ノーベル生理学・医学賞1966年ペイトン・ラウス:実験から50年以上の時を経て功績が認められた医学者

ペイトン・ラウスは、アメリカ出身の医師兼病理学者です。1966年に『発がん性ウイルスの発見』でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。実験を行なってから50年以上経って賞を受賞したことでも知られています。そんなペイトン・ラウスについて詳しく解説していきます。

◆幼少期、学生時代

ペイトン・ラウスは、1879年10月5日にアメリカのメリーランド州、ボルチモアで生まれました。ラウスの母は非常に教育熱心で、その後押しもあり一般教育終了後はジョンズ・ホプキンズ大学医学部に入学します。翌年には学士号を取得し順調な学園生活を送っていましたが、解剖実験の際「結核菌」に感染してしまい治療のためやむを得ず休学。1年後無事に大学へ戻ったラウスは、1905年にカリキュラムを終了し卒業しました。

◆受賞に至るまでの逸話など

大学卒業後インターンとして病院に勤務したラウスでしたが、医師としての未熟さに気付き医学研究の道へ進むことを決め、ミシガン大学病理学部の助手となります。そこで病理学について研究していたウォーシン教授と出会い、教授の助力もあって1907年からドイツのドレスデンで解剖学を学びます。2年後にドレスデンから帰国すると、ニューヨークのロックフェラー医学研究所(現在のロックフェラー大学)が助成金支援を行なっていると知り応募。これをきっかけにロックフェラー医学研究所初代所長である病理学者兼細菌学者のサイモン・フレクスナーと出会い、彼の研究成果に触れたラウスは大きな刺激を受けました。さらにフレクスナーはラウスを評価し、癌研究センターのスタッフに招待します。
その後本格的に癌研究をスタートさせたラウスは、1911年以降の研究で「健康なニワトリに癌細胞を移植すると、たとえ健康体であっても感染し癌を発症させる」という事実を発見。さらに癌細胞そのものでなくでも、癌細胞から抽出した物質や濾液にさらすことで、別のニワトリに悪性腫瘍(肉腫)を感染させることが可能という結果を出したのです。この発見は「ウイルスによって癌が発生する可能性」を示したものでしたが、当時の医学者や研究者からの理解は得られませんでした。ラウスが癌研究を始めてからわずか数年であったこともあり、大きな発見をしたにも関わらず「未熟者の研究結果である」と評価されてしまったのです。

のちに行われた実験では「発がん性ウイルスが存在する」というラウスの説は証明され、ノーベル賞にふさわしいという声も上がりました。しかし評価を受けられないまま時は過ぎ、研究を行ってから55年の時が経った1966年にノーベル生理学・医学賞を当時の最年長記録である87歳で受賞しました。

◆終わりに

癌がウイルスによって発生する可能性に気付いたペイトン・ラウス。発見当時彼の説を信じる学者はあまりいませんでしたが、現在は偉大な功績を残した人物であると高い評価を受けています。ラウスの研究がなかったら癌の早期発見や、治療法確立などに時間がかかっていたかもしれませんね。

出典:(THE NOBEL PRIZE、rous)(6,2021)

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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