から11月の間には多くの観光客が訪れます。

◆幼少期、学生時代

マックス・タイラーは『南アフリカ獣医学の父』と呼ばれた獣医・細菌学者のアーノルド・タイラーの元に生まれます。

※ローズ大学
※ケープタウン大学

高校卒業までは地元の学校に通っていたタイラーですが、卒業後はローズ大学とケープタウン大学医学部に進学します。

1918年にケープタウン大学を卒業しますが、タイラーは就職よりも研究を続けることを希望しロンドンへ渡ります。そして、ロンドン大学キングス・カレッジとロンドン大学衛生熱帯医学大学院で熱帯医学と衛生学を学び、1922年に医学の学位を取得し卒業しました。

◆受賞に至るまでの逸話など

※ハーバード大学医学大学院

卒業後、さらに研究を進めたいと考えたタイラーは、ハーバード大学医学大学院、熱帯医学部の教職員に就職し、そこで研究を行っていくことになります。

就職後、タイラーは数年間にわたりアメーバ性赤痢の調査や、鼠咬症のワクチン開発を行いました。その後、同大学のアンドルー・セラーズの助手となった彼は、黄熱の研究に注力するようになります。当時、黄熱は野口英世らが発見した『レプトスピラ・イクテロイデス』という細菌によって引き起こされているという説が有力でした。

しかし、タイラーたちは『黄熱の原因となるのは、細菌ではなくウイルスである』と証明します。そして、1928年にはアフリカと南アメリカで採取されたウイルスが、免疫学的に同じであることが判明しました。この研究中にタイラー自身も黄熱を患いますが、彼は無事生還し、免疫を獲得しています。

1930年からはニューヨークのロックフェラー財団へ移り、のちにウイルス研究所の所長に就任します。タイラーは引き続き黄熱病の研究に精を出し、ワクチンの開発に取り掛かりました。

最初に行ったのは『実験用のワクチンが有効なのか』を確認するためのテストです。ワクチンを接種したヒト被験者から血清を採取し、マウスに注射します。さらに黄熱のウイルスをマウスに注入し、体調の変化を確認しました。

次に、ニワトリを使用して特に毒性の強かった西アフリカの黄熱ウイルスを培養し、弱毒株の取得を目指します。その結果、タイラーと共同研究者ヒュー・スミスは『17Dワクチン』の開発に成功し、1937年に公表しました。

『17Dワクチン』が完成すると、タイラーの研究チームは人間での治験を迅速にスタートさせます。その結果、1940年~1947年の期間でロックフェラー財団は2800万以上のワクチンを生産し、黄熱は『治る病気・予防できる病気』となりました。この『黄熱に対するワクチンの開発』により、タイラーは1951年のノーベル生理学・医学賞を受賞します。また、1945年にハーバード大学のフラッティーメダル、1949年にはラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞しました。

マウス実験の過程で発見した『タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス』は、のちに多発性硬化症の研究に役立てられています。

私生活では、1928年にリリアン・グラハムと結婚し、娘を一人授かっています。アメリカでの研究生活の長かったタイラーでしたが、帰化することはなく1972年に生涯を閉じました。

◆まとめ

マックス・タイラーは、黄熱に対するワクチンの開発に成功した医学者です。研究中に自身が黄熱を患ってしまうなど、決して順調に進んだ研究ではありませんでしたが、彼のワクチン開発への情熱が途切れることはなく、世界中の人々を救うために尽力しました。そして、死の病として恐れられていた黄熱は、彼が苦難の末に開発したワクチンによって治療・予防が可能となりました。

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/マックス・タイラー
https://en.wikipedia.org/wiki/Max_Theiler

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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