ノーベル生理学・医学賞1954年ジョン・フランクリン・エンダース:ポリオウイルスがいろいろな組織で培養できることを発見した医学者

ジョン・フランクリン・エンダースはアメリカの医学者・小児科医です。エンダースは同僚であるフレデリック・チャップマン・ロビンス、トーマス・ハックル・ウェーラーとともに、ポリオウイルスの組織培養法を発見し1954年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。そんなジョン・フランクリン・エンダースの受賞までの道のりを解説していきます。

◆エンダースの生まれた町

エンダースは1897年2月10日にアメリカのコネティカット州ウエストハートフォードで生まれました。

コネティカット州ウエストハートフォードは1854年5月3日に誕生した町です。州都であるハートフォード市西部に位置し、人口は約63000人。高級住宅街の多いおちついた町として知られ、2010年には雑誌「キプリンガーズ・パーソナル・ファイナンス」の「家族を育てるために最適な都市10選」にもランクインしました。

11個の小学校と3つの中学校、2つの高校があり、市営のゴルフ場やプールなどの公営施設も充実しています。また、たくさんの公園もあり2007年にオープンした「ブルーバックスクエア」は店舗と居住空間が融合した広場のような場所で、オフィスや診療所まで複合していてとても便利です。

◆幼少期・学生時代

父、ジョン・オストロム・エンダーズは銀行家でした。エンダースは、1915年にイェール大学に入学しますが、1918年にはアメリカ空軍に入隊します。第1次大戦後に大学に戻り、卒業してからは不動産会社の販売員として働きます。その後いくつかの職業を転々としますが、その後はハーバード大学で医学を学び1930年に博士号を取得。感染症の研究者になります。

1946年にボストン中央病院へ移り、伝染病研究部長を務めました。この病院で後にともにノーベル医学賞を受賞することになる、トーマス・ハックル・ウェーラー、フレデリック・チャップマン・ロビンスに出会うのです。

◆受賞に至るまで

ポリオ(急性灰白髄炎)または脊髄性小児麻痺は、ポリオウイルスによって発症する感染症です。おもに5歳未満の子どもに多く発症し、日本では小児麻痺とも呼ばれていました。ポリオはとても古くから事例のある病気で、古代エジプトの壁画でもポリオの流行らしき様子が描かれています。

人の糞や汚染水などによって人から人に経口感染する感染症ですが、発症しないか軽傷で済む場合もあります。ただ、大人の家族がポリオウイルスに感染した場合、その子どもはほぼ100パーセントウイルスに感染するといわれるほど感染力の強い病気です。

子どもの場合、発症後2,3日で死亡するケースもあり、四肢などのマヒを伴います。ポリオに効果のある治療方法は未だになく、発症した場合は対処療法をすることしかできません。しかし、ワクチン接種により予防することはできます。そのため、世界中でポリオワクチンの接種が進められています。そして、ポリオワクチンの開発するための基礎となったのが、エンダースたちによって発見された組織培養法です。

ワクチンを製造するためには、ウイルスを大量に培養する必要があります。エンダースは、それまで神経細胞でしか培養できていなかったポリオウイルスを、いろいろな組織で培養することに成功したのです。

ポリオウイルスが発見されたばかりのころは、神経細胞で培養し弱毒化して作られた試験的なポリオワクチンが、子どもたちに投与されていました。しかしそのワクチンを投与したせいでポリオを発症し、死亡してしまった子どもがいたのです。失敗の原因は、培養に神経細胞が使われていたことでした。そのため、安全なウイルスの培養方法をいち早く開発することが求められました。

1948年、エンダースはポリオウイルスが様々な身体組織で増殖することを発見しました。この発見により研究室内で大量にポリオウイルスを培養することが可能になり、安全なポリオワクチンが完成することに一歩近づいたのです。

そして1952年にはアメリカのウイルス学者、ジョナス・ソークがこの組織培養方法によってポリオワクチンを開発しました。ソークは、腎臓細胞で培養したポリオウイルスをホルマリンで不活性化した不活性ワクチンを作り、その2年後に認可されました。

エンダースたちが発見した組織培養方法は、ポリオ以外にもおたふくかぜやはしかなどの感染症のワクチン開発にも、大いに役立ちました。

◆終わりに

ポリオは子どもにとって致命的な病気ですが、ワクチンがあれば多くの子どもたちを守ることができます。病で苦しむ子どもほど痛ましいものはありませんから、ワクチンによって一人でも多くの子どもが救われることを願うばかりです。

ジョン・フランクリン・エンダースは1985年9月8日に88歳で亡くなりました。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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