ノーベル生理学・医学賞1980年ジョージ・D・スネル:マウスを使って主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発見をした遺伝学者兼移植免疫学者

ジョージ・D・スネルはアメリカの遺伝学者兼移植免疫学者です。「免疫学的相互作用を規制する、遺伝的に決定できる細胞表面の構造に関する発見」という内容で1980年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。多数のマウスを使い主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発見をしたことでも知られています。そんなジョージ・スネルの受賞までの道のりを詳しく解説していきます。

◆幼少期・学生時代

ジョージ・D・スネルは1903年12月19日に、アメリカのマサチューセッツ州にあるブラッドフォードという街で3人兄弟の末っ子として生まれました。スネルは公園でスポーツを楽しむ子供らしい一面もありながら、数学や科学などの勉強を好む秀才でした。一般教育を終えるとニューハンプシャー州のハノーバーにあるダートマス私立大学に通い、講義を通して遺伝学に興味をもつようになります。卒業後は教授の推薦でハーバード大学の大学院に進学しました。

◆受賞に至るまでの逸話など

スネルは1935年にジャクソン研究所(生物医学研究機関)の研究員となり、免疫学の研究を始めました。彼は「自分の免疫系が非自己を認識し拒絶するということは、それぞれの細胞が移植抗原といわれるような自身を認識する個別のマーカーを持っているのではないか」と考え、それを追求するためマウスを使った実験を開始。まずはマウスの近親交配を20代以上継続し、個体差と遺伝的な差をほぼなくした「純系」というマウスを作ります。この純系マウスをいくつか用意し、異なる遺伝子を持つマウス同士で移植を行うと拒絶反応が起こることを確認します。さらに異なる遺伝子を持つ純系同士のマウスを交配させ、生まれてきたマウスと片親を交配し「移植抗原を持ちながらも、そのほかの遺伝子は片親と全く同じであるマウス」を作り出しました。このマウスのことを「コンジェニックマウス」といいます。スネルはコンジェニックマウスを解析し、第17染色体の上にマウスの移植抗原(H-2抗原)が存在することを発見。H-2抗原とは主要組織適合遺伝子複合体(MHC:Major Histocompatibility Antigen Complex)と呼ばれている分子群です。このマウスの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)発見に対する研究と功績が認められ、1980年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

ノーベル賞以外にもガードナー国際賞(Canada Gairdner International Award)、ウルフ賞医学部門(Wolf Prize)、ウィリアム・コーリー賞(William B. Coley Award)など数多くの賞を受賞しています。

主要組織適合遺伝子複合体の発見により免疫学は大きく発展し、骨髄や肝臓の移植ができるようになりました。さらに移植時に起こる免疫反応、「拒絶反応」を最小限に抑える「免疫抑制剤」の開発も進められ、現在では心臓や肺、肝臓、角膜などの移植をすることも可能となっています。

◆終わりに

マウスを使って主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を発見したジョージ・D・スネル。医療の発展に大きく貢献した学者として将来語り継がれるべき学者の一人でしょう。彼の研究のおかげで移植に関する治療が大きく進化し、いまでも多くの人の命が救われています。

出典:(THE NOBEL PRIZE、snell)(6,2021)

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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